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リーゼロッテはいつも怒ってる  作者: 有栖多于佳


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小話 淑女のお茶会

ガールズトークで、世界が変わるのです。

九十九魂(くじゅうくこん)の聞き取り調査が始まり、毎日朝から夕暮れ時まで、魔術師団へとあんりが赴き、夢現を覗かれる日々


さすがに疲れの見えるあんりを慮って、側仕えのアンヌがリーゼロッテにお茶会を提案した。


「確かに、あんり様だってお疲れだわ。もう残りも少ないし、イーサン様にお願いしてお休みを頂きましょう。」

「それならば、ヨーゼフ様からイーサン様にお願いはもうしてありまして、リーゼロッテ様の許可が出たならば、好きにせよと申し付けられております。」

さすが、気遣いと采配に抜かりのない、出来る侯爵家嫡女である。


「なら、今日のお茶の時間に、そうね、メアリにも声をかけて、ローズも呼びましょうか。年頃も同じ位だし、あんり様も楽しいリラックスしたお時間を過ごせると良いわね。」

そうリーゼロッテがメンバーを決めて、お触れを出した。


すぐに、参加の返事がもたらされると、転移魔法(ワープ)でローズがやって来た。


「まあ、早いこと。」

「ええ、この前の手紙で教えてもらったロゼリアの建国の秘密から、どうしても気になることがあったのよ。」

ローズが挨拶も早々に話し始める。


「どんなこと?」

「魔素溜まりという不毛な土地、魔物が出るような場所、そこに居ると器が大きくなるって話でしょ?なら、あの海底から煙る海域付近、あの孤島ってそれに当たらない?あの辺って、大王烏賊という魔物やキメラという火を吹く魔鳥なんかが出る場所なのよ。」

ローズが早口でリーゼロッテに話し出した。


リーゼロッテは少し首を傾けながらあの海域の場所を思い浮かべ、また孤島の海軍基地に思いを馳せた。

「あの場に住んでいる家族や移住した者に魔法が使える者は居なかったハズだけど。」


「ええ、居なかったわ。でもロゼリアだって建国から百年は巧く行かなかったって書いていたじゃない。その後の神託で神の啓示を受けて、魔力をためる秘訣を教えてもらったのでしょ?それって何だったの?」


リーゼロッテはいつもの無表情な顔でローズに答えた。

「その件はまだ聞けて居ないわ。近くの夢現から遡っているの。その時が来たら、あんり様に伺いましょう。」

「ええ、お願いね。」

ローズはゆったりと微笑み、いつもの穏やかな雰囲気に変わった。


お茶会の準備が整ったと知らせを受け、王家の秘密の温室へと向かう。

そこは彩り鮮やかに花咲き乱れ、噎せるくらいの芳香が溢れていた。


「あんり様、ごきげんよう。」

リーゼロッテ、ローズ、メアリが着席して、あんりとアンヌの到着を待っていた。


「ロッテ、ごきげんよう。今日はお休みにしてくれてありがとう、ゆっくり寝れて疲れが取れたよ。」

あんりが気軽な感じで答え、着席した。


「アンヌ様も着席して下さいな。今日はこのメンバーでお茶会を致します。こちらがわたくしの義姉で辺境伯夫人のローズ、そしてこちらが王国一の人気店のオーナーで魔術師団の相談役のメアリですわ。」

リーゼロッテが右手に座るローズと左手に座るメアリを紹介した。


「ご機嫌麗しゅう、青の渡り人様、お噂は予々リーゼから伺っておりますわ、どうぞ、私のことはローズとお呼びください。」

「はじめまして、青の渡り人様。メアリ スチュワートです。メアリとお呼びください。」

ローズがいつもの穏やかそうな笑顔で、反対にメアリは緊張の面持ちで挨拶をする。


「ええ、はじめまして。ローズさんとメアリさんね。わたしのこともあんりと呼んで下さい。って、質問いい?その髪の毛、ピンクなんだけど地毛?魔法の世界にピンク髪の少女って、もしかして男爵令嬢とか?違うか!」

あんりが興奮して早口で質問する。


「フフフ、まずはお茶をいただきましょう。」

リーゼロッテが珍しく笑い声をあげた。

「ああ、そうね。お願いします。」

あんりがリーゼロッテに答えると、アンヌが控えているメイドに目配せをした。


お茶が行き渡り、一息つくとメアリが

「あんり様、この髪は魔法で染めていますが、私、男爵令嬢、令嬢って柄じゃないけど、一応男爵家です。」

「ええーマジで!それってラノベの鉄板じゃない。学校で虐められた?人気の王子とかに助けられて卒業式で告白されて、王家に嫁いだ?」

あんりが興奮して捲し立てる。


「フフフ、あんり様、メアリは学校で虐められてましたが、それを守ったのは王子ではなくリーゼですわ。」

楽しそうにあんりの問いにメアリより早くローズが答える。

「え?ロッテが?王子さま何してた?第二王子とか第三王子とか。」

「残念ながら、この国の王子様はヘンリー様だけですわ。」

ローズがかわいい笑顔で毒舌である。

「げえー、それは本当に残念。じゃあ、メアリはカップル成立しなかったんだ。」

あんりが舌を出してヘンリーを下げ、メアリに不思議な言葉で質問する。


「カップル成立とか王子様とかなんですか?そもそも私、途中で学校辞めちゃって卒業式も出てないです。」

「へええー、現実は小説とは違うんだ!」

あんりが、一人で納得しつつ、青の世界で流行っていたという乙女ゲームとかいう物語の定番の話をしてくれた。

「でも、その定番の王子様は金髪碧眼だから、イーサンみたいな感じが”THE王子様”って感じ。ヘンリーはモブだね。」

あんりがまたヘンリーを無自覚にディスる。


「モブってなんですの?」

黙って聞いていたリーゼロッテが口を挟む。


「え?」

リーゼロッテの表情はいつもの無表情と同じ顔つきではあるが、纏う空気が冷え冷えとしていた。


ーあ、からかい過ぎた!ー


「モブってのは、えーと、えーと。」

あんりがいつになく言葉を濁す。


「ナンデスノ?」

「いや、その他一般と同じような人のこと。」

あんりが小さい言葉で答える。


「・・・そうですのね。ちなみに、悪役令嬢とはわたくしのような感じですの?」

リーゼロッテはいつかの移ろう魂に言われた悪役令嬢を気にしていた!

ローズとアンヌはお互い目で会話をして、そっと下に目線を下げた。


「悪役令嬢ってどうして知っているの?そうだよ、大体綺麗な人が悪役令嬢って言われて婚約破棄されるっていうのが物語の鉄板。よく知ってるね、この世界にもそんな物語あるの?」

あんりが急に元気を取り戻して聞いてきた。


「そういう類いの書物は無いですね。でも面白そう、誰か書いたらうちの店にも置こうかな。」

メアリが話に入ってきた。


「そのお店って何屋さん?」

「雑貨屋です。私が創った魔道具とか魔法付与したアクセサリーとかを置いています。この髪色を変えるのもこの小さな魔石の粒に込められた魔法を利用しています。」

メアリが自分のピンク髪の秘密を教えた。


「ええー可愛いー。このピンで留めると、あ、本当に変わった。」

「つけて見ますか?この鏡を使って下さい。」

「前髪、ピンクになったー!ナニコレ可愛いー!写真インスタに上げたい!って無いか残念。」


知らぬ間にあんりとメアリが仲良しになっていた。


「そのインスタというのは何ですか?」

リーゼロッテがあんりに質問する。

「あのね、この前言ったネットと言うモノにはアプリってのがあって、それがツイッターとかインスタとかいうモノで、インスタは写真を取って繋がりがある仲間とかに見せるの。それで、素敵なモノや美味しそうなモノなんかにイイネ!ってしてもらうの。」


「ごめんなさい、あんり様。私にはなんにもわからないですわ。」

ローズが早々にリタイアした。

「そうだよね、説明が下手でごめん。あーどうしたら上手く説明出来るんだろう。HEY!Siriなんちゃって無理か。Siriとかなら説明してくれるのになー」

あんりが、メアリの鏡のケースに声をかける真似をした。


「それはなんの真似ですの?」

リーゼロッテも不思議そうにあんりを見て聞いてきた。


「ああ、忘れて。バカなことしてごめんって。」

あんりがギャグを説明する恥ずかしさに悶えながら謝った。


「あ、なんか閃いたかも。それって、Siriって名前ですか?それに聞いたら答えてくれる的な?」

メアリが突然あんりの手を握ってブンブン振り回し始めた。


「そう、そう。このケースくらいのスマホっていうのに色んな機能があって、Siriって子に質問すると答えてくれるの、わからないことは『スミマセン、ワカリマセン』とか言うから全部の質問に答える訳じゃないんだけどね。」


あんりの説明に、メアリが真剣に聞き入る。

「ツイッターというのは、”小鳥の囀り”とイーサン様から聞いたのですが。」

「ああ、あれは人々が自分の気になることとか感想とかを発表するの、それを繋がった人が見たり、返事を返したりするんだよ。」

「なんか繋がりましたわ。」


「ごめんなさい、アンヌ様。私には二人の会話がナニも理解できてないのですが、アンヌ様はどうですの?」

ローズが眉を下げて、先程から黙って口を開かないアンヌに小さい声で聞く。

「ローズ様、わたくしも全く一つも想像出来ませんの。」

アンヌも口元を扇で隠してため息をほうと吐きながら答えた。


「大丈夫ですわ、それはわたくしも、ですから。」

いつもの麗しの顔を向けながら、リーゼロッテが堂々と同意した。

目の前ではあんりとメアリが他国の言語のような会話をすごいスピードでしている。


「こういう時、メアリってスキル持ちだなって思うわ。」

ローズがゆったりとした声で感想を述べた。


「え?メアリってスキル持ちなの?」

その言葉にあんりが反応する。

「はい、探究者っていうスキルがあります。」

メアリが答える。


「スキルってね、どっかの誰かがこんな力が欲しいって願うでしょ?同じ願いをどこかの誰かも願う、何回も誰かが願い続けたその願いがある時強い塊になってその塊の一番近くで願った者の所にスキルが行くんだって。だからどこの誰に出るかは神様でもわからないって言ってたよ。」


あんりは何気無い会話のように、スゴい神の御技を話した。


「これって、スゴく大事な事じゃない?」

ローズがリーゼロッテに聞く。


「ええ、申し訳ないのだけれど、アンヌ様。これからこんな風にあんり様が話したことを書き留めて置いてくださらない?そしてそれをヨーゼフ様へお渡しになって下さいな。魔術師団でキチンとした書物として纏めて置かねばならないから。わたくしからも、ヘンリー様とイーサン様にはお伝えしておくわ。」

リーゼロッテがアンヌに指示を出した。


「そこにヘンリー、いる?」

あんりがまたちょっかいを出して、リーゼロッテの気を揺らす。


「・・・あんり様、ヘンリー様はモブ感がたいそう漂っておりますけど、あれで為政者として必要な物は持っておりますのよ。」

リーゼロッテが努めて冷静に言った。


「それはなあに?」


「それは、己のためではなく民のためという意識を持って政務に当たっているということですわ。」


「リーゼロッテってヘンリーのこと、大好きなのね(はーと)」

あんりの言葉に、ボッと首から上が真っ赤になったリーゼロッテをメアリ、ローズとアンヌが珍しいものを見たと目を丸くしたのだった。


程無くして、メアリの助言を受けた魔術師団が総掛かりで”小鳥の囀り”という大魔法と魔法の塔を創りサルアール王国が目覚ましい発展を遂げていくのである。


また、余談であるが、メアリはSiriの話から着想を受けて、後の世で白雪姫の継母が持っていたとして有名な”魔法の鏡”を創り上げて、大魔法使いとして後世に名を残すことになるのは、また別の話。


お読みくださいましてありがとうございました。


誤字誤謬があるかもしれません。


わかり次第訂正いたします。


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