新しい日々
遊園地のモデルの某所は、もう閉園しています。
久しぶりに周辺に行くと観覧車の解体が始まっていて
なんとも言えない感慨深い感覚だった。
正直そんなに行ってないけどね。
鳥海透の件が解決した。それよりもその後の事が問題であった。
簡潔に言うと、初彼女ができた。
今までもこういったパターンは存在した。しかし、一度も答えたことはない。
それはひとえに、本当の気持ちではなかったから。
でも、今回は違った。それに、答えたこと自体は本当はいけないことであったことは理解している。
それでも、ボクはその返事に肯定の意を示してしまった。
そのことに関してはもう後悔はしていない。
これも、しがらみから解放された結果なのかもしれない。
結果として、数人を廃人もどきにしてしまったことに関しては反省しています。
それは……
透さんと初めて学校に投降した日の帰りのこと
「お帰りなさい、兄さん」
いつも通りの薊の声とは若干違う。何と言いますか……もごもごしていた。
というか、ティッシュを食べてた。
「ああ、お帰りです。晃司さん。」
声の方を振り返ると、そこにはティッシュイーター2号こと綾ちゃんがいた。
ちょっと、どうした?体に悪いからぺってしなさい、ぺって。
「うふふ、兄さん?彼女さんとの初下校は楽しかったですか?」
原因が分かった。全部ボクが悪い!
「ティッシュというものは高い方がおいしいわけではないのですね。
安物……例えば、この間のガソリンスタンドで配布されたものはそれなりでした。
この+w〇terのしっとり具合がなんとも言えない不快感を……」
なぜか、ティッシュのテイスティングの結果を述べ始める妹。
たぶん薊の口から発せられる言葉の中で後にも先にもこれ以上どうでもいい
ことはないだろう。いえ、させません!
「ティッシュを食べるのはやめなさい。ほら、綾ちゃんも。
本当に、勝手に決めたのは謝るから。ティッシュを食べるのだけはやめて!」
そう言って、ボクは重さからして約四分の一ほど無くなったティッシュ箱を没収した。
綾ちゃんは終始無言だった。ネタすら言わないのでかなりの重傷。
ボクの不用意な選択でこのような事態を招いてしまったことはボクの心に刻み込んでおかないと
いけない。
ちなみに希に聞いたところ……
「なんだかティッシュを食べる風潮みたいだから試してみたけど……三枚が限界だった……うえぇ」
本当に気持ち悪そうだった。
当の透さんは学校では案の定ビクビクしてボクの背中に張り付いていた。
ああ、これは薊の編入当初の感じに似ている。とても懐かしい感覚だった。
薊の件もあってか、学校の連中からは理解を得られていた。
透さんがあの発言をするまでは……
「鳥海さん、この中にも復帰して間もない連中がいるから私たちに対して好きな距離をとっていいよ。
ぐいぐい行くのはいけないって気付いたから。」
そういうクラスメイト1
それに対して
「私は……未だ人とどう接すればいいか分かりません。でも、晃司さんはその手助けをしてくれるって言ってくれました。だから、皆さんとは積極的に関わっていきたいと思います。」
ああ、良かった。隅っこに行く気ではなかった。
「最初は晃司君がいないときにはあまり突っ込んだ話はしない方がいいのかな?」
まあ、この人達は前に戻ってきた連中と接し方を間違えてギクシャクしたことがある。
そのことを透さんにはいっておいたため、彼女は彼らの【下心】が理解できているだろう。
「それは大丈夫です。離れる気はありません。」
……ううん?雲行きが怪しくなってきたぞぉ?
「それは?どういった理由で?」
恐らく察しがついてしまったであろうクラスメイト2
「私は晃司さんの彼女なので離れるつもりはありません。」
こうもあっさりと彼女宣言をしてしまった。
まあ、その辺を言い包めていなかったのはボクの過失だね。
その後、数人のクラスメイト(委員長とたかしを含む)に連れられて、
『手ぇ、出すのが早えぞシスコン野郎がぁ!』
怒られた。というかそこの二人、昨日その場にいたよね。
希曰、ティッシュは1枚目で断念したんだって。
「え、どっちからしたの?」
「それは……私からです。私から『好きです』と」
「「きゃー」」
こっちが体育館裏状態に対してあちらはなんとも平和的な……
平和って尊いな……
「晃司君、遠い目をしても誤魔化されないわよ。
これから腹い……じゃなくて粛清を受けてもらうわ」
「あんたその場にいただろ!」
「何の事かしら?」
頬の傷をさすりながら目をそらす委員長。
すると
「諦めろ、言っても無駄だ。まあ、親友に彼女ができたんだ。祝ってやらないと……
それと、ボクの家族公認ストーカーをどうにかして下さい。」
どうやら知らぬ間に家族公認までこぎつけたようだ。
朱音さんは……欲望に忠実だったんだろうな。
まあ、聞いてみれば夏休みの件の後に自暴自棄になって不良に突っかかり勝ってしまい
その不良に絡まれていたのが……という事らしい。
自業自得じゃん。それに、たかしも美咲の真似事ができるらしい。気を付けよ。
「自業自得だからあきらめろ。既成事実を作られないようにだけはしておけよ。」
まあ、見捨てきれなかったボクの甘さ。
「ストーカーから始まる恋もある。」
少し前に見たエロゲのコマーシャルから頂戴したセリフを言ってみる。
「てめぇ、調子乗んなよ!おいお前ら、この周りにハーレム築くかと思ったらぽっと出を選ぶ薄情者を拷問してやろうぜ!」
あ、たかしの変なスイッチをオンにしてしまった。
その後、拷問と言いつつ彼女ができてどうだったかという質問攻めを喰らった。
恥ずかしさで考えるとあれは拷問だな。
まるで将棋だな。と、某クソスマホのセリフを思い浮かべる程摩耗していた。
そんな少し長めの回想が終わり、現在何をしているのかと聞かれれば……
まあ、デートというやつですよ。
なぜまあ、とつけたかというと……薊ですよ。
あの子、またティッシュ食べてたんだよ。流石に母さんに注意してもらったけど。
その時の母さん……足ががくがくしてました。同情いたします。
きっとボクがその立場だったらそうなっていたのでしょう。同情いたします。
余談として、綾ちゃんはティッシュの食べ過ぎで病院に搬送されました。
佐倉のおじさんの医療センター……おじさんから何を言われるのか……
閑話休題
デート先はイ〇ンです。正直、隣の来年には残っていない遊園地に行くのは……ね?
やはり、透さんは良家のお嬢さんだけあって身だしなみはしっかりしております。
いや、今回はというか、さすがに透さんとのデートにいつもの服は……
しっかりまともなのにしましたよ。……誤魔化した感は否めないけど……
綾ちゃんと行った際の様に長い間服を見るようなことはなかった……良かった
透さん自体、着飾ることが好きなわけではないらしい。
確かに言ってみれば、彼女の嫌いなことに繋がる訳であります。
着飾ること、何かで自身を隠して取り繕って誰かに取り入る。トラウマだった。
という建前はそこそこにして、今いるお店について紹介しよう。
言ってしまえば【モデルガン専門店】。お察しの事でしょう。もう二時間います。
なんか、銃の説明文2つ分ぐらい暗記しました。
そう言いつつボクも楽しんでるんですがね。
先程から食い入るように見つめているものが一つ……
何これ…高!0が何個?もう数える気がなーい!
かなり大きめな銃。形的にはライフルだろうか?詳しくないので知らん。
本当だったら『買ってあげるよ』の一言ぐらい言えればよかったのだが
これ買うんだったら、薊から出世払いで借りるか、熊のじいさんから借りるしかない。
というか後者は莫大なリスクが伴う。
死ぬリスクはないと思うよ。少なくとも、熊のじいさんは子供と孫を事故で亡くして、かつての一件以来ボクを孫の様に接している節がある。
宿敵の孫でもありますから。
少なくとも、じいさんは負けたことないそうです。
熊のじいさん……
そんなことは置いておいて、『これどうしましょう』なんて買えるという意の発言をする我が彼女……
お金持ちとは怖いです。
「晃司さん、こんなに長く付き合わせてしまってすみません。つい、はしゃいでしまいました。家から出たのが去年以来なので……」
そうでした。去年でしたね。
「いいよ、これからどこに行く?というか、よくこんな店があったな。」
「ああ、それは……家が……」
ああ、察し。それより……
「流石お嬢、見張りのボディーガードが多いですね?」
「え、そんな人達が!というより、お嬢はやめてください。」
ええ~、ボクの中ではお嬢認識だよ。お嬢。
そんな中、さっとお嬢に手を伸ばしていわゆるお姫様抱っこをする。
「あの、これは?」
それは自分が聞きたいです。なんだか自分らしくもない。
「捕まって!」
そのまま、ボクは【狂気】を発動して駆け抜ける。
イオ〇は基本的に下層が見える構造になっている。
それなので、そこから飛び降りることにする。ボディーガードは唖然としていた。
綺麗に着地した後は、〇オンを後にしてとにかく逃げる。
高架線となっている線路の電車と接触しない部分を通り駆け抜ける。
速度的には電車を超えていた。【狂気】スゲェ。
取り敢えず、イ〇ンのある東区から学校のある中央区にまで逃げる。
「少しやりすぎた。ごめん。」
「いいですよ。少し……刺激的な体験ができてよかったです。」
少しはフォローのつもりでしょう。自分の彼女ができた子過ぎて泣ける。
そっと透さんを下ろして取り敢えず散歩をすることにした。
しかし、そんなときにボクのダメな点が発動する。
「そこのお嬢さんが鳥海家のご息女かな?」
そこにはまるで芸術品の様な美しい武器、すなわち刀を手にしていた。
腰には二振りの小刀。恐らく取りに来たな。
「そこの彼氏君には恨みはないが消えてもらおう。」
そう言って、壮年の剣士は綺麗な太刀筋で迫る。
しかし、曲がりなりにもこちらはその道の天才です。躱す。
それだけでなく、腰にある小刀を頂戴する。
「やりますね。」
「あんたは、外部からだろ。そりゃ知らねえよ。」
ヤクザに手を出して生きて帰れる奴は普通覚えられる。
外部であることは間違いない。
「それがどうしましたか?」
迷いのない一太刀。感動するほどに綺麗なその一太刀を二振りの小刀で滑らせるように反らす。
小刀と通常の日本刀では威力が違いすぎる。正面からはいけない。
だから、右側に飛び右の小刀を腰の方に引くように切りつける。
当然受け止められるが目的は違う。
腰の方に引くことによって遠心力が生まれ自動的に体がねじれる。
それを利用して左の回し蹴りをした。
隙ができた。これでとどめだ!
「瞬撃必倒!翼流、双翼刃・清鷹」
右から切りかかり、二本をそろえて右に薙ぎ払う。
そのまま、右に飛んで右からの大振りの一撃。
それから必然的にクロスした両腕を開放するように十字払い。
そこからのとどめの十字切り。
それなりに隙がつけたようではあったが致命傷は与えれなかった。
こちらも頬に切り傷が付いた。
「それは翼君の清鷹のバージョン違いかな?」
「良く知ってますね。」
これは、文化祭の前に道場で翼師範代が使っていた技を即興でアレンジしたもの。
本来は拳での技で真名を『双翼拳・清鷹』である。知っているのか。
「まあ、あの一派とは因縁がありますからね。」
でも、と続ける。
「君は直接的な関係はないようですね。何より八雲流の面影すらない。」
どうやら、流派の問題らしい。
「こちらも必殺の一撃をさせてもらいましょうか。第三の型・風王、皆伝。」
「「参る!」」
こちらも釣られて叫んでしまう。
「避ける必要はない。結果は同じです。八雲流・高潮。」
なんだか少しアウトな決め台詞だけど気にしない。
振り上げられた一刀が大きく振りかぶられる。
その太刀筋にはまるで暴風が纏わりついているようだった。
「こちらも負けない。」
振りかぶられる瞬間に前に出る。二本の小太刀をハサミのように構える。
ハサミの中央に接触しようとした瞬間……右太刀の角度を変える。
太刀筋は少しずれる。その瞬間、残りの左太刀の角度を変えてそのまま振り上げる。相手の太刀とボクの小太刀達は宙を舞う。
その一瞬ですべてが決まった。
ボクは【狂気】を使った。掌底の構えから一撃。吹き飛ぶ。
「グハッ、貴様。隠していた挙句、当てていないな!」
ボクは先程の一撃を当ててはいない。軽い波動である。
これなら殺してしまう心配はない。
……さっきまで殺そうとしていたやつが何を言う。
落ちてきた日本刀は彼の隣に落ちて、落ちてきた小太刀は【狂気】の影響で
握った瞬間爆散した。
「それならしょうがないか。」
そういうことです。
「私は、ここまで来て結局何もなせなかったのか。八雲流最強の男を探しても今は絶対に勝てない。
翼にならまだしもな。とどめを刺せ。」
彼には彼の生きる目的があるのだろう。ボクが本当の意味で最近手に入れたものを……
それを奪うのは気が引けた。だから。
「透さん、この人を逃がしてもいい?」
「それはどうしてですか?」
「透さんを殺そうとしたことは許せないけど、この人には生きる目的と意味がある。
それをずっと知らなかったボクが奪うことはできない。」
その言葉を聞いて、ボク達はこの人物を放置することにした。
彼はきっとボクらに害をなさないだろう。ボクが保証する。
それから、透さんの家でお家デートなるものをしてお母様から会話の一部抜粋だけを聞かれて勘違いされるなどの事件がありつつも平和に幕を閉じた。
この関係がそう長くは続くことはなかった。
ボクの感じていた違和感と彼女がこれから知る罪悪感はボク達を破滅させるには十分すぎた。
瞬撃必倒はさすがにアウトな気がしてきた。
もう一個のも荒鷲のオマージュですし……オマージュだからねっ!




