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悩みと救いは狂気の果てに  作者: 三島三城
その⑤:終わりへのプロローグ
25/28

いつか終わる定めなら

パソコン大破していた三島です。

以前二月に投降するといいましたが……無理でした。

委託した友人からデータ失くされた。その⑥は4月でお願いします。


 晃司君は本当に薊ちゃんを見ているのだろうか?それは私にとっての大きな疑問であった。

私自身も本当に薊ちゃんが好きであったのかわからない。今は好きだといえるが、それが自分の意思であるかは断言ができない。

 私の大半は澪さんで形成されている。昔から主体性がないためだ。

その昔、澪さんが私の中に入ってきたときもすんなりと受け入れられた。

受け入れられたのではない……本来の使用者が来たと思った。


 私は生きることはそんなに好きではないし、何かをなしたいわけでもない。

趣味嗜好なんてもってのほかである。

そんな私でも、自分の意思で、心が躍るような感覚があったことに気付いた。

それは、薊ちゃんに色々と問い詰められた際に聞いたことが原因であった。


「お姉さまはなぜ、兄さんが【狂気】を発動させて自分の父を危険な目に遭わせようとしていた際に……目を輝かせていたのですか?」


 自分でも驚いた。そのときは澪さんも表に出ないように必死だったから、必然的にそれは自分の意思である。自分にも意思はあったのか。

でも、それによって知った自分というのもなんともいけ好かないものではあった。

それと同時に、晃司君への興味は出た。

 何が私をそう引き付けたのか?それと同時に、私と澪さんの混濁した本質を知っていても平気な彼なら受け入れてくれるのでは?という希望もあった。




 ボクは未だに学校での事件が解決していないということを思い知らされた。

ただ一人、されども一人……その重みは大きい。

山崎は追い出した。学校内は【妥協枠】を除いていい奴らばかりである。

それを知らない可能性はある。しかし、問題はそうではないのだろう。

そのことは、行動を起こさなかった自分にも責任がある。終息させても後始末が終わらない。それは大きなことである。


 今回の中心人物ともいえる一人の少女の名前は鳥海とりうみとおる

クラス自体は一緒になったことはない。一度見たことはあるが問題があるようにも見えない。つまりは合格な人物。今思えば、薊に近いあり方だったように思う。純粋というか、でも薊とは違う。


 彼女はこの地域で3番目に力を持つ鳥海産業の一人娘(委員長談)らしい。

うちでは珍しい本物のお嬢である。うちはパチモンが多いからぁ。

ちなみに1番は柊、2番は三笠組。柊はたぶん日本一だけど非公式。

基本的におとなしく、ボクと同じで教室の隅にいる印象だった(運動会等)。

何だろう、たかしと仲良くなるまでが悲惨すぎる。


 つまり何が言いたいかというと、学校に来るように言う人物がいないということである。

この機会を逃したら、もう復学はない。そんな状況にあった。

しかし、現実は非情で彼女は復学していなかった。

だから、ボクはおせっかいと知りながら【悩み】を解決しようと思うのであった。




 兄さんのここ最近の大きな【悩み】は私たちに関することが多い傾向にあります。お姉さまの一件に始まり、綾さんのいじめ問題からの不良たちとの決戦、山崎鈴音の登場に伴う私の誘拐……あの時は気絶していたから兄さんの姿が見えていなかったのは今になって思えば後悔しかありません。

温泉旅館での兄さんの過去との決別、自分のことと文化祭でのこと……


そのうちどれも共通するのが、新しく知り合った人物と仲良くなる点です。

つまり、兄さんは今回の鳥海さんとも仲良くなる可能性はあります。

これ以上ライバルが増えるのは如何なものかと考えながらも、兄さんのためになるのであればそれには誠心誠意協力させてもらいましょう。


 それでも、鳥海透という人物は個人的にも気になります。確か小学生時代に一度だけ見た覚えがあります。それなりに明るく、愛想のいい方だったはず……それ故に、いじめで不登校のままというのも違和感を覚えています。

 それに、委員長さんから聞いた人物像と大きくかけ離れています。それは、社交界向けの【演技】であったのか【素】であったのか、それは分からないままです。


 兄さんのためになるのなら、どんなことでもしましょう。手始めに、鳥海家との交渉から……




 委員長とたかしの3人でこれからの事を話し合うことにした昼休み。

「それは【悩み】でいいのか?」

たかしは問いかける。

「今回の事はあなたは悪くないのよ。そこまで責任を感じる必要はないわ。」

委員長は言う。

だからボクは

「ボクは今回の事で後腐れを完全になくす。あの件を完全に過去のものにする。

それに、ボクは元から【悩み】を解決して【狂気】を抑えることが目的だった。」

そうであったはずなのだが、今の状況は言うまでもない。

「それよりも、綾ちゃんと話せるようになったのも、委員長と友達になれたことも美咲と和解できたことも全て【悩み】を連れてくる【縁】のおかげなんだ。だから、ボクはその【縁】を大切にしたい。」

これが今のボクの【悩み】に対する考え方である。自分でも、大分考え方が変わったと自覚している。


それに、鳥海さんを助けたいと思った。そこまで行くと、自分が偽善者となっていることには否応なく気が付く。そのあたりは、ボク自身の【望まぬ成長】なのではないだろうか?

それとも……

いや、それはあり得ない。そんな奴はいるはずがない。


 次第にボク自身が崩壊しているのではないかとも思う。それとも、成長することはそういうことなのだろうか?

父さんは家に帰らない。すべてを知っている人からは何も聞けない。母さんも父さんなしでは容易に何も言えないらしい。

薊も最近様子がおかしい。希は姉さんの記憶と頭脳を持っている。

何かを言える相手はもうこの二人しかいなくなっていた。

美咲?和解したといっても愚痴や話し合いをするような仲ではないです。


 前に母さんが言った【縁】を乗り越えた先の【成長】で答えは出るのか?

もうボクにはそれしか残ってはいない。すがるものなんて何もない。


「それならいいんじゃないか。鳥海さんの家にでも行こうか。そのまま、全てを終わらせよう。それしか今はしようがないんだろ。」

おや、さすが親友。流石に分かっていたか……

「私もできる限り手伝わせてもらう。流石に女子のお目付け役がいないと薊ちゃんがどう思うか。」

そうだね、考えてみるとこれはね、あれだね。

それと、薊の名前を出したときのたかしの顔が複雑な表情を浮かべていた。

スト子さんからの疲労であってほしいな。こいつの薊関連の複雑な表情には、悪い思い出しかない。




 すべての下準備を終えて、ボク達は目的地に向かう。今日は日曜、そして、鳥海産業社長すなわち鳥海さんの父親の休日である。

あらかじめ薊がアポを取ってくれていたらしい。毎回良くやってくれます。

そして、アポが取れるという凄さ。柊の名前なのか、それとも薊さんの交渉力なのでしょうか?

それは一旦置いておいて、今彼女は別棟にいるらしい。本宅と別棟かよ……

本宅での両親とのやり取りを経て(やっていることが本当に偽善的)鳥海透の説得を始めることにした。


「帰ってください」

即答である。

委員長が一言発しただけじゃないか。

「知ってますよ。学校が大きく改善されたことも何も。」


「それならなんで?」

委員長が前に一歩進むと、何かが風を切る音がした。

委員長の顔にソレはかすり頬から血が滴る。

「エアガンか……」

たかしは言葉を漏らす。彼女は重度の銃器ヲタであるらしい。

それが高じて、エアガンにまで手を染めている(父親談)。

それはともかく、委員長はのけぞって尻もちをつく。少しやりすぎかな?


「私は全て聞いています。これが本当に私のためではないことも。学校がなぜ改善されたかも。一人の生徒が消えた直後に生徒数が激減したことも。それもそろっていじめっ子が。」

どうやら知っていたらしい。それでもボクは止まることはできない。

「そうだよ、人助けなんて結局は自分のためさ。誰だってそうなんだ。」

「ここまで来てそれを言いますか!」

「だからこそ言わせてもらう!」

ボクは声を大にして言う。


「【人の為】といいつつも結局は【自分の為】である。それを自覚するものが

【善人】であり、それを認めず押し付けるものが【偽善者】である。」

だからこそ

「この世に下心のない奴なんていない。助けることで心が満たされるのならばそれも下心だ。だから、お前は全ての人物を嫌いにならなければいけない!」

「……」

彼女は沈黙する。ということは正解だったのだろうか。

薊から教えてもらった情報と両親の話に基づいた結果がこれだ。


彼女は疑心暗鬼になっている。

誰が【善人】で、誰が【悪人】で、誰が【偽善者】なのかと。

誰が自分に邪な感情を持って近づいてくる人間か分からない。

誰が自分に下心を持って接しているか分からない。

常に幼い頃から鳥海家の長女として取り入ってこようとする人間を排除して、

自分の為になる人物と友好な関係を結ぶ。

それは大きな家に生まれた時からの宿命であろう。

しかし、そのままでもいつかは崩れ去る。拠り所を必要とする。

その結果、彼女が選んだ答えが【独り】である。

そんな極限の状態の中で起きたのが山崎達のいじめである。

後は、考えるまでもないだろう。


「うるさい!」

彼女は地上にいるボク達に建物の上から叫ぶ。

「うるさい!あなたに何が分かるっていうんですか!近づく人間をすべて選んで分別して!他人を分けて見るなんてことしたくないのにさせてくれない!みんな私に下心を持って近づいてくるの!そんなことなら私はここから出ない方がいいの!」


彼女は、鳥海透は泣いていた。彼女はただ優しかった、優しすぎた。

このような場所で生き抜くには優しすぎた。

でも、それは逃げだ。人を分別することなんてみんなしている。

それをしない奴を人は【分け隔てない奴】や【バカ】と呼ぶ。

恐らく彼女は前者なのだろう。誰かを見下すことや切り捨てることができない。

だからボクは、これ以外の事で説得しようと思う。これ以上傷つけないために。


「ボクは、一族の呪いを自分のものにするために人を助けている。まあ、それ以前にもしていたけどそれは置いておいて……それは、ボク自身の成長を促すためらしい。でも、今はそのためだけではない。ボクは人の【悩み】と【縁】がある。」

ボクは続ける。

「ボクは、【悩み】を解決することで新しい仲間に出会えた、疎遠になっていた友人と再びこうして一緒にいれる。もう、独りじゃなくなっていた。誰かを助けるたびにその人との【縁】ができる……それを思うと、うれしくなる。自分でもおかしいとは思っている。姉さんから『普通でいなさい』と言われて、

ずっとそれに従ってきた。異端でもいい、人と違ってもいい、もう人と同じでいる必要はないことに気付いた。ボク自身も二度おかしくなっている。」


ボクは前に進む。エアガンで撃たれる。体のあちこちが痛む。

【狂気】の力を借りる。治癒力で回復する。撃たれる。その繰り返し……

その果てに……

「それでも、自分で得たことは無駄ではなかった。無駄にしてはいけない。」

彼女は大型のエアガンを取り出す。あれを生身で受けるのは正気ではない。

自分が正気なはずはないのだからそのまま進む。

「誰かの為にいられるのは、それだけで良い。モノによるが人の為だけではない。

自分にも返ってくる。」

足に打たれる。あまりの威力に球が足の中に埋まる。そのままこける。

だけどこれでは終われない。


そして、瞳は紅に染まる。

「お前は自分から何かを得ようとしたか?無駄だと決めつけて何もしてないんじゃないのか?」

弾幕の雨はやまない。大型の球を喰らっても今は傷もつかない。

「うるさい!少し苦労したぐらいでわかった気にならないでください!」

最後に狙いを定めて放つ。

しかし、それを回避して大地を蹴り彼女のいる部屋まで飛ぶ。

「まだ、君は終わっていないんだ。今からでも始めることはできる。」

「もう遅いんですよ。こんなことをどれだけ続けてると思ってるんですか。」

ボクは想定していた答えを発する。

「だから、ボクと始めて見ないか?できる限りのことを手助けしよう。まだ、お終いには早い。

ボクに君を助けさせてくれないか?」

「はい。」

彼女は思ったよりもすんなり答えた。きっとこのままではいけないと気づいてはいたのだろう。ボクはきっかけを与えるに過ぎない。それを分かってくれているのだろうか?たかがきっかけ、されどもきっかけである。

ボクに立ち直るきっかけをくれたのも薊だ。これがボクにとっての何にも代えがたい理由である。




 久しぶりに兄さんの瞳が紅に染まる瞬間を見ました。

最近は【狂気】を使っていても瞳の色はそのままで変化がなかったのですが、

今回は違うようでした。それに、変色したのに言動が兄さんのままでした。

それはつまり、【狂気】を克服したということでしょうか。

ようやく兄さんも解放されるのですね。とてもうれしいです。


 鳥海さんを引き連れて兄さんが別棟から出てきました。

しかし、この後の彼女の発言のせいで積み上げてきた何もかもが崩れ落ちるとは思ってもいませんでした。


「晃司さん」

「何?」

いつの間に晃司さん呼びになったのでしょうか?後で聞くことにしましょう。

「好きです。付き合ってください。」

「「「「……」」」」

え?一体何を言っているのですかこの人は?兄さんもいつものように冷静に振ってください。

そう考えていると、いつもと違い動揺したままの兄さんは

「え、あ、いいですよ……」

そう言ってしまった。

兄さんに初彼女ができてしまいました。それも、私たちの中からではなくぽっと出の人物に……

え、どうして?どうしてなのですか?兄さん……兄さん……

私はもう妹でいるしかなくなってしまいました。それでいい……本当に?

その答え自体はとうの昔に出ています。

「はははっ」

思わず乾いた笑みを浮かべて乾いた笑いを発してしまいます。

あの人を、鳥海透を認めるわけにはいきません。

それはきっとみんな同じでしょう。



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