巡り合わせ
更に進む。
奥へ──奥へと進んでいく。
途中から迷路のようになっていた。
同じところを歩いていると感じたが、それらは錯覚。
通路の角度などを調整して、そう錯覚させているだけだ。
これは楽園の船が持つ特徴。
研究成果を運ぶための船は、必ずこういった細工が施されている。
だから迷路のようになるのは、研究成果に近づいている証だ。
更に奥へと進む。
しばらく歩き続けた所で、これまでとは違う扉を見つけた。
この扉だけ傷んだ形跡がない。
頑丈に造られたために、周囲の壁や他の扉との違いが顕になってしまったのだろう。
600年経っても全く痛んでいない扉。
この様子を見るに、トラップがあれば生きている可能性が高い。
通常の方法で空けるのは危険か。
青水晶の大剣を呼びだし、剣先に触れて赤い液体をつけた。
ただの血液ではない。
賢者の石によって変質した血液だ。
傷一つなく出たソレを大剣に乗せて、先を扉に触れさせる。
まるで生きているかのように動く液体。
徐々に扉へと染み込んでいき、やがて視界から完全に消える。
音が聞こえた。
剣で触れると、問題無く扉が開く。
成功だ。
扉の鍵を内側から解除することが出来た。
邪道ではあるが、それでも扉にとっては正式な手順となるように解除したのだ。
トラップの発動もなかった。
宙に浮かぶ愛用の大剣を先行させる形で、アーシュは室内に足を踏み入れる。
広い空間だ。
全体的に暗いが、壁際にいくつも電子的な明かりがあるため躓くことは無い。
この部屋は、内部を歩きまわる必要は無さそうだ。
あるのは3つの箱だけなのだから。
銀色の箱。
詳しく確認しようとするも、部屋の明かりだけでは足りない。
一枚のカードを取り出し、魔導を発動させる。
カードの明りにより少しは見やすくなった。
個別に模様が刻まれているのが分かる。
確かアルカナという、異世界の占いで使うカードの模様だったか。
Chariot──Death────Fool。
やはり彼の研究成果だ。
”我が愛し子たち”
彼がそう呼んでいた、最高傑作とされる内の3体。
特定の分野に最適化された人間達。
チャリオットは── デスは── フールは──
特徴、蘇生方法、人格──
強欲王の知識から、生物兵器の情報を探り当てていく。
機材に触れ知識との齟齬を修正しながら、いつしかアーシュは笑みを浮かべていた。
年齢に沿ぐわない表情。
彼の美しさも相まって、蟲惑的とすら表現できる笑み。
気付いたのだ。
この巡り合わせが、計画を早めるキッカケになることを。




