ある少女の回想1
私の一番古い記憶。
暖かな両親の間での心地よい睡眠。
突然の轟音。
暗闇で光る青白い光の線。
暗闇。
加重。
血の匂い。
夜明。
気がついたら「学校」と呼ばれる場所にいた。両親はいなくなっていた。一人。
親切に近寄ってきた同世代の子供たちに挨拶をしようとして気付いた、声を失っていた。
そして、少しだけの両親の記憶のみ、自分の名すら思い出せなかった。ただただ、心の中に痛みと苦しみだけがあった。
「学校」での訓練は熾烈を極めたが、肉体の痛みや苦しみが、心の痛みと苦しみを和らげてくれる事に気付くと、ただただ自分の肉体を追い込むことが喜びに変わっていった。
言葉を発せずコミニケーションの取れない自分は、最初から孤立していた。
学校では、肉体的に優れているもの意外は、生産や研究の為の学校へ転校していった。
あるとき、そんな自分に声をかけてくれたのがシャルロットだった。
彼女は非常に面倒見が良く、声の出せぬ自分の為に簡単なジェスチャーである程度の意思疎通が出来るように、根気良く紙とペンで自分との交信手段を作り上げてくれた。
それからは常にシャルロットと共に行動した。
黒豹の男が、新たな生徒達を連れてきた。
赤髪のドワーフ女と青髪の長身女が到着早々に大喧嘩を始めてエイドリア先生に怒られていた。
エイドリア先生の折檻は徹底している。治癒魔法もかけられず4日ほど高熱にうなされて寝込んだ2人は元気になると、また喧嘩をしていた。2人の言い分は「お前のせいで!」だったが、折檻と熱と喧嘩を繰り返していく内に、明らかに力を増してきている事が見ていて分かった。
そして3ヶ月が過ぎる頃には、赤髪と青髪は連れ立って歩くようになっていた。
正に肩で風切って歩く2人に声をかけるものはいなかった。
2人も噛み付く先を探すような目つきで校内を練り歩いていた。
そんな2人をシャルロットは「野蛮」と言って毛嫌いしていた。
シャルロットでも嫌いになる対象があるんだと驚いたものだ。
ガルローズ先生が久しぶりに来た。
まだ旅先から戻ってきたばかりらしく全身が傷だらけの状態だったが、「これも大事な仕事なんだ」と言って、休むつもりはないらしい。
午後からは久しぶりの模擬戦闘ということで凄く楽しみだ。
シャルロットと同じ陣営になることが出来た。
私の属する部隊が敵陣をかき回したところに、シャルロットを先頭にした部隊が突っ込んで完勝。
今までのこの必勝パターンが、今回はいきなり巨大な土の壁に遮られた。
土の壁を乗り越えた所に水の矢が打ち込まれる。
土の壁が消えたところに、赤髪が火矢を放ってくる。
魔法の水の矢と鉄の矢に火を灯した火矢が左右に交互に襲い掛かる。
魔法防御と物理防御を切り替えながら推し進んでいくと、矢をハンマーに持ち替えた赤髪が突っ込んでくる。
その日、私達は初めて敗北した。




