通信
「モートよろしくな!」
手のひらサイズのミニオデロンが、フランクに話しかけてくる。
「可愛いっ!」
「よぉ小さいの!オマエもよろしくな!」
「なに?この子しゃべれるの?」
近づいてくるキャンにミニオデロンが話しかけた。
どうやらオレの「魔族交流」が遺伝されているのか、人間とも話せるようだ。
「モート。名前付けてやってくれ」
名付け・・・
なんかオレが気持ちの整理が出来るより早くどんどん事が進む。
「オテに名前?カッコイイの頼むぜ」
オデロンより流暢に話せるのもオレの分身でもあるからだろう。
オレの分身とかロクでもない予感しかしない。
「では、オマエはオテロクと名付ける」
「おお!なんかチョットかっこいいじゃん!強そうだし!」
気に入ってもらえたようだ。由来は伏せておこう。
「オデロンありがとうな」
一応、礼はする。
「オテロク連れてけば、オデとも会話出来るからな、オデも寂しくない」
「会話?オデロンとオテロクは離れてても会話できるのか?」
「夜だけだけどな」
闇の力が増すのだろうか?
遠距離通話とか便利過ぎるぞ。
対象がオデロンオンリーという部分を除けば・・・
キャンとカイエントとも別れの挨拶を交わし、俺達は洞窟を後にした。
明日の朝にはラグ一家が来る。
今日は早めに帰って、旅の準備と鍛冶仕事だ。
「明日からしばらく会えなくなるな」
俯いて隣を歩くメルロがオレに話しかける。
「そうだな。なるべく早く戻ってくる」
「今夜はドミリスの館に泊まっていくんだろ?」
嬉しいお誘いだが、流石に長旅を前に、準備をしたい。
そして、今はちょっぴり賢者モードだ。
「すまん。明日からの長旅の準備がある。ここでお別れだ」
「お前が帰ってくるまで心配で眠れぬ日が続きそうだ」
メルロが苦笑する。
「オテがいるから大丈夫だ。安心しろ」
オレの肩口からオテロクが話しかける。
雰囲気ぶち壊しだ。
「そうだな。その羽根、少しだが私の因子も混じっているようだな。よろしく頼むぞオテロク」
「ああ、任せておけ」
オレは手のひらサイズのオテロクに何が出来るのかと思う。
あまり期待しないほうが良いだろう。
「モート。いざとなったら全てを捨てて逃げてこいよ。逃げたっていいんだからな」
見上げてきてからの、この甘い言葉。
メルロぉぉぉぉぉ
かわえぇっぇぇぇ
オレは無言でガッシリとメルロを抱きしめた。
肩口でオテロクが囃し立てる。
雰囲気台無しだ。
結局、朝方まで鍛冶仕事を頑張ってしまった。
なんだかんだで鍛冶の仕事が好きなんだなと思う。
素材から、イメージする形や性能どおりに物を創りだす。
これは、凄く楽しい作業だ。
昨夜は、鍛冶仕事をしていて、オテロクともいろいろ話しが出来た。
基本的に一人で作業を黙々とこなすオレのスタイルに、初めての話し相手兼助手となったわけだが、思いの外いろいろと役立ってくれた。
流石、オレの因子を受け継ぐものだ。
アイデアを生み出すセンスがある。
明日からの長旅に、ランガー装備を着用するわけにもいかないが、見た目の違う古代龍装備は必要だろうと思って、作っている時だった。
「その素材を加熱してぶっ叩く時に、オテも手伝っていいか?」
「手伝うって何をだ?」
「ちょっと、力を込めてみる」
「力を込める?ああ、頼む」
良くわからないが、説明をしてもらっても分からないだろう。
実際にどういうことか体験するのが一番だ。
加熱して叩き始めると、横から例の黒い霧を素材に注ぎ始める。
赤く加熱された素材が赤黒くなる。
そうやって、オテロクに手伝ってもらいながら出来た、明日からの装備がこれだ。
装備 暗器 暗黒古代龍の仕込み杖 闇属性攻撃 +62 攻撃力 65 即死 +200
頭:イケメンフルフェイス(イケメンボイス変換機能付き) 防御力 3
上半身 下半身:暗黒古代龍のローブ 潜伏 +35 隠密 +45 全属性耐性 +28 防御 130
足:暗黒古代龍の靴 潜伏 +35 隠密 +45 全属性耐性 +28 防御 110
腕:暗黒古代龍の手袋 潜伏 +40 隠密 +35 全属性耐性 +28 防御 122
アクセサリー:エルフ族変装セット 防御力 2
全身が真っ黒の装備になってしまった。
ローブはフード付きだから、頭装備を付けてなくても違和感は無いだろう。
ランガー装備に比べて、攻撃力や防御力、全装備統一効果が無いが、それでも一級品の装備だ。
一級品の装備なのに、見た目は普通の装備に見える所も目立たなくて良さそうだ。
潜伏と隠密にスキル値を振らなくても、発動すれば完全なスキルが使えそうなプラス補正もありがたい。
オテロクがさっそく役に立ってくれた。
流石、オレの因子を継ぐ者だな。
「オテロク。いい装備が出来たよ。ありがとう」
「オテもモートの役に立てて嬉しいぞ」
オレに顔が少し似てる所も可愛い。
明日からの旅でも良い道連れが出来た。
オデロンに感謝だな。
「オテロク。さっそく、オデロンと話ししてみたいんだが?」
「お、やってみるか?それじゃ、まず、この部屋は明るすぎる。明かりを消してくれ」
「分かった」
準備が出来るとオテロクがオレに手を向けるのが、薄明かりの中でなんとか見える。
黒い霧を出しているようだ。
次第にオレの耳や口、顔全体を濃い霧が覆い始めるのを感じる。
反射的に目をつぶってしまう。
本能的な恐怖というやつだろう。
「モート。さっそく使ってくれたんだな。オデ嬉しいぞ」
「オデロン。凄いなこれは」
目の前の暗闇にオデロンが立っていた。
サイズはオレと同じぐらいだろう。
同じサイズのオデロンでもガッシリとした体格が強そうに見える。
「オテロクのお陰で明日からの旅の装備も良いものが出来た。オテロクを創ってくれたオデロンにも改めてお礼をと思ってな」
「オテロク役に立った。オデほっとした」
オデロンはオデロンなりに心配してたらしい。
「いろいろ話したいこともあるが、もうすぐ夜が明けそうだ。オデロンまたな」
「モート。気をつけて」
会話が終わると、ゆっくりと闇が晴れてオテロクが現れる。
「オテロク。凄いな。オデロンと話せたぞ」
「オテ凄いのか?おお!やった!オテ褒められた」
オテロクも素直で可愛いもんだ。
「もうすぐ朝だが、長旅になる仮眠でもいいからとっておこう」
オレがベットに横になると、オテロクもオレの隣で横になった。
「おやすみオテロク」
「おやすみモート」
小さな家族。
オレの分身。
大事にしよう。




