初めての
「オデロン、オレもお前を連れて行きたいが、人間の旅にお前は大きすぎる。お前の強さは良く知っているが、目立つお前を狙って、どんな手段を使ってか、お前を窮地に追い込んでしまう奴だっているかもしれない。ましてや、今回は偵察も兼ねた旅だ。気持ちは嬉しいが連れては行けない」
「オデ、モートに迷惑かけるなら、ここで待つ」
「ああ、本当にすまない」
「なら、オデからも何か渡す、いいか?」
「え?オデロンもオレに餞別を?」
「オデ身体一つ、他何もない、だけどモートに手伝ってもらえれば渡せるものある」
「オレが手伝えば?なんだ?なんでもするぞ」
「まず、髪の毛をくれ」
「髪?一本でいいのか?」
オデロンは何をしようっていうんだ?
オレは短髪の髪を自分で撫でながらオデロンに問いかけた。
「いっぱいくれ」
「いっぱい?」
なんか、オレがオデロンに形見を残すような展開になってきてないか?
怒らせると怖いので、それでも素直にオレは短剣を取り出すと、前髪や襟足などから、髪を束で切り取った。
「これぐらいあればいいか?」
「いいぞ。そこに置いてくれ」
言われるままに、オデロンの前に置く。
「次は、ここに血を垂らしてくれ」
「血?オレの血か?」
「そうだ」
なんか凄い面倒だそ、血とか痛いの嫌だし。
餞別とか欲しくなくなってきた。
でも、怖いから言うとおりにする。
短剣で、人差し指の先を軽く切る。
ああー血だよ。滴り落ちてるよ。
ポタタッタターっと結構な勢いで出血してる。
その血を髪の束の上に垂らす。
「このぐらいでいいか?」
「いいぞ」
なんか仰々しい事になってきた。
なんでこんな複雑な事するんだ?
どこでオデロンはこんな事を覚えたんだ?
生まれつき持って生まれた本能的な知識なのだろうか?
「ヒール」
横から心配そうに見ていたキャンが治癒魔法をかけてくれた。
「ありがとう」
オレはキャンに爽やかスマイルでお礼を言った。
爽やかなつもりだ。
「最後にここに子種を垂らしてくれ」
「あ?」
「子種だ?あるだろ?」
「・・・・・」
いじめか?
新たなプレイか?
オレはそういう趣味はない。
オデロンとの会話は、他の4人には理解できないのだから、いきなりここでオレが子種出す作業始めたら完全にオレがヤバイ人として認識されるだろう。
確かにオデロンは怒らせたら怖い。
だが、こんな横暴な要求にホイホイと従うほどオレも落ちぶれちゃいない。
「オデロン、流石にそれは出来ない」
「出来ない?モートなんでもするって言った」
何気に無駄に記憶力あるな。
「確かに言ったが、まさか子種出せとか言われると思ってなかった」
「何か問題あるのか?」
「人間にとっては人前で子種出すとか屈辱的な事なんだ」
「分かった、オデここで待ってる、洞窟の中で出してこい」
横暴だ。
オレはそこまでして餞別は欲しくないぞ。
メルロも心配そうな顔でこちらを見ている。
・・・・
大丈夫かもしれない。
この状況で、対応出来るオレは変態なのか?
「分かった、ちょっと待ってろ」
オデロンは当然だと言った表情だ。
悪意で言ってる訳じゃないから断りづらい。
「メルロちょっといいか?」
「どうした?」
「サイクロプスが旅の餞別をくれるというのだが・・」
「ああ、何か儀式めいた事を始めたな」
「問題が起きた」
「言ってみろ」
「髪と血の他に、オレの子種をあの上に垂らせと要求された」
「正気か?」
「彼はいたって真面目に要求している」
「なら早く出してこい」
「えっと・・・協力、してくれないか?」
「なっ?何を?」
「ちょっと、一緒に洞窟の方へ行こう」
「お前は馬鹿か?」
「たぶん馬鹿なんだろうな・・・」
呆れた顔のメルロの手を引いて洞窟内へ移動する。
キャンとカイエントからの視線が何故か痛い。
背徳感たっぷりにメルロと戻ってくる。
無言のメルロが、例のブツの上で髪をかき上げ、数秒後に準備が出来た。
「モート、オデお前の子種出せと言った」
「出したろ」
「あの女のツバいらない」
・・・・
なんだそこは何のこだわりだ?
もう勘弁してくれ!
「メルロはオレの大切な人だ。ツバぐらい気にするな」
「混じるがいいのか?」
混じるってなんだ?
もう、こんな屈辱的な事は早く終わらせたい。
キャンとカイエントは、メルロが吐き出したブツを見ているが何だかは分かってないだろうが、ラングロングは理解しているようだ。
つらい。ひたすらツライ。
「混じってもいい」
「いいなら始めるぞ」
オデロンはそう言うと、両手をブツに向けると、指先から黒い霧を出し始めた。
エイドリアの軍に対して使っていた霧より濃い霧だ。
見ていると次第にオデロンの身体が、指先から霧となっていく、腕、頭部、上半身、下半身と霧になり、今、オレの前には大きな闇が円状になって宙に浮いている。
「ラングロング、オデロンは何をしてるんだ?」
「私にも分からない。だが、なんとなく予想はつく」
「なんなんだ?訳がわからないぞ?」
「もうすぐ分かる。見ろ」
大きな闇が徐々に形を整え、ダークサイクロプスへとなっていった。
「できた」
そこには一回り小さくなったオデロンがいた。
といっても、9m程の高さがあるから充分にデカイ。
「モート、オレ一緒にいけない」
「ああ、そうだな」
「だから、こいつ連れてけ」
オデロンは、オレの前に巨大な握りこぶしを近づけると、その拳をゆっくりと開いた。
「おーっす!おす!おす!おーす!」
握りこぶしの中からなんか黒いのが飛んで来て、オレの周りはぐるぐる回っている。
「だから言った。混じったぞ」
黒い物体は、オレの肩に着陸する。
目があった。
オレの肩の上に、小さなオデロンがいた。
顔がちょっと猿っぽくて、背中から黒い羽が生えている。
「おーっす!」
ちっこいのが挨拶してくる。
「お、おっす」
なんとなく理解できた。
理解したく無いことだけど、聞かずにはいられない。
「オデロン、コイツは?」
「オデとお前の分身だ」
・・・・
子持ち。
訳がわからない間にオレは子持ちになっちまった。
しかも、訳の分からない生物の・・・




