灰
「ほれっ!出来たよ!シャリーン!エド!テーブルに並べな!」
「「はいっ!」」
ムッチャ返事いいな!
エーテリスの恐ろしさは、教育上は凄くいいんじゃないのか?
子ども達が台所をテーブルを何度か往復すると、凄い品数の料理が運ばれてきた。
エーテリスさん、手際良すぎますっ!
「今日は、モートさんとあんたの記念すべき日でもあるんだろ!?今日は、皿洗いと風呂掃除は、あたしがやってやるから、好きなだけ飲みな!」
エーテリスが軽々と持ってきた巨大なタルがテーブルの横に設置される。
「ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!」
えっと、あなた何者ですか?
手刀でタルの上部が綺麗に外されました。
エルフなのに格闘家としての能力に恵まれ過ぎじゃありませんか?
手刀の断面が凄く綺麗です。
木くずも入らぬように綺麗に・・・・
「エーテリス!」
ソマックが驚きの表情を見せる。
うん。やっぱ、この芸当は驚くわな・・・
「皿洗いも風呂掃除も今日は免除なのか!?」
あ、そこですか?
「何度も言わせるんじゃないよ!ほれ!これで飲みな!」
ポチャーン!ポチャーン!
デッカイ木のジョッキが、タルの上に2つ浮かびました。
これでタルから酒をすくって飲むようです。
今夜は帰さない、帰れない、明日は起きれない、コース確定しました。
「「「「いただきまーす!!!」」」」
凄い数の料理を前に、エーテリスを含めた全員で食事を始める。
2人の子どもたちも、予想に反して行儀よく座っている。
食事の時間に暴れたら、子どもと言えどもエーテリスの張り手が飛んできそうな家庭だからな・・・
まず、目の前にある、サラダからいただくとする。
葉っぱの上に、赤い野菜、謎のゆで卵のスライスと、彩りは凄く綺麗だ。
そして、味。
美味い。とてつもなく美味い。
ただの怖い嫁さんじゃなかった・・・
手際良く、この料理を作り出すって凄いよエーテリスさん!
これは、もちろん野菜の鮮度もあるんだろうが、野菜の組み合わせ、そして、ドレッシングがなんとも独特の味わいで、後を引く、ついつい酒を飲む合間にサラダを食べてしまう。
とろみのある肉と野菜の炒めもの、黄金色のごった煮スープ、野菜と肉が混ぜ込んであるチャーハンらしきもの、ミルク風味の魚の煮付け、巨大な獣の香草詰めの姿焼き、色とりどりのフルーツの盛り合わせ、冷たく冷やした獣のキモのスライスと固く焼き締めたパンのスライスを合わせたツマミなどなど・・・
どれを食べても、この10年で食べたこともない美味さだ。
いや、転生前の人生を合わせても、こんな旨いものは食べたことが無い。
「エーテリスさん!今までの人生の中で一番美味しい料理です!本当に美味しい!こんな美味しい料理が毎日食べられるソマックさんは幸せものだ!」
とんでもなく旨い料理を食べさせてもらって、素直に言葉が溢れでた。
「さすが、モートさんだね。女を褒めるのも上手だよ。お世辞はいいからどんどん食べとくれ」
そうは言っても、料理を褒められるのは嬉しいのだろう。満面の笑みだ。
殺気を感じて、振り向くと、あの温厚なソマックがジト目でこちらを見ている。
あ、ああ大丈夫だから、そういうのじゃないから・・・・
「それにしても、リムーレ近隣では見ない料理ばかりだ。凄いレシピの数ですね。しかも凄く美味しい」
素直に感心する。これだけの幅広いレシピ。美味さ。手際の良さ。一流と言っていいだろう。
「そうだね。この甲斐性無しが、あっちこっち連れ回してくれたからね、土地土地の美味しい料理は大体覚えたからね。そういう意味では、ウチの旦那に感謝してるよ」
エイドリアはソマックの背中をバンバン叩きながらそう話す。
ソマックを見ると、だらしない顔でデレデレしている。
なんだかんだ凄くお似合いの夫婦だな。
「料理の話はいいから、もっとジャンジャン飲んでおくれ」
ザボッ、ドンッ!
タルからすくってドンッ!
飲み干した杯に再度なみなみと溢れる酒。
断りにくい・・・・今夜は限界を越えることになりそうだ・・・・
目が覚める。
薄明かりの中、あたりを見渡すが誰もいない。
そして、知らない部屋だった。
どうやら酔いつぶれて寝てしまったらしい。
尿意を感じて、部屋の外に出る。
トイレはどこだろうか?
廊下を歩いて行くと
「ぐふぅぅぅぅぁぁ」
右側の扉から、押し殺した絶叫が扉越しに聞こえて、ビクゥッってなる。
聞かなかった事にして、進み突き当りにあった、トイレで用を済ます。
目が覚めた部屋へ戻るため、廊下を戻る。
どうしても、先ほど声の聞こえた部屋の前を通るときに、ゆっくり忍び足になってしまう。
怖い・・・開けてはいけないドアなのだろう・・・
「うはぁぁぁぅぅぅ」
扉越しの押し殺した声が再度聞こえる。
次の声がした時に、一気に部屋に戻ろう。
静寂の中、チャンスを待つが次の声がなかなか聞こえない。
どのくらいだろうか、凄く待った気もするが、まだ短い時間なのだろうか?
何も聞こえなくなった・・・・
急に背中をゾクゾクゾクゥーと悪寒が走る。
<潜伏><隠密>を発動して、部屋に戻る。
ベットに横になると、少し気持ちが落ち着いた。
ギュッと目をつぶる。
ギッギッギッギッ
誰かが板の間を踏みしめる音に聞こえる。
気のせいだと思いたい。
空耳だ。風の音だろう。
ギッギッギッギッ
明らかに近づく足音に耐えられなくなり、オレは扉へ移動すると、ガッチリとドアノブを両手でホールドする。
ギッギッギッギッ
扉の向こうに明らかに何者かがいる。
どのぐらいだろう。
無音な状態が続く。
やっぱりオレの思い過ごしだったのだろうか?
自然、フゥ~と溜息が出る。
瞬間、ガッとドアノブが回ると扉が開けられる。
必死に開けるのを全体重で防ごうとするが、隙間から伸びてきた逞しい腕がオレの手首をがっちりと掴んだ。
<潜伏><潜伏><潜伏><潜伏><潜伏><潜伏><潜伏><潜伏><潜伏><潜伏><潜伏><潜伏><潜伏>
何度も<潜伏>スキルと発動しようと試みたが、接触した状態では、<潜伏>は出来ないようだ。
あああああ。
開け放たれた扉の外には、月明かりに照らされた全裸のエーテリスが立っていた。
「あ、あああ」
何かを話さなければと思うが、口からは言葉が出てこない。
「うえあおああうおあえ」
エーテリスさんソマックさんは?
と言おうとするが、口から出たのは意味不明な音だけだった。
突然、死角から凄い衝撃を左頬に感じる。
部屋の片隅までオレは吹っ飛んでいた。
酔いが覚めてないのもあって、力が入らない。
ゆっくりと笑みを浮かべたエーテリスが歩み寄ってくる。
「本当にウチの旦那が迷惑をかけたねぇ。罪滅ぼしって訳じゃないが、今晩一晩だけ、相手してやるよ、アイツには内緒だよ。いつもアタシがアイツの尻拭いだよ!まったく!」
言いながら、オレのローブは脱がされていく。
恐怖に竦んでまったく力が入らない。
「そ、そまっままぁっくぅぅ」
かろうじてソマックさんと言えたつもりだ。
「あ?アイツかい?アイツはあっちで気絶中だよ。気にすること無いよ。当分目覚めないだろうからね」
「けぇへぇけっこぉぉぅうでぇすぅ・・」
「なんだい?」
「けぇこぉぉぅうですぅ」
「遠慮するこたぁないよ」
既に完全に剥かれてしまった、オレの武器は、完全に沈黙していた。
「なんだい飲み過ぎたのかい?全部あたしにまかせな!」
「やめぇてぇあああああああふぅぅぅ」
武器はモグモグされてしまいました。
一流の料理人によって、武器は磨かれ、眠りから覚めつつあった。
「fふいphぷhrwhgkfkじゃfはfdjkhg」
そして、オレの武器は完全に料理人の鞘に収まってしまいました。
両目から溢れた液体が両頬を濡らす。
ああ、なんかオレ久々に泣いてるんだな・・・
最後に泣いたのっていつだっけか・・・・
数時間前に
「美人な嫁さん手篭めにしたろか!
リアル充実爆発して塵となれ!」
とか思ってた自分を殴り倒したい気持ちでいっぱいだった。
そして、オレは灰になった・・・・・




