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商人グレました  作者: モロモロ
第二章 旅立ちまで
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ソマック家

オレはソマックの話を聞いてここまで来る間、エルフとは思えぬ美女。

種族を越えたハイエルフとか、ソマックが嫁さんを持ち上げまくってたお陰で、ソマック家に着くまで凄い緊張してた。


エルフ以上の美人って、あのフローネたん以上の美人ってことだろ?


そして、出てきたのは、確かにエルフとは思えぬ巨漢の女性だった。

ソマック、お前、どうやったらハイエルフって言えるんだよ!

確かに伝説の存在かもしれんが、違う意味で伝説だわ・・・・

尖った耳、黄金色の金髪、ふくよかな身体、逞しい腕、どっしりした下半身、全ての顔面パーツが大きい。エルフであって、エルフで無い存在。エーテリス。

ソマックの美観は独創的だった。

個性的な美観に乾杯!




今後、他人の話、特に美観や食感などは、見てみるまで食べてみるまで信じてはいけないと、良い教訓になった。

ありがとうソマック。


そのエーテリスに土下座している男が目の前にいる。

オレは、目の前に出されたお茶を飲みながら、温かい目でその光景を見守る。

事の顛末を、誠心誠意、妻に土下座しながら話すソマックの姿は美しいなぁ。

本当にいい男だ。


「本当に、苦労ばかりかけて、すまないがそういうことだ!モートさんがくれたチャンスを次こそは必ずモノにして、お前に楽させてみせるから。この通り、これからもついて来てくれ!本当にすまなかった!」


突然の告白にソマックの独白を棒立ちの姿勢でずっと聞いてたエーテリス。

理解に時間がかかるのだろう。

しばらく土下座するソマックを見つめる。

そして、土下座しているソマックへ両手を差し伸べる。


と思った、その手を今度は勢い良く振り上げると、同時に片足も振り上げ、その足でソマックの後頭部に痛烈なストンピングをかました。


「この甲斐性なしがっ!」


流石に予想してなかった行動にオレはお茶を吹き出した。


「ちょ!奥さん!それはっ!」


2度3度と繰り返されるストンピングに、ソマックのオデコのあたりから血が床に円状に広がっていく。

止めようとも思うが、いかんせんオレも怖い。

オレにこの攻撃が飛び火してくる可能性はあるのか?


「あんた、いつも町を変える度に、次こそはって言ってるよねっ!立ちな!」


頭髪を掴んで、顔面血まみれのソマックが引き起こされる。

流れるような手際の良さだ。

エーテリスの表情が作業をこなすかのように無表情なのが怖い。

そして、引き起こされたソマックの表情を確認すると、そこに、白い歯を見せ微笑むソマックを見出し、オレは戦慄した。


エーテリスがその薄ら笑いを浮かべたソマックの顔を、自分の足の間に片手で押し込む。

両手をソマックのヘソのあたりでガッチリとロックすると、そのまま上に勢い良く持ち上げる。

遠心力で足の間にあった、ソマックの顔が大きくエーテリスの頭上に、足も遠心力で振り上がりエーテリスの肩で勢いが殺される。

そして、エーテリスがソマックのヘソの位置でロックしたままの両手を、腰を折って、地面に叩きつけるように振り下ろすと、ソマックはそのまま地面に叩きつけられた。


ドバシィィィーン!!!!


ソマックは、両手を大きく広げて床を叩き、受け身をとった。

俗にいうパワーボムというヤツだ。

初めて生で間近で見た。

床が板の間だったのが幸いか、ソマックは生きていた。

薄目をあけ、口を半開きにして、痛みを分散させるように、浅い息を何度もはいている。

若干恍惚の表情に見えるのは気のせいと思いたい。


「はっ、はっ、うふぃー!はっ、はっ、うふぃー!」


ソマックの痛みを堪える荒い息遣いが、なんか気持ち悪い。


「グレートヒール」


エーテリスが、ソマックに向けて治癒魔法を使う。

相変わらず作業をこなうかのような無表情。


「しっかり稼ぎなよ、次はないからね!」


大の字のソマックを見下してエーテリスが言い放つと、オレの方を振り返る。

あああああ。

怖い。

怖いよぉぉぉ。

まさか、次はオレって事はないよな?

な?


「モートさん、こんな旦那ですが、心根は真面目で誠実な男です。どうか、モートさんの好きなように使ってやって下さい。末永くよろしくお願いいたします」


真摯な表情でオレを見つめた後、深々と頭を下げられた。

想像してなかった行動に、オレも固まってしまって、返事が出来ない。


「え、あ・・・」


長いお辞儀の後、顔を上げたエーテリスの頬に二筋の涙があった。

意外性のある女だな、おい・・・・ちょっとグッときたぞ。


「わかりました。こちらこそ、よろしくお願い致します。私もソマックさんには、出来る限りの事はしていきたいと思います。エーテリスさん、ご主人の家庭でのサポートよろしくお願いします」


「ありがとうございます。私の出来る限りサポートしていきます。モートさん、よろしければ今夜はウチで食事をしていってください。重ねて、主人をよろしくお願いします」


再度、深くお辞儀をすると、エーテリスは涙をそのままに、台所の方へと入っていった。

今のは、一瞬だけ、いい女だなって思ってしまった。

本当に毛の先ほどだけど、いい奥さんだなソマック。


食事を食べて帰るのは、返事を待たずに決定したようだ。

まぁ、この状況で断れるような胆力はオレには無い。

ありがたく、針のムシロになるだろう、夕食の場に同席しよう。

gkbr。


治癒魔法が効いたのだろう。

ソマックがゆっくり起き上がり、対面の席に座る。


「モートさん、驚かせてしまって、申し訳ありません。あれが私の妻エーテリスです。どうです?エルフとは思えぬ美しさでしょう!」


満面の笑みでソマックが問いかけてくる。

傷は癒えてるのだろうが、まだ、顔面が血まみれなのでムチャクチャ怖いです。

ギラギラした目で見ないでー!


「ああ、確かにエルフとは思えんな」


ウソでは無い。


「しかも、怒ってもちゃんと治癒魔法までかけてくれるなんて、本当に優しくて素晴らしい妻です。私には勿体ない」


うっとりした表情のソマック。

お前、それでいいんだな。

うん。

なんかもう、このまま帰れないわ・・・


「えっと、ソマックさん、これ受け取ってください」


200万ドランを手渡す。


「モートさん、これは受け取れません!只でさえ凄い迷惑をかけてしまったのに!」


あああ、これ貴方の貯金なんです!


「当面の生活費としても、必要だと思うんです。きちんと金利は頂きますので、長い目で返していただければ結構ですので」


「ありがとうございますっ!必ずお返しします!本当に本当にありがとうございましたっ!!!」


なんか、流石のオレも居心地悪いっす。

ソマックさん、あんた凄いよ。

良い人過ぎてオレの心はポッキリ折れそうだよ。


台所から、美味しそうな良い香りがしてくると、ドタタタタタという大きな音と共に、2階から2人の子供が駆け下りてくる。


「シャリーン!エド!家の中走るんじゃないよっ!ルイが起きちゃうだろっ!」


子どもたちの足音よりデカイ声でエーテリスが怒鳴る。


「うぎゃぁぁあぁ!うぎゃぁぁぁァ!」


部屋の片隅に設置してあるベビーベットから大音響が流れる!


「ほらっ!起きちまったよ!あんた!頼むよ!」


うん、エーテリスさん、あなたの声で起きちゃったと思うんですよ。きっと。みんな怖くて言えないけど・・・


「あー知らないオジちゃんがいるー!」


なんか、エーテリスそっくりの赤毛の女の子がオレを指差して発見すると、全力疾走で突っ込んでくる。

ひぃぃぃ助けてくれー!ソマック!

ソマックを見ると、嬉しそうな顔でルイドックを抱え上げている。

その腰のあたりに、後ろからエドリックが弾丸のように突っ込んでいく。


「パパー!!!」


明らかに、腰がゴキッとダメージ受けた感じなのに、ソマックは笑顔でエドリックの頭も撫でてやっている。


オレに突っ込んできた女の子は、何故か、オレのローブを掴みながら、オレの身体をよじ登ってきている。


「これこれ、シャリーン、モートさんに失礼だろ。やめなさい」


やんわりとソマックが言う。

ソマックさん。

もっと厳しく言ってくれ。


「モート!モート!」


肩車の体制になった、シャリーンがオレの髪の毛を持って、前後にはしゃぐように身体を揺らす。


あああああああああああいでぇぇぇっぇぇ

髪の毛ひきちぎれますぅぅぅぅ

明らかな重量オーバーですぅぅぅ


ソマック家での悪夢の一夜は始まったばかりであった。


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