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商人グレました  作者: モロモロ
第二章 旅立ちまで
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雇用契約

商人ギルドに着くと、ギルドの人間が血相を変えて、オレを出迎えた。

そして、奥の部屋に通される。

そこには、憔悴した表情のソマックが座っていた。

ギルドマスターのタイロップまで、その横に厳しい表情で座っている。

いつもはツヤツヤと赤く光っている肌も、今日はどす黒く、目の周りは落ち窪んでいる。


「モートさん、長い仕入れの旅、お疲れ様でした。まずは、こちらにお座り下さい」

「え?どうしたんですか?」


もちろん察しはつくが、一応何が起きてるのかは知らないフリだ。


「非常に申し上げにくい事ですが、報告させていただきます」

タイロップも言い難いようだ。


「実は、モートさんの店の商品が全て盗まれてしまったようです」

「また、ご冗談を」

オレは笑顔でタイロップに返す。


「私も冗談と言いたいところですが、本当です。ソマックが証言するには、きっと名うての盗人が全てを盗んだと言っています。ですが、ギルド側としては、盗人の入った証拠もありませんし、ソマックが全て虚偽の報告をし、モートさんの財産を不当に盗み取ろうとしているのではないかとも考えています。ソマックによれば、姿を消した盗人が、ソマックを昏倒させ、店の商品を奪っていったと話していますが、そこまでの手際の盗人の話を聞いたことがありません。まず、姿を消すほどの隠密の技というのは、遠くプロミリアの奥地にあるシャドーの隠れ里にそんな隠密の技を使う一族がいると言うような事が、度々、国際問題になったりしていますが、その里の存在さえも、誰も探し当てた者すらいません。それほどの技を使う盗人がいたとして、何故このような片田舎にある商人の店の商品を狙いましょうか?ソマックが、何かを企み、モートさんに被害を負わせたと思うのが自然な考えですが、それについても証拠がありません。こういった場合、被害総額の内、あくまで、販売価格ではなく、仕入原価の部分をソマックとギルドで折半で弁済する事になりますが、モートさんはそれでよろしいのでしょうか?加工費や遺失利益などは弁済されません」


「私は、最低限原価が保証されるのであれば構いません。そういうリスクも承知の上で「店番」をギルドに頼んでいるのですから」


スマートにかっこ良く返答する。

そっか、仕入原価のみの弁済なのか、知らなかった。

確かに、販売価格を弁済してくれるんだったら、それを利用した被害報告詐欺が横行しそうだ。

それにしても、被害にあっても、こうやって冷静に対処出来るって、カッコイイなオレ。

加害者もオレだけどな。


「寛大な方で良かったなソマック」

タイロップはホッとした表情でソマックに話しかける。

それでも、ソマックは沈んだ表情で押し黙ったままだ。


「どうしたソマック?モートさんは、弁済すれば、それで良いと言ってくれている。何かモートさんに言葉は無いのか?」

タイロップが、ソマックに強めの口調で話す。


「モートさん。今回の件、全て私の責任です。せっかくモートさんの「店番」という名誉ある仕事を与えて戴いたにもかかわらず、こんな事になってしまって本当に申し訳ありませんでした」

「ソマックさん、頭を上げて下さい。過ぎたことです、繰り返さなければいいんですよ。今回はたまたま運が悪かっただけですよ」

「モートさん。実は、今回盗まれたのは、モートさんの店の商品だけではないのです、私のアイテムボックス内の在庫や、資金、預金なども昏倒している間に、全て盗まれてしまったのです。ですから、折半分の金額もすぐ弁済することが出来ません」

「それでしたら、いくらかの金利は頂きますが、長い目で見て返していただければ良いですよ」


オレのフォロー完璧だな。優し過ぎるオレ惚れた。


「モートさん。実はその件なのですが、今回の事件は、既に商人ギルドを通じて、かなり広い範囲で各地の商人に知れ渡ってしまいました。ですから、今後、このソマックを「店番」として雇う店は激減するかと思います。そして、今回の被害総額を考えると、とてもソマックが返済出来る金額でもありません。実は、ソマックには、3人の子と妻がおります。ソマックを含め、5人を奴隷として売り出し、その金で借金の一部を弁済。奴隷となった後の賃金から、その一部を長い年月をかけてモートさんに返済という解決策しか、ギルドとしても思い浮かびませんでした」

「え?ちょ?なに?ソマック奥さんいるの?しかも子供3人もいるの?え?」

「事情があって、ソマックは妻帯者だと言うことを隠しておりました」


なに事情って?凄い気になります!

というか、凄い大事になってます。

奴隷とか!そこまで望んでません!しかも子供を奴隷とか!

流石に罪悪感ぱねぇ寝つき悪くなるわ!

ちょっと出る杭を叩くぐらいのつもりが、地面にめり込んで二度と出てこれない程に埋没してしまいそうです。


「ソマックという男は、優秀で誠実で、得がたい男です。しかも、妻や子もいるのであらば、その家族がバラバラになってしまうのは、あまりにも忍びない。これは、私からの提案なので、断って頂いても決行なのですが、ソマックさんに私の元で働いて頂くというのはどうでしょうか?もちろん、その分、しっかりと金利は取らせてもらいますから、給金は薄給になってしまうかもしれませんが、しっかりと成果を上げれば、それに伴う歩合金も出しますし、丁度、大きな仕事を始めようと思っていましたので、優秀な人手が必要なところだったのです。ソマックさんさえ宜しければいかがでしょうか?」


話の途中ほどから、信じられないという表情でオレを見つめるソマック。

話の最後の方には、目から大粒の涙を流し、どす黒かった顔を真っ赤にして、嗚咽している。


「モートさん。私は、家族がバラバラになり、二度と妻や子供には会えぬ事を覚悟しておりました。もちろん、それが当然の事だと思っております。奴隷になり、商人として、二度と陽の目を見ることは無いと思っておりました。今の、モートさんからの提案。謹んでお受けしたいと思います。いや、受けさせて下さい。モートさんの元で馬車馬のごとく働き、必ずモートさんのお役に立ちたいと思っております」

「良かった。ソマックさん、これから末永くよろしくお願いしますね」


ソマックさん。部下になってしまいました。思わぬ展開。

出る杭が、部下に。

これは凄い心強いぞ。


「待って下さい。モートさん、本当にソマックを信用して良いのですか?」


タイロップがオレに問いかける。

ああ、せっかく良い話でまとまりかけた所をぶち壊してくれるなぁ。

空気読め。


「もちろん、信用していますよ。人間としても、商人としても優れた男です」

「ですが、それ故に、とんでもない狡猾な悪人の可能性もあります」

「それは確かにそうかもしれないが」


タイロップ、お主、まさかオレの事を言っているのか?


「ですから、せめて、ソマックを部下にするなら、こちらを用いて正式に雇用契約を行なって下さい」

タイロップは懐より取り出した、お馴染みのアレだ。

雇用契約っていうか、魂プリーズってことかい?


「いや、そこまでしなくてもソマックさんは私を裏切ったりしませんよ」

「私からも、お願いします。もちろんモートさんを裏切るつもりはありませんが、自分の決意表明として、あなたに魂を捧げたい」


ソマックさんまで同意してきた。

男の魂いらねっす。

ソマックさんのランランと輝く真摯な眼差し重いっす。


しかたがないので、ソマックのアッツイ魂ゲットです。


うん、まぁ、確かに大きな金額を動かす事もあるだろうし、今後は、法律的にもギリギリだったり、危険を伴う取引もあるかもしれない、魂に命じる事が出来るというのは、先々の事を考えれば、非常に気持ちが楽になる部分もある。お約束の定型命令も出しておく。


{ソマックに命ずる。今後、モートに害を及ぼすような行為や企みを禁ずる}



被害総額の半額を、商人ギルドから弁済してもらい、商人ギルドを出ると、ソマックが家族に会ってくれと言い出した。

面倒くさい。

でも、初めての部下の家族だし、今後いろいろ関わりが出るかもしれない、部下の家族を知っておくのは、ソマックを扱う上でも重要な事だと思い、会うことにした。

町の反対側にソマックの家はあると言うことで、二人で歩いて行く事にした。

歩きながらソマックがいろいろと話し始めた。

ソマックとは、長い付き合いになるが、こうやってソマックの話をゆっくり聞くのは初めての事だ。



まず、ソマックは、妻との出会いから話が始まった。

エルフの村の美少女と結婚。

高嶺の花。

よく出来た妻。

支える妻。

要約すると、エーテリスたんhshsって話を、ギルドからソマックの家に着くまで、ずっと話された。

もう、契約解消して、奴隷に落として、家族バラバラにしてしまえって感情を抑えるのに精一杯だった。

美人な嫁さん手篭めにしたろか!

リアル充実爆発して塵となれ!


ソマックの家に着く。

質素だが綺麗に片付いた家だった。

ソマックが呼ぶと奥から使用人の女が出てきた。


「妻のエーテリスです」


え?

エルフ?

エルフだよね?

オークじゃないよね?

うん。ソマック、なんだ、お前の全てをオレは許すよ。


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