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商人グレました  作者: モロモロ
第一章 決意までの日々
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決意

今、オレは商人ギルドへ向かっている。

そして、その道すがら、この7日間を振り返る。

この激動の一週間は、オレの今までの人生の中で一番の濃度だった。


フローネたんに執着していた自分が、遠い昔の存在に思える。

あれだけ思っていた気持ちが、今はすっかり消え失せている。

振り返れば、女に振られたぐらいで何をあんなに興奮していたのかとも思う。

これが、経験した者と、経験せざる者の違いなのか。

メルロの事を思い出すと、熱いものが込み上げてくる。


確かにフローネは美しい女だった。

10年という長い月日を、彼女を支えに生きてこれた事には感謝する。

理性ではそう思っても、イケメンエルフと人の店でイチャイチャしていた光景を思い出すと、今でも怒りが沸々と沸き起こってくるのは何故だろう。

フローネたんはオレのモノだと勝手に思っていたんだろう。

今でも、そう思ってしまう部分はある。

あのイケメンエルフに組みし抱かれてると思うと、先ほどの冷静な考えが糞食らえと思うほどの嫉妬がムクムクと頭をもたげる。


そして、あの時は、本当に出来心というのだろう、どうにでもなれと思っていたし、転生してもモテない冴えないツマラナイ人生に嫌気が差していた。

バーでラグから窃盗した夜は、罪悪感と緊張と、バレてしまったらという恐怖と共に、妙な達成感を味わった夜だった。


翌日からは、どこか、憑き物が取れたように、スッキリとした朝だった。窃盗というリスクを考えると、普通に生きるのが、安定して一番という、いつもの考えに戻り、いつもの開店準備、いつもの店先の掃除を始めたのだった。

そこに登場したのが、ラグ率いる美女軍団だった。

どうやら、前日窃盗した金が原因で、トラブルを抱えてしまっていたので、魂の契約書を持ちだして、ラグ一家と兄貴分のガルローズまで、その契約書に血判させた。

全員が、オレより優れ、オレよりも輝く人生を送っている人々だった。

彼らの魂を握ることが出来るかもしれないという衝動が、町に引き篭もりがちだったオレを突き動かした。

初めて町を出て戦闘をした、そして、あのメルロとドラゴンの戦いを目撃した。

どうやら、ドラゴンは自分の子を守るために戦っているようだった。

オレは、自分にだったら、ドラゴンを守るなんて、理由付けして、再度窃盗を働いた。悪事とはまさに麻薬のような中毒性だった。辞めようと思う心を食い破って、目の前の餌に食いついてしまう。

メルロから窃盗した金額は1000万ドランだった。

その金額の大きさに、自分の中にもう一人の自分が生まれた。今まで真面目に働いてきた自分を罵る自分がいた。

せっかく得た力を使え。

大丈夫だバレない。

上手くやれ。

この世界を良く理解してない状態で、慢心する事への恐怖心と、力を使って女、金、名声、名誉、権力、すべてを手に入れてしまえという感情とがせめぎ合った。

せめぎ合った状態での、ラグ一家の監視と称した観察。

その初日、ラムラとアイラの美しさ、戦士としての可憐さ、そして、そんな二人の信頼を勝ち取っている、ラグに嫉妬した。

かならず、この一家の魂を手中に収めたいと思った。

俺には、商人として、財力を蓄える事しか、ラグにかなう部分は無いだろう。

前日の山から、声が聞こえたので、再度窃盗のチャンス到来かと、また悪の心が背中を押す。

山に行くと、驚くべきことに、まだ戦闘は続いていた。

俺は、両者疲労困憊のなか、ドラゴンと話す事が出来た。

俺の心を2つの思いが去来する。一つは、ドラゴンという生命体への好奇心、もう一つは、更なる力へのチャンスがあるかと思った。

話すうちに、疲弊した両者に恩を売りつける算段を整え実行。

口から出任せだったが、思いの外上手くいった。


強者2人に恩を売りつけるのは、上手くいくかどうかも分からないラグ一家の魂を勝ち取る作戦が失敗しても、己の欲望を満たす次の一手になるかもしれないという気持ちがあったからだ。


もう、この頃には、まだ知らぬ部分の多いこの世界への未知への恐怖よりも、金や権力や女を手に入れようとする自分の欲望が、心を満たしていた。


ラグ一家。

ドラゴンの力。

メルロというドラゴンを追い込む力。


どれか一つでも手に入れること、懐柔させる事が出来れば、金や権力や女への願望に近づくと思っていた。



メルロと寝た。初めての経験が、俺の欲望を洗浄した。

メルロの心を得たことによって、もう全て自分の人生が収束した気持ちになった。

共に歩み始める前に、彼女の全てを知ってからと思い、いろいろと調べていると、次から次に、想像もしていなかった事実が突きつけられた、バイオトランスの事、ゴフトスとルシュランドの事、学校の転校生の事、俺の幸せへの道は果てしなく遠いようだ。


そんな中、オデロンとキャンに出会った。

2人とラングロング達と共に過ごす時間は緩やかで楽しいものだった。

商人という仮面も、善人という仮面も、悪人という仮面も、すべてを外して接することが出来た。

自分を飾らずに接することが出来たのが、モンスター達だった。

彼らの絶大な力。彼らの穏やかな心。すべての会話が、俺と彼らの間だけで守られる絶対秘密の会話になった。

誰に僻まれる事も、詮索される事もない、正直になれる関係。


彼らの生活を守りたいと思う心が芽生えた。


誰しも、心の中に2人以上の人間がいると思う。


今、オレの中には、メルロと共に平和な世を歩みたいと思うオレ。


ラグ一家を自分のモノにし、欲望を叩きつけ、好き勝手に楽しみ、かつ彼らから好かれたいと思うオレ。


キャンやオデロン達を守りたいと思うオレ。


そんな数人のオレの中の心の葛藤が行動するうちに、何故か、反ドルトニア勢力を立ち上げてしまっていた。


そして今、オレは、全ての欲望を叶えたいと思っている。

どれか一つを犠牲にし、どれか一つを勝ち取るのではなく。

オレの思う希望を欲望を、全て自らの手に収める道を歩み始めようと思う。

自分勝手なエゴイズムに溢れるオレの新たな道を。

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