エーテリス
その日から、俺は一切の人との交流を断った。
活発で明るかった少年が、突然引きこもってしまったのも、親友だった少女の突然の死を知っている周囲は、そっとしておいてくれた。
ある日、思い立って、鍛冶場へと向かった。鍛冶場での火花を見ると、ミリアムの事を思い出した。
俺は、その日から、体力の続く限り、朝から晩まで鍛冶場で仕事をした。
ぶっ倒れて、水をかけられ、またぶっ倒れてを繰り返した。
ある日、俺の作った品を見たトイロックが、俺に専属の鍛冶師にならんかと声をかけてきた。
俺は、この男が心から憎かった。しかし、それと共に憧れと尊敬の念を持っていた。この男に着いて行こう。そして、外の世界を見て、この男の商売を見て、見聞を広めよう。
トイロックの一団と世界中を飛び回って7年、俺達は、僻地にある森の中の小さな村に滞在していた。
そこにある泉からは良質な魔法石が取れた。
俺は朝から晩まで魔法石で魔法武器や魔法防具を作り続けた。
ある日の早朝。いつも通り、泉に潜って、魔法石を回収しようと、泉に向かうと、そこに天女が舞い降りていた。一糸まとわぬ姿で水浴びをしている天女に俺の視線は釘付けになり、一歩たりともその場から動けなくなった。
後の妻。エーテリスとの出会いだった。
エルフの村に住む少女エーテリスは、正に高嶺の花だった。
俺はトイロックの使用人の赤ら顔のドワーフ。
方や美しいといわれるエルフの村の中でも、その美は抜きん出ているエーテリス。
俺は、エーテリスはエルフという種族ではなく、神話に出てくるハイエルフというエルフ以上の種族なんじゃないかと思った。
種族が同じとは思えぬほどの美しさだ。
俺のどこがどう気に入ったのかは分からないが、その村で俺とエーテリスは結ばれた。
その年、長女、シャリーンが生まれた。ドワーフの赤毛の女の子だ。
エルフの娘と子をなしたことによって、村に残りたい旨をトイロックに話すと、トイロックは心より祝福してくれた。
今まで良く働いてくれたと、退職金まで出してくれた。
その代わり、いつまでも良質の魔法武器や魔法防具を作り続け、送ってくれと話してくれた。安定した収入の道筋までつけてくれたトイロックに感謝した。
その2年後に、長男エドリックが生まれた。エルフの男の子だった。
丁度、その頃、旅先でトイロックの一団が虐殺されたとの一報が舞い込んだ。
俺は、今までいかにトイロックに甘え、支えられて生きてきたのか、居なくなって初めて痛感した。
一気に生活が苦しくなった。
安定して売れていた、魔法武器や防具も、人里離れた村に買いに来る商人はほとんどいなかった。
エーテリスと話し合い。俺達は旅に出ることにした。
最初にたどり着いた町で俺は、商人ギルドに登録し、まず、露天を開いて、魔法武器や魔法防具を売った。
まったく売れなかった。高すぎるとの事だった。
トイロックはいったい何処にあんな高価な装備を売っていたのだろうか。
一般的に町の露天で売れるものでは無かった。
採掘は、幼少の頃より行なってきたことだったので、鉱山に入り採掘し、鍛冶場を借り、もっと安い、武器屋防具を作った。
だが、作りながら売ってだと、毎日店を開くことも出来ず、お得意様を作ることも出来なかった。
一家4人を食べさせるほどの収入はなかなか得られなかった。
ギルドには、ギルドに所属する者に「店番」を頼む店主もいた。
自分で作った物を売るより稼ぎは少ないが、リスクも少なく、自分の才覚次第では、大きな収入を得ることも出来た。
数年の間、いろんな店で「店番」をする間に、「店番」をしていても、稼げる店、稼げない店があることが分かってきた。
まず、その店の品の品質だ。その店のオーナーの目利きが良ければ、品質も良く、非常に売りやすい。
そして、利益率だ。「店番」では利益の4割が俺に入ってくるが、いくら品質が良く、売りやすい店でも、薄利多売では、俺も一日中忙しく商品を売りまくって、最終的にこれっぽっちの収益?と首を捻るような事も間々あった。
町を移動し、国を移動し、1年前にこの街リムーレにやってきた。
初めてその店の「店番」をした時に驚愕した。




