結成
エイドリアを含む幹部達を連れて、学校近くの洞窟まで来た。
すでに、洞窟内の広場は生徒たちのアイテムボックス内のアイテムで埋め尽くされている。
血の匂いだけが、換気の悪い洞窟内に充満している。
そのアイテムの山の中に、一人の男が憔悴した様子で倒れている。
糞尿垂れ流し状態だ。
「ヒール」
男に、食料と共に治癒魔法をスクロールでかける。
「私は、ランガーというものだ。何があったかは聞いている。ここで懺悔しいずれ贖罪するということなら、命だけは助けよう。真実を語らない場合は分かっているな?」
「め、命令に逆らうことは出来なかったんだ」
「分かっている。全てを話して楽になれ」
男は、ゆっくりと話し始めた。
転校の実態を。孤児の実態を。ルシュランドの所業を。
途中、エイドリアは泣き始め、ガルローズは「拘束を解け、この男を殺す」と言い始めた。幹部として連れてこられた、ラグとシャルロットは呆然としている、つい先日まで共に学び、教え、育んできた子供たちが、今は散らばったアイテムとしてしか存在してない事実。そのアイテムの中に、各々の知っている子の思い出の品でも見つけたのだろう。前のめりに突っ伏して肩を震わせている。
どうやら、黒豹の部隊の6人のみが、王子の密命を受けて、長い間、この方面の誘拐と処分の闇の仕事を一手に引き受けていたらしい。
確かに、この手の仕事は少数精鋭で情報漏えいを防ぐのが一番重要だろう。
全員の前に、進み出てメルロが語り始めた。
「お前たちは、知っているだろう。私がお前たちと同じ学校出身者であることを。裏切り者と呼ばれながらも、ルシュランドに敵対する勢力に加わったのも、すべてはこの事実が原因だ。どうだ?現実を突き付けられてツライか?」
「知っていたのか?」
エイドリアが喉から唸り声のような声で問いかける。
「ああ、何度もこの事実を証明しようともした、誰も口先だけでは信じてくれなかったからな。だが、ここには強力な魔物がいた。お前たちが先刻相手をした、ダークサイクロプスだ。お前たちが束になって攻撃しても、傷ひとつ付けられなかっただろう。あいつが常に証拠を処分してしまっていたからな。証明出来なかった。今回は、ここにいるランガーがサイクロプスを手懐け、証拠を確保してくれた」
「手懐ける?あの凶悪な化物をか?どうやって?」
ガルローズが不審な目で俺を見てくる。
「そんな重大な事、言えるわけなかろう。それよりも、エイドリア、お前はどうするつもりだ。まだルシュランドに忠誠を尽くすのか?」
メルロがエイドリアに問いかける。
目には哀れみと優しさが現れている。
「私は、ずっとルシュランド様に感謝してきた。あの学校を運営する資金や、孤児だった私達がこうやって仕事を得て、生活できているのも全てあの方のお陰だと思ってきた。それが、、、子供たちが、、、私の友たちも皆、転校していったものは全部なのか?ずっと、この長い年月の間、、、」
「ああ、たぶんな、私の友も転校した者は、皆処分されたのだろう」
「こんな事、許されるわけない!」
シャルロットが地面を拳で叩きつける。
「ああ、そうだね、許されるわけない。だけど、だからって、私はあんたのやり方にも賛成出来ないよ。メルロ。あたしは、知ってるんだ。バイオトランスの事をね。今回の戦争だって、あの私達の強奪事件がキッカケだろ?私達は、ゴフトスの企みを知ってしまった。ルシュランドも許せないが、だからと言って、ゴフトスのやってる事だって許されることじゃないよ」
「それは分かってる」
「分かってるならアンタすぐにミネローゼの流通を止めなよっ!国がガタガタになっちまうよ!」
「脅されてたんだ・・・しかたなかったんだ・・・・」
「それは、その呪印の事だね。知ってるよ、私もあんたの事はかなり調べたからね。可哀想だとは思うけど、あんた一人の命のために、数千人、数万人の命を犠牲には出来ない」
メルロは膝を折り、くずれ落ちる。
エイドリアは、そんなメルロを悲しみを湛えた目で見つめる。
「腐ってる、腐ってやがる、、、、」
ラグが涙を流しながら吐き捨てる。
「ルシュランドに付いても、ドフトスについても、行う所業はすべて悪事になるとは、国とはそういうものなのか・・・」
ガルローズが牙をむき出しにし、拳を握り締める。
悲劇だな。
ここにいるのは全員操り人形たちだ。
国の上が腐ってくるのは、仕方のない事なのかもしれない。
小さな悪事はあったにせよ、それによって、強力な軍隊が生み出される事も分かる。
発覚しても、こんな田舎の小さな反乱の芽など、すぐに揉み消せるだろう。
そして、インターネットなど無い、この世界での噂話など、誰が信じようか。
こんな形の、2人の王子の代理の権力争いは各地で起こっているのだろうか?
両方の陣営が、それぞれの想いを胸に。
ある者は、弱みを握られ、ある者は、その正義を信じて。
「お前たちに国を相手に戦う気概はあるのか?あるなら手を貸すぞ」
オレは全員に問う。
しばしの沈黙。
「ランガー。私は、国を相手にしようなんて大それた事は思っちゃいない。だけど、この現状は変えていきたい。変えなきゃいけないと思っている」
メルロが力強くオレに決意表明する。
「アタシも同じ気持ちさ。こんな悲しい事を、これからも繰り返すなんて、まっぴらゴメンだよ」
エイドリアがオレを見つめる。
「分かった。では、この戦いは引き分けだったことにして、明日からは、今までと同じように日常を送ってくれ」
「ランガーおまえっ!」
メルロが気色ばむ。
「国から見たら、お前たちは今までどおり同じような敵対関係を維持してるように過ごして欲しい。そうしながら、メルロはエイドリアと綿密に連絡をとって欲しい。追って詳細は話すが、まずは、ミネローゼへのバイオトランスの配合量を徐々に減らせ。仕入れる量は変えずにな。むしろ、仕入れの量は徐々に増やしていけ、まるで、バイオトランスが蔓延し、ゴフトスの兵力が日増しに増えていってると錯覚するようにな」
「だが、資金が枯渇するぞ!」
「配分量を減らしながら、最終的にバイオトランスが含まれてないミネローゼを売っていけば良い。バイオトランスは、オレの指示する人物に横流しするんだ、その者が資金に変えてくれるだろう。そして、学校も今までどおり、運営していけ、いずれ、黒豹部隊の死が発覚するだろうが、かなり先の話だろう、もし新たな特殊部隊が配属される事になったら、配属され次第、オレに連絡をくれ」
「わかったわ」
「それじゃ、メルロも、エイドリアも部下に詳細を伝えてくれ。エイドリアは、必要と判断したら、この洞窟に部下たちを連れてきてやってくれ、惨劇を繰り返さぬためにもな。今ここに反ドルトニア勢力を秘密結成しよう」
「分かったわ。いろいろな事があったけど、メルロよろしく頼むわね」
「こちらこそ、すまなかった。よろしく頼む」
ガッチリと2人の女傑が握手をする。
洞窟を出ると、外は早朝のもやが立ち込めていた。
緑の匂いがする、空気が清々しく胸に染みとおった。




