実食
オデロンを見ると、ラングロングが一瞬ギョッとした風に見えたが、流石にすぐに落ち着く。オデロン全長10m
「そいつが用心棒か」
「そうだ、オデロンっていう、ダークサイクロプスだ。魚と引き換えに、この洞窟への侵入者を防いでくれる。魔物なんかも防いでくれるぞ」
「ほう。それはありがたい」
「まず、オデロンに魚を食べさせてみる」
「分かった。では、観察させてもらおう」
オデロンは、ラングロングの巨大さにビックリしている。
参考までにいうと、オレロン全長10m。
ラングロング全長25mだ。
どちらもメガトン級だな。オレなんて紙防御だから、どちらにでも軽くアタックされたら即死だろうな。
これだけデカイと、死んで当然と思うからなのか、言葉が通じるからなのか、二人に対してあまり恐怖は感じない。
オデロンに近づくとラングロングを紹介する。
「オデロン。あれは、エンシェントドラゴンのラングロングだ。それと後ろにいるのが、その子供のカイエントだ。二人共、狩りの名人でな。お前のために毎日美味い魚を捕ってきてくれるそうだ」
「魚?美味いのか?」
「ああ、まずはこれを食ってみろ」
先ほどラングロングが捕ってきた中でも一番大きな4mもあるマグロのような魚を指す。
「これ全部食っていいのか?」
「ああ、食べられるならな」
オデロンは、両手でデカイ魚を抱え上げると、大きな口で喰い付いた。
モキュッモキュッモキュッモキュッ
「う、うめぇぇ!モートこれうめぇぞ!すげぇ!」
「そうかそうか」
「骨も柔らかくって、一口ずつ味も微妙に違って、こんな美味いもの食ったことねぇぞ!」
「うんうん」
「こんなに肉が多くて、美味くて、暴れなくて、歯に引っかかるものもねぇし、最高なもん今日から毎日食えるのか?」
「ああ、そうだぞ」
「ラングロング、友達だ」
「そうだ、友達だ」
「カイエントも友達だ」
「ああ、そうだ」
「モート!ありがとうな!」
「オデロン。貰ってばっかりじゃダメだぞ。お前にも仕事がある」
「しごと?」
「そうだ、この洞窟の出口のところにある、洞窟の広間で、ラングロングやカイエントに戦いを挑みに来る、人間や魔物達を倒せ、そして食え」
「魚以外も食えるのか?」
「ああ、だが、勝手に広間から移動はするなよ」
「オデ、今までもずっとあの洞窟から動かなかった。今度は洞窟変わっただけ」
「そうだ。そういうことだ。出来るな?」
「オデ、やる。ラングロング友達だから」
「よし。じゃぁ。残りの魚も食っていいぞ」
「オデ。幸せだ」
オデロンは連れてきて良かったかもしれない。
古代龍とダークサイクロプスが住み着いた洞窟なんて、誰も近寄ってこないだろうから、オデロンの仕事なんて無いだろうけどな。
「ラングロング。オデロンは凄く喜んでるよ。明日からもオデロンとキャンに魚よろしくな」
「ああ、私もあんな奴が洞窟の中で守ってくれてるなら安心だ。気の良さそうな奴だな」
「そうだな。ラングロング、最後にもう一つ頼みがある。ここに人間が来ないようにするための最後の仕事だ」
「なんだ?」
どうやら、ラングロングとオデロンでは会話は出来ないらしい、魔族同士でも、種族が違えば会話が出来ないとか、魔族交流便利すぎだろ。
ラングロングに頼み事をして、オデロンにも頼み事をする。
打ち合わせは終わった。
最後に、キャンとカイエントの所に近づく。
カイエントはキャンの事をペロペロと舐めている。
キャンもまんざらでもない。
「どうだ?」
「ちょっと怖いけど、可愛いです」
キャンは動物好きなようでなによりだ。
「カイエントすまんがオレは用事がある。また来るから、その時はよろしくな」
「モートパパ行っちゃうの?」
「また、来る。お母さんの言うことよく聞くんだぞ、あっちのオデロンのおじさんとも仲良くな。キャンママの事、守ってやれよ」
「分かった。モートパパも早く帰ってきてね」
「ああ」
カイエントむちゃ可愛いじゃねぇかよ!
素直でいい子だわ。
キャンとカイエントには、2m程の魚を引きずって持ってきてやった。
レイピアで3枚に下ろして、一枚をカイエントに。もう一枚をキャンに渡す。
カイエントは嬉しそうに頬張る。
「モートパパ。美味しい!」
「捕ってきたのは、お母さんだからな、お母さんにもお礼を言っておきなさい」
「お母さん!美味しかったよ!」
大声でカイエントが咆哮する。
ラングロングも咆哮で返す。
うん、ドラゴン同士の会話はうるさいな。
キャンは、魚の切り身を手に立ち尽くしている。
「どうした?」
「えっと、この魚、生だけど、、、」
「マグロっぽいし生のほうが美味いだろ」
「生のまま食べるの?」
どうやら、この世界には刺身って食文化は無いらしい。
それともアクアニアとかに行けばあるのか?
仕方がない、野戦料理になるが、、、
「ファイアーウォール」
スクロールから、ファイアーウォールを出す。
レイピアの先に切り身を刺して、炙る。
適度に回しながら、焦げないように、、、、
いい匂いがしてきた。オレまで腹が減ってくる。
カイエントも、オデロンも寄ってきた。
「モートパパいい匂いするね」
「オデも、そうやって食いたい」
どうやら、魔物に余計な食文化を伝承しちまったみたいだな。
「おい、キャン。お前、ファイアーウォールは詠唱出来るのか?」
「えっと、出来るけど、秘薬が・・」
「秘薬ならある」
アイテムボックスから、ごっそりと秘薬を取り出してキャンに渡す。
「こんなにいっぱい???」
「ああ、先行投資だ受け取っとけ、いつかオレの為に魔法を使ってもらうぞ」
「ありがとうございます。もちろん、ルークさんの為に、魔法いっぱい修行しますね!」
ルークも偽名だし、秘薬も盗品だからいくらでも使ってくれ。
「それとお前、剣も練習しとけ、これを使え」
黒豹の獣人が使っていた剣を渡す。銘品だろう。
両手剣 青光雷断刀 雷属性 +20 敏捷 +15 攻撃力 72
「これは・・・・」
「ああ、お前の仲間の血を吸った剣だ。お前の業を背負って戦え」
「分かりました・・・」
「じゃぁ、まずは試し切りだ、残った魚を全部、さっきオレがやってみせたように3枚に下ろせ」
「へ?魚ですか?」
「そうだ、大事な仕事だ。オデロンもカイエントも待っている」
「はい」
切れ味バツグンなんだろう、オレよりテキパキと魚を下ろしていく。
「ファイアーウォールで炙れ」
「はいっ」
名刀に、魚の切り身をぶっ刺して、炙る。
名刀台無しだな
でも名刀だから大丈夫。
雷属性で鮮度も保たれるような気もする。
ラングロングも気になるようだ。
少しだけ、あとで分けてやろう。
実食
「オデ、天国に来ただか?こんなウメェもん食っちまったら、もう人間なんか不味くて食えねぇだよ」
「キャンママ凄い!こんなに美味しくなるなんて、噛んだ瞬間に甘みが口の中に広がって、ジュワッとジューシーな汁が溢れて最高だよ!」
「ふむ。魚にこんな食べ方があったとはな、流石に私が食うような量は焼けないだろうし、私も面倒だからな、だが、たまには一匹焼いてほしいものだな、非常に美味だ」
「キャン。お前の初料理は好評のようだぞ」
「ほんと?」
「ああ、みんな凄く喜んでる。明日からは、魚の調理もお前の仕事になりそうだな」
「はいっ」
「キャン、ちょっと剣を貸せ」
「え?は、はい」
剣を受け取る。
「おい、オデロン」
「なんだ?オデもう大満足だ」
「そうか、ちょっと、一回お前に切りかかっていいか?」
「あ?その剣でか?そんな小さな剣、何度切りかかってもいいぞ」
「よし!」
渾身の力を込めて、オデロンの足の肉を削ぐように切り込む。
カァン!
角度が浅いのか、跳ね返された。
今度は、足を真上から切り下ろす。
ガァン!
駄目だ。ぜんぜん通らない。
「なんだ?もう終わりか?」
「オデロン、ちょっとは痛いのか?」
「オデ、今の全然いたくない」
「そうか、分かった。明日から、キャンは魚を焼いてくれるだろうけど、時間あるときに、ちょっとこの剣でお前をキャンが切ったり叩いたりしても怒らないでくれ。魚をより美味しく調理する練習をしたいらしい」
「魚もっと美味しく。分かった。オデ、キャンに切られる」
「よし。よろしくな」
キャンの所に行くと、ビックリした表情でオレを見ている。
「ルークさん大丈夫ですか?」
「なにが?」
「だって、攻撃してたし、一瞬反撃されてルークさん死んじゃうかもって思いました」
「明日からは、お前がオデロンに攻撃するんだぞ」
「へ?」
「大丈夫、魚を切って焼いて、オデロンに食わせてれば、オデロンがお前を襲うことはない」
「・・・・怖すぎです」
「だろうな。とりあえず、明日から一人で叩くのはキツイだろうから、今からオレがいるうちに一回やってみろ」
「え、あ、、、は、はい」
おっかなびっくりオデロンのところに向かうキャン。
目をつぶって、オレがやったように、オデロンに刀を振り下ろす。
跳ね返る。
驚いた表情になり、もう一度振り下ろす。
跳ね返る。
今度は、目つきが変わって、右に左にメッチャメチャに斬りかかる。
オデロンには傷ひとつつかない。
汗だくになってオレのところに帰ってきた。
「全然、刃がたちません」
「だろうな」
「明日からこうやって練習しろと?」
「良く分かったな。そういうことだ。じゃぁ、後は頼んだぞ」
オデロンとラングロングに、再度打ち合わせの件を確認して洞窟を後にする。




