商魂
リムーレの街中は活気づいていた。
武装した兵があちらこちらを走りまわっている。
オレの店に近づくと、店の前が大混雑していた。
「はいはい。期間限定セール中だよ!良品をお求めやすくモート商店にどうぞ!」
人ごみの中からソマックの元気な声が聴こえてきた。
店の表口からは入れなかったので、裏口から入っていく。
裏口から入っていくとソマックがすぐに気付く。
「いらっしゃい。そっちは裏口ですよ。表で並んで下さいね」
「モートの使いとしてきた、ルークです。先方で仕入れた商品を届けるようにと言われまして。こちらが在庫リストです。忙しいところ申し訳ありませんがご確認ください。ギルドへの提出用のリストも割印を押して作成してあります。提出もよろしくとの事でした」
「おお。商品が品薄になっていたところだったんだ。助かるよ」
「それと、これは、仕入れ資金ということです、買えるだけの回復剤各種を他の商店や業者から買ってくれとのことでした」
「500万ドラン?こんな大金を私に任せてしまって大丈夫なのか?」
「モートさんが言うには、近いうちに大きな争いが起きます、回復剤の値が釣り上がる前に買い占めろとのことです。買い占めた後は分かっていますね?」
「高値で売りぬけと?」
「そういうことです。500万ドランは数倍になって、返ってくるでしょう。もちろんソマックさんの手数料も跳ね上がります。ところで、期間限定セールというのは?」
「ああ、モートさんの店は良品が揃ってるが、利益も多めに取ってるからな、他店より若干相場が高い。俺はこの利益率なら利益の4割も貰わなくても、3割でもいい稼ぎになる。利益の1割はセール価格ってことで、お客さんに値引きして販売中なんだよ。最近は、月に一回のモートさんの仕入れの時期を狙って、わざわざ俺が店番セールしてるときを狙って買いに来るお客さんもいるってもんだ」
「ほぉ。それは素晴らしい商品が捌けてモートさんも喜ぶしウィンウィンですね」
「ああ、俺の懐もほっこりだ」
「それでは、こちら確認は大丈夫ですか?」
この数日で集めた回復剤やスクロール、足のつかない消耗品は、自分で使うだろう分以外は、すべてソマックに渡した。装備品に関しては鍛冶スキルで手入れをしてから販売するので、渡していない。
メルロの部下たちが、みんな持っていた見たこともないアイテムは、メルロによればバイオトランスを利用した精神高揚剤と鎮痛剤らしい。これは若干の中毒性がやはりあるようだったので、自分の店で売ることはしない。
「確認した。これで品揃えが充実します。モートさんのタイミングの良さに感服だ。さすがあの若さで店を構える商才の持ち主だな。それでモートさんは、どの辺に?」
「王都ドルーアンに向かっているとの事でした。なんでもプロミリアから来てる良い業者を探したいとの事。ソマックさん心当たりはありませんか?」
こういう情報は商人ギルドや、いろんなお店と取引の多いソマックの方が詳しいだろう。それにしても、このソマックなかなかの商売人だ。将来的に大きなライバルになりかねない。潰せる機会があれば、潰しておこうと心に留めた。
「たしか、ランクールというサラマンダーの商人が王都に出入りしていて、プロミリア国内でも王族とも繋がりを持つかなり有力な商人と聞いいるが、なかなかのやり手らしく、新しく取引するのは、かなり良質な商品なり、好条件を提示しなければ難しいと聞く」
「なるほど、今回はモートさんも厳しい商談になりそうですね」
「なにかプロミリア方面との取引を始める予定なのか?」
「少々。ランクールに関しては他に情報は無いんですか?趣向や人柄、家族構成などなんでもいいと思うですが」
「確実な情報ではないけど、ドワーフ族や魚人族などアクアニアの女には目が無いと聞く。プロミリアではドルトニア建国以来、ほとんどアクアニアの人を見ることは無いから珍しいんだろう」
「ソマックさん、非常に参考になる情報ありがとうございます。では、さっそくモートさんへ伝えるようにしましょう」
「モートさんによろしく伝えてくれ」
ソマックの情報量・機転の効いた売買。ルークのような使いの者にまで、モートを誉めそやす、人付き合いの旨さ。
この世界の人間としては、かなり洗練された商人の感性をもっている。
店番としては頼もしい限りだが、ソマックが店を構えるのは遠い将来ではないだろう。
リムーレで店を開くとすると、オレの店にも多大な被害が出る可能性があるな。
大きくなりすぎる前に、刈り取るか抱き込むかしなければと改めて思う。
エイドリアの本部に顔を出して、学校について調べたら、今日の活動は終わりだ。
明後日の夜には、魂の契約書による、返済の期日となる。
ラグたちの所持金も探りを入れなければならない。
やることは沢山あるな充実した日々だとも思える。




