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商人グレました  作者: モロモロ
第一章 決意までの日々
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問答2

 オレは今、ドラゴンの洞窟を進んでいる。

<潜伏>と<隠密>発動でモンスター達はスルーだ。

 最初は、冒険者としてスキル付けなきゃと思って、戦闘したけど、口先だけでなんとかなるかもしれないと思ってる。

修行とか面倒だしな。

ドラゴンの所には、きっとメルロの部下達のアイテムボックス内のアイテムがゴロゴロしてるだろうから、回収出来ればしてみようと思って向かっている。

金の為じゃなく、調査のためだと言い聞かせる。

そうすると後ろめたさは少し消える。

自分で罪を犯して良く分かるのは、自分で自分への、良心の呵責を和らげるための言い訳を、考えるのが上手になっていくって事だな。


ドラゴンとの問答がまたあるかと思うと気が重い。

もう適当に口からでまかせ言って、アイテム回収して退散しよう。



洞窟の奥まで来た。

忘れてたけど、落石に塞がれてて入れません。

終了。

帰ろう。

洞窟の入り口に向かって少し戻ると、ちょっと思いついて再度洞窟の奥に戻る。

洞窟の出口があった、落石で防がれた部分より、更に奥、行き止まりになった部分の先端まで、進む。

ドラゴンのいた方向を向いて、で脳内のタブを確認。「魔族交流」タブが選択できた。

距離だけ近づけば障害物などは関係ない能力みたいだ。

脳内の「魔族交流」タブから「エンシェントドラゴン」を選択。


「偉大なる太古の龍よ」

「おまえか、先日は世話になったな」

「問題ない」

「今日は何のようだ?」

「先日、「二度と人間達が来ないようにも出来るかもしれん」などと言ってしまったが、それはなかなか難しそうだ。その謝罪にきた」

「そうか、最初からそこまでの期待はしておらん、律儀なやつだな」

「・・・・・」

「・・・・・」


しばらくの沈黙。期待した言葉は降って来なかった。

あわよくば、古代龍ってぐらいのヤツだらか、「礼として、なにか褒美を」

的な展開を期待したが、どうやら、そこまでの恩は売ってないのか、もしくは、恩を受けたら何かを返すような文化はないのかもしれないな。


「難しいというだけで、出来ないとは言ってない」

「来ればまた、焼きつくすだけのことよ」

「50人そこそこの人間たちにかなり苦戦してたようじゃないか?」

「魔力も、体力もすべて使いきってしまったからな、だが、人間達ごときに遅れを取る事はない」

「たしかに50や100ならなんとかなるかもしれない。だが、千や万が押し寄せてくるとしてもその言葉が言えるのか?」

「ここにそこまでの価値のあるものは無い」

「価値うんぬんは人間達が決めること、人間達の強欲を甘く見てはいないか?先日の人間たちも最後の1兵まで戦い抜くように感じられなかったか?命を惜しんでいる素振りのない兵はどうだった?」

「命をかける程の強欲なのかは分からんが、子を守る親の力ほどはあるまい」

「確かに、この狭い入り口から、少しづつ攻めてこられる分には、なんとかなるかもしれないが、人間達には爆薬も、卑怯な手口もたくさんの知恵もある。無理にとは言わないが、協力することも出来るが?」

「お前は何を欲する?」

「まずは、情報を欲する」

「何の情報だ?」

「ドラゴン達のことについて教えてほしい、その先に、何かお前たちの平和な未来が見えてくるかもしれん」

「他には?」

「先日、お前を倒そうとしていた者達の情報だ」

「それを集めてどうする?」

「何か弱みが握れるかもしれん、その先に、敵の組織を打ち破る道もあるかもしれん」

「他には?」

「逆に俺には、お前が俺に与えられるものが他にあるように思えんが?」

「協力に対して、見返りが情報のみというのは無いだろう。なにか企みがあるのか?」


企みはありません。とは言えません。

いろいろ話してみて思うのだが、この古代龍というのは、なかなかに頭が良い。やっぱりスライムなどとは違う。

会話が人間レベルで出来る。

あわよくば、もっと恩を売って、なんとかドラゴン関連のビジネスを立ちあげられないかという夢は膨らむ。

最悪、出来なかったら出来なかったで、そこまで期待もされてないようだし、今日は、中に入って、アイテムボックス内のアイテムが出てきてるのを回収して帰ろう。


「とりあえず、中に入れてもらえませんか?先日の落石で中に入れません」

答えたくない質問がきたら、とりあえず話を逸らす。

「情報だけなら、中に入らなくとも伝えられるが?」

「聞くだけではなく、五感で情報を収集したいのです」

「なら、入れ」


ドガーン ドガーン


突然の轟音と、爆発と共に、洞窟内が真っ白になる。

それも、数分で外部との気圧差なのか、凄い風と共に、煙が洞窟の外に吸い出される。

俺は、洞窟の奥の先端にいたのが幸いして助かったが、出口周辺は粉々になった岩が散乱していて、近くにいたら即死だったろうなと思える。

前言撤回。ドラゴンたいして頭良くないわ。

オレが死んじゃうとか思わなかったのかな?

それとも、人間と思ってないとか?


洞窟の外に出て行く。

ドラゴンは、ゆったりと腰を下ろしている。

改めて見てもデカイ。6階か7階の位置に頭がある。身体の大きさは2階建ての建売住宅2・3軒分ぐらいあるだろうな。そこにまた、太く逞しい長い尻尾が付いている。これと戦おうとか、確かに麻薬でプッツンしてなきゃ無理だよな。


オレは変装装備も取って、モートの姿でドラゴンの前に現れる。


「妖かしの類ではなく、人間だったか。それとも、魔族か?」

「ただの人間ですよ。はじめましてモートと申します。」

「ただの人間は魔物と話など出来ん」


挨拶したのに、挨拶しかえさんかい!

お前に名前は無いのか!?


「話というか、テレパシーっていうんですかねこれは?」


魔族交流と言っても、実際に口に出して話しているわけではなく、脳内トークという感じだ。

これは人間同士で使えれば戦闘中でもしっかり意思疎通できて、かなり便利そうだ。


「テレパシーというのか」

「多分、あってると思います」

「で、まず、ドラゴンの情報だったか?」

「はい。知る範囲、喋れる範囲でかまいませんので、質問に答えていただけますか?」

「言える範囲でだな。よかろう」

「まず、ドラゴンの種族はどのくらいいますか?」

「それは知らん、儂の知る限りだと、火山に住むファイアドラゴン、雪国に住むブリザードドラゴン、雷雲と共に移動するサンダードラゴン、闇に潜む黒竜、海底の海竜、高山地帯の岩鉄龍、沼地の亀龍、大森林に住むという癒龍ぐらいかのぉ。聞いただけで会ったことの無い竜も含まれているがな。他のもいるかもしれん」

「ずいぶんとドラゴンの種類もいるんですね。個体数も多いのですか?」

「基本的に海竜が一番個体数は多いかもしれん。大きさは大きくないが、海には餌が豊富にあるからな。大きさの大きいもの程、個体数は少ないかもしれん」

「あなたがた古代龍の大きさはそれら竜と比べると大きいのですか?」

「儂より大きな竜は見たことがないな」

「なるほど。では、産卵は小さな竜ほど頻繁にして、あなたのように大きな竜は少ないってことですね」

「そういう事になるな。だが、竜の寿命も大きさが大きいほど延びるので、一匹が産む数は変わらんかもしれんがな」

「通常はどのくらいの数を産むのですか?」

「一匹の竜が平均3匹じゃな」

「あなたは、今回が初めての出産だったんでしょうか?」

「いや、3回目じゃな」

「では、もう産む事は無いのですが?」

「わからん、寿命しだいじゃ」

「卵の父親はいるのでしょうか?」

「正確には、いたじゃな。儂が食った」


うお、カマキリシステムか。


「竜の産卵は、魔力体力とかなり消耗するからな。ヤツのお陰で敵を撃退する力が戻っていて助かったわい」


産後の体力回復に是非一食!これで元気ハツラツ。夫をパックリだ。

本当の意味でパックリだ。嬉しいパックリじゃない。

会うことは出来ないが、本望だったことだろう、お前の栄養が妻と卵を守ったようだぞ。

完全に文化の違いだな。悲しむ様子はない。当たり前の事なんだろう。


「なるほど、魔力や体力はすぐに回復しないのですね。全回復にはどのぐらいかかるのでしょうか?」

「それは言えん」

「あの、防衛上の問題でしょうか?出来れば、今後の対策を練る上でも、全回復と言わないまでも、飛べるようになるのは、どのくらい時間がかかるのでしょうか?」

「今でも飛べないことはないぞ。流石に隣国までとなると、まだ飛ばないがな。1ヶ月もすれば、ある程度何処にでも飛んでいけるじゃろう」

「あの、もうちょっと近づいて見ても良いですか?」

「かまわん。お前一人なら、何をされても儂に害は及ぼせんからな」

「それでは」


ドラゴンに近づいていく。

足元をみると、あちこちに、宝箱や、巾着袋、装備品などがゴロゴロしている。宝の山じゃ!


近づいて見ると、ドラゴンの身体の傷は、ほとんど完治していた。本当に凄い治癒能力だな。


「傷がほとんど治っていますね」

「お前のくれた回復剤のおかげだろうな」

「あれは、人間の回復剤です、あの量では、身体の大きなあなたには、ほとんど気休め程度にしか回復しなかったでしょう」

「まぁ、あれしきの傷なら、普通なら数日で治癒できよう」


話しながらドラゴンの真下まで移動できた。

ドラゴンの頭は道から6階ビルの屋上を見上げる感じだ。

腕が4階ぐらいの高さから出てきてる。

前衛は、この距離で戦うんだもんな。

「死んじゃうな」って思えてきた。

戦ってるわけじゃないのに、この威圧感。

前衛ぱねぇよ。

というか、ミロネーゼ怖すぎ。

普通の精神状態でこいつとは戦えないわ。

確信する。

もう余計な対策しなくても、人間達攻めてこないわ多分。


ん?

足もとがキラキラ光ってる。それも広範囲にあちこちだ。

ちょっと拾ってみる。

紫色のガラスの不恰好なお皿みたいなものがキラキラと手の中で輝いている。

素直に綺麗だ。

鱗だな。これは古代龍の鱗だ。


でも、古代龍の身体を見上げると、傷の跡はうっすらあるが、ほとんど完治している。

鱗も欠損している部分は殆ど無い。


「足元に鱗らしきものが大量に落ちていますが、これはいただいてもよろしいのでしょうか?」

「なんだそれをどうする?」

「これは、人間にとっては、あなた程は強くはなれませんが、強力な身を守る鎧となってくれる可能性のある素材になります。」

「なるほど、人間達は敵の力も利用するか。逞しいな」

「私も、今回の事がバレれば窮地に追い込まれます、その時に身を守るモノがあれば、より一層、この仕事に励めるのですが・・・」

「鱗などいくら持っていってもかまわん。次から次えと生えてくるからな。半年もすれば勝手に抜け落ちて、新しい鱗に生え変わるわ」

「ドラゴンはみなそうなのですか?」

「ああ、特殊なドラゴンはいるかもしれんが、基本的には鱗は生え変わる」

「その割には、あまりにも人間の中で希少な素材です。ドラゴンは生え変わる前の抜け落ちた鱗はどうしているのでしょうか?」

「あるものは食べ、あるものは焼き、とにかく、みずから処分する」

「それはなぜですか?」

「マナーだ。汚したままには出来んからな」

「分かりました。とりあえず、今日はここまでで十分です」

「そうなのか?話し相手もおらんし、卵がある間はワシもすることもない。危害を加えるつもりも無いようだし、モートいつでもまた来い」

「ありがとうございます」

「ワシは古代龍のラングロングと申す。よろしくな」


挨拶最後かい!


「それでは、また。私は敵の残した情報も集めながら帰ります」


帰り際、あっちこっちと動きまわり、宝の山を回収しまくる。

無口で偏屈だと思ってた古代龍だったが、なかなか喋りやすくちょっと好きになれそうだ。人間と話すよりしがらみが無くていいな。


「掃除までしてもらって悪いな」

後ろから声が掛かる。

「いえ、貴重な情報ですので。あの、自分が洞窟へ入ったら、しばらくしてからがけ崩れ起こしておいて下さいね。爆風に巻き込まれて死ぬとか嫌なので」

「分かった」


ラングロングは、メスドラゴンなのに、話し方は爺さんみたいだな。

まぁ、ドラゴンに性別はあんまり関係ないのかもな。

メスの方が強いみたいだし、人間の考える男女とは話し方も逆になるものなのかもしれない。

思いの外、ドラゴンの情報がいろいろ分かった。

大満足だ。

お宝も大量に手に入った。

大満足だ。


現金。スクロール

このへんは、すぐに使えて足もつかない。窃盗するならNO1だな。


装備品。武器。防具。アクセサリー

そのまま転売しても、よほど高度な補助効果でも無い限り、中古品では二束三文だな。

<鍛冶>で加工して、補修して、新品同様で店に並べるのが一番だな。

そうすれば手間はかかるけど、足がつかない。


その他

回復剤だったり、いろんなアイテムが手に入る。

今回は、商人のオレでも見たこともないアイテムがあった。

しかも、このパーティでは全員が常備しているようだ。


これは、もう少し調べてみたいな。


どうも、本当に一線を越えてからは、自分の欲望にブレーキが効かなくなりつつある。

欲望と一緒に、好奇心も旺盛になってきてる。

そういうものなのだろう。


洞窟の出口から入り、しばらく進むが、轟音は聞こえない。

落石をするっていうのを忘れちゃったのかな?

ほかの人に見つかるとまた、ややこしくなるだろう。

もう少し様子を見よう。


洞窟の入り口から、外に出た。夕方だ。

まだ、轟音はしない。

仕方がないので、もう一度話してこようと思う。

あとで面倒くさくなりそうな芽を今防げるなら、潰しておこう。

ラングロングのところに引き返そう。

そう思った時に


ドコーン ドコーン


いや、遅せぇよ!

心配したわ。


さて、このあとに、店に帰るって事になるだろうけど、洞窟はちょうど隣町との真ん中だからな。


昼間のエイドリアの言葉が頭をよぎる。

そして、昨夜のメルロとの事も。

良し、隣町だな。


さっき回収した見たことのないアイテムの調査もある。

エイドリアの組織の事も聞けるかもしれない。

オレはメルロとアレして、死ななかった。今回も大丈夫だろう。

うん。理屈いろいろコネたけど、やりたいだけだ。

だって、昨日卒業したばっかりで、もうお預けとか耐えられんでしょ。

しかも、あっちだってウエルカムな感じだったし。

メシだけ食わなきゃいいんだよ。

水筒持参ってのは怪しすぎだから、酒でも持って行こう。それを飲めばいい。つまみも買っていって、それを食えばいい。

そして、明日は一日あっちで過ごせたら、過ごしたいと思ってる。

というか、昨日の今日でどうなのって思うけど、エイドリアの話は怖かったけど、ちょっと興奮した。

オレの力が、ま・ぞ・く・こ・う・りゅ・う様の素晴らしき力が、まさかこんな展開を生んでくれたとは感謝だよ本当に。


そして、次なる目標というか、中2病的な考えかもしれないが、耐久レース的な事をしたい。

ガチンコ勝負だ。

オレが勝つかメルロが勝つか。

どちらが音を上げるか。

経験の違いはあるだろうが負ける気もない。

何度でも立ち上がるさ不屈の闘志でな。

男なら一度は考えるだろう、オレの限界はどこなのか?

そして、挑戦するだろう、他人の作った記録や自分の作った記録の向こうに、新記録を打ち立てる事を!

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