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商人グレました  作者: モロモロ
第一章 決意までの日々
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食客

飛び込んできた男は青い顔をしている。


メルロは早朝に眠りを妨げられたのに、ムッとした様子もなく問い返した。良くあることなのか?


「どうした?」

「調味料が盗まれました」

「ふむ。で、もう捕まえたのか?」

「それが、届かぬと思った時には、既に証拠もなく」


この世界の「盗んだ」はいくつかのケースがある。他にも方法はあるかもしれないが、オレが知るのは以下の4つ。


1 オレのように<窃盗>スキルでアイテムボックスからそろっと盗む。

2 アイテムボックスに無いモノを自分のアイテムボックスに入れて盗む。

3 相手を殺して、1時間後に肉体消滅後に出てくるアイテムボックス内のアイテムを盗む。

4 相手を脅して、アイテムボックス内の商品を出させる。


実は、1の盗むというのはあまり一般的ではない。

まず、<窃盗>というスキルの上がりにくさ。全面的に世界中で、防犯の為、<窃盗>行為を訓練したりして、鍛える事を禁止されてもいる。


そして、そのスキル能力を引き出すための能力値<器用>が高い人間は、窃盗などと、命の危険があるような事をしなくても、それなりに幸せに生きていける事が多い、食いっぱぐれの少ない技術職を持つ人間が多い。


オレのように「スキル値変更」なんて反則能力がなければ、スキル上げをしているどこかの時点で捕まって殺されることになるかもしれない、捕まるだけですむかもしれないが盗むモノ次第ってところだろう。


国家的に組織的に鍛えている組織が何処かにあるかもしれないが、そんな組織の存在が知れれば、国際問題にも繋がるだろうからな。



そう考えると、調味料ってことは2だろう。

調味料はウチの店でも扱っていたが、そこまで高額なものは少ないはずだが。これいかに。


「では、明日新たな調味料の手配を、護衛もつけてやってみろ」

「御意」


用事が済むと、オレの事は気にもせず男は出て行った。

メルロが男を連れ込むのは日常的な事なのだろうか。

嫉妬の炎がメラメラっと少し燃えてくる。


「すまん。起こしてしまったか?」

「いえ、大丈夫です」

「昨日は凄かったな」


ふおぉぉぉぉぉぉぉぉ

苦節37年。オレの人生に一変の悔いなし!

もう、こんな言葉きけるっていうのは、想像もしてなかったからな!

オレ!いい仕事出来たみたいです!ありがとう!オレ!

オレの蓄積したエナジーに乾杯!


「経験浅き自分には、まだまだ修行せねばならぬ事も多く、そういっていただけて大変嬉しく思います」

「謙遜するな。ところで、お主、エルフではないな?」

「え?あ?」

「エルフ族は基本淡白だ、お前が特別にしても、昨日のそれは異常だエルフであるはずもない」


オレのエナジーお前暴走し過ぎだよ。

どうするんだよこの展開。

天国から、一気に崖っぷちだよ。

まさかの噴火し過ぎで身元バレとか、笑い話にもならねぇよ。


「えーと、私はエルフの中でも特別の中の更に特別なのです」

「ふむ。私の身体は異種のオスのエネルギーを若干吸い取るようでな。エルフ族や人族などでは僅かな時を結んだとしても、まず、翌朝にこのように私と会話出来るものは見たことがないな」

「だから、私は特別の中の更に特別なのです」


そして、一応エルフ族ではありませんが人族です。


「お主が何者かは、今は問わん。どうだ?ウチの食客にならんか?食客は良いぞ、食事も付く、特別に小遣いもやろう」


どういうつもりだ?オレを食客にするっていうのは、なにか裏があるのか?

食客になれば、リッチなお姉さんと夢のヒモ生活だ。美味しすぎる。

美味しすぎるが故に怖い。何か裏がある。と、思う。とにかくヤバイ匂いしかしない。


「昨夜の不意打ちは、私も楽しんでしまいましたので良いでしょう。ですが、それで、このような立派なお屋敷の食客にまで招待されるというのは、なんだか話がうますぎます。怖いので辞退させてください」


「何か勘違いしているようだな。お主、私を見てなにか気づかぬか?」


言われて、改めてメルロを見る。

羽織ったローブから、スラっと伸びた足は、透き通るような白、スベスベつやつやなのが、朝日を浴びて輝いている。控えめな双丘は上品に主張している。そして、この美貌だ。誰もが酔いしれてしまうだろう。ん?


「えっと、言い難い事ですが」

「なんだ、遠慮はいらん」

「昨日より少しお若くなられているように感じます」

「さもあらん。昨夜は久々に存分にエネルギーを吸い取らせてもらった、このように満ち足りた朝は久しぶりじゃ」

「メルロさんのような財力と権力と美貌をお持ちの方なら、エネルギーなど思うがままでしょうに」

「それが、そうもいかん。まず、萎縮して使い物にならんものが半分。エネルギーが少ないものが半分。私を満足させることが出来た男はお主で2人目じゃ」


そんなことがあるのだろうか?オレも37年パワーがあるとはいえ、転生前も転生後も、自分をそこまで異常な欲望の持ち主だと実感したことはない。もしかしたら、<魔族交流>とか関係あるのか?


「田舎者故、会話のどこに失礼があるのか分からないのですが、理解出来ないので、聞きます。メルロさんは魔族なのでしょうか?一人目の方とは?」

「ルークは、率直な男だな。そういう物言いは嫌いではない。まず、私はピクシー族と魔族のハーフだ。それ故のこの身体なのだろう。因果なものだ。それと、一人目の男に関しては、多くは語れんが、私のようなものが気楽に会える人では無いという事は言っておこう」


やっぱり、魔族の血が、<魔族交流>って魔物と会話出来る能力かと思ってたけど、思わぬ効果があったもんだ。

<スキル値変更>に比べて、使えない能力だと思っていたが今はこう言いたい。


「魔族交流万歳!ありがとう魔族交流!」


遠回しに、メルロのような美女から「貴方無しでは生きられない」的な話されるとか、もう俺の人生でこんなチャンスは無いかもしれないな。


それにしても、メルロのような完璧な女が、自分のモノに出来ない男ってのは誰だ?

いずれにしても、俺にはやることもあるしな。

結論を急ぐ必要もあるまい。

話は引き伸ばすに限る。


「少しの間、考えさせてください。最終的にお世話になるのだとしたら、私の抱えている事情も諸々話さなければなりませんし、準備も必要ですので」

「私にとっては、お前はかなり貴重な存在なのだ。条件的に不都合があるなら、なんなりと言ってくれ。出来る限りの対応はしよう」


もう、今、即断で決めたいぐらいです。

魔族の血が入った、ちょっと妖艶なお姉さんで、なんか向こうからチョット好意もたれて、しかも、もしかしたら、どんどん若返っちゃうかもしれないとか、リッチだし、権力あるし、夢のヒモニート生活が待ってるじゃん!

もう、いろいろとめんどくさい事考えないで、このまま流されてしまいたいっす。

だって、ラグ一家の事とか、ドラゴンの事とか、面倒くさいじゃん。

誰かにもたれかかって生きるって楽だよ絶対。

しかも、今回はこんなに好条件だし。


でも、その好条件ってところが、何度も俺の心の何処かにひっかかるんだよな。第一、「知らない人の言うことは簡単に聞いちゃダメだ。その人を良く知ってから判断しなさい」って小さい頃バアチャンが良く言ってたからな。

もうちょっと、メルロってヤツの事をいろいろ調べてからでも、遅くはない。


「考える時間を下さいまして。ありがとうございます。では、今日はここでお暇させていただきます」

「良い返事を待っている頼むぞ」


メルロの屋敷をでる。まだ、人もまばらな街中を歩いていると、お約束ですね。尾行のようです。オレがメルロを信用してないように、あちらもオレを信用してない、何者かを調べる。当然だな。


住宅地を過ぎ、商店の並ぶ通りに入ると、細い路地に入る。

後から尾行の気配。

角を曲がると同時に<潜伏>と<隠密>を発動。

追ってきた尾行が、左右をキョロキョロを見渡す。

お疲れ様でした。


移動して、変装セットをとり、服装は商人ローブに着替えて、物陰で<潜伏>と<隠密>を解除。


まず、宿屋に行って、5日分の宿の部屋をとる。

宿の主人には、他の町へ仕入れに行く可能性もあるが、宿の部屋は空けておいてくれという。もちろん前払いだ。

隣町の拠点として、この宿の部屋は、モートにとってもルークにとっても、何かと役に立つかもしれない。

そして、商店をうろつき、回復剤各種を補充する。

自分で作れるし、店に戻れば在庫もあるが、今は時間が欲しい。

それと、先々のアリバイも必要になるからな。

しっかり、モートとしても、商人の活動をしなければならない。

特に、必要でないものも、ちょいちょい交渉しながら、買っていく。

午前中、ひと通り活動を終えると、物陰、潜伏、隠密で、ルークになる。


とりあえず、同業者のラグなら、隣町のメルロの事も知っているだろう。

情報収集と監視も兼ねて、ラグの所に行く事にする。



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