問答
さっき、ラグ達と歩いていたら、山の上から声が聞こえた気がするんだよな。
まぁ、まさかとは思うんだけどさ。
一応、確認しとかないと、こういうの気になって眠れないタイプなんだわ。
何かあっても、危険な感じなら接触しないで帰れば良いし。
定番の<潜伏>と<隠密>で洞窟の奥まで進む。
モンスターはスルーだ。
例の出口は。
塞がってない。
「人間ながら良くやった。だがもうお終いだ」
ちょ・・・・
まだやってたんかい!
何時間やってるんだよ。
出口からチラッと覗いてみる。
やってます。
まだやってますよ。
両方ズタボロだけど、やってます。
ってか、ドラゴンってそんなに簡単にやられちゃうものなの?
最強最恐なんじゃないの?
出産によって、産後だからってのはあるかもしれないな。
人間なら床上げ前で、無理しちゃいけない期間なのかもしれない。
やっぱ、昨日、後衛の冒険者達のアイテムをもっとかっさらってやるべきだったか。
流石にあの卵をメルロ一家がどうするのかは分からないけど、ロクな事はしないだろうな。生まれていきなり親なしからの迫害パターン、もしくは生まれることすら出来ないかもな。
メルロ側、もう10人しかいません。
前衛3人、メルロ、弓部隊3人、回復補助3人だ。
もう撤退しろよ。
被害甚大すぎるだろ。
すでに、当初の目的忘れて、敵討ち的になってるか、興奮状態で周り見えてないんか?
「ここまで被害を出したからには、何が何でも成果を上げるよ!」
うん、どっちでもなく、欲の塊ですね。強欲ババアでした。
美人なのにもったいない。
流石に、双方疲れているようで、昨日のような苛烈な攻防ではない。
攻撃の合間合間が凄い開いてる。
もう消耗戦だなこれは。
オレも余計なおせっかいはしたくないが、ちょっと話してみたくなった。
もちろんドラゴンと。
これだけ疲弊してれば、少しは話になるかもしれない。
人間より高い知能と、何千年も生きてきただろうドラゴンに、オレの言葉が通じるのかも受け入れられるのかも分からないが、オレの「魔族交流」も今までほとんど役に立ってないからな。ドラゴンぐらい高度な知能を持つ魔物なら、どんな反応になるのか、きっと、今、試さなかったら、今後試す機会はないだろう。50人もの屈強なパーティーで産後を狙って、やっとこの状態だもんな。通常時なら、話しかける間もなく、バーベキューになってこの世を去る事になるだろう。というか、通常時なら、ドラゴンに話しかけようなんてまず思わない。
ということで、<潜伏>と<隠密>で攻撃の合間をぬって、一応、岩陰に身を潜めながら、ドラゴンに近づく。ドラゴンの身体がデカイからなのか、距離10mで脳内の「魔族交流」タブが選択できた。
「エンシェントドラゴン」
紫のドラゴンはエンシェントドラゴンというらしい。
な、なんか色紫だし、魔法っぽいの使ってたし、普通のドラゴンでは無いだろうなとは思ってたけど、凄いの出たな。とりあえずポチって話しかけよう。
「偉大なる太古の龍よ」
「誰だ私に話しかけるのは?」
「今、お前に新たな脅威が迫っている、それを教えに来た。」
「なに?新手か?」
「そうだ、あと1時間もすれば、あの人間を助けに100人もの屈強な新手が増援として来るだろう」
「その言葉を信じろというのか?」
「それはお前次第だ。私はただ知らせに来ただけだ」
「そうか、来るならば全員道連れにするのみ」
「かわいい子を残して逝く気なのか?」
メルロ側の弓攻撃が飛んできたが、オレとしゃべりながらも尻尾でなぎ払った。オレの前の岩が粉々に砕け散った。死ぬかと思った。
「それでも、守れるならば死を選ぶ」
「助けてやらん事もない」
「お前に助ける力があるのか?」
「一人の力では無理だ」
「助けられないのか?」
「協力してくれるなら、助けることが出来るかもしれん、そして二度と人間達が来ないようにも出来るかもしれん」
「どうすれば良いのだ?」
「ます、人間への攻撃をやめろ」
「バカな!」
「それが助かる道だ。15分でいい。防御に徹すればしのげる時間だろう」
「お前の事が信じられん」
「信じる者は救われるのだよ」
今度は前衛が補助魔法を受けながら突っ込んでいった。前脚で3人がふっ飛ばされる。無茶苦茶痛そうだ。っていうか、ピクピクしてるところに回復魔法飛んで来たけど、まだもがいてるし。かなり痛いだろう。当然だよな。人間が挑む敵じゃないよ。無謀だわ。
「さすがにこの状況で100人の新手はお前でもキツイだろう。」
「死を賭して戦うのみ」
「これから15分の間に、敵が次々に動かなくなる。最終的に引き上げる。黙って見てられるか?100人の新手も、基本的にはボスが無事助かれば引き上げるはずだ」
「分かった。騙されるのは承知でお前の話にのってみよう。たかが15分だ。黙ってみていてやる、やってみろ」
「一人だけ新手が来るが、そいつはお前に攻撃しない。そいつが、敵を撤退させるだろう」
「御託はいい。やってみろ。私は15分待つのみ」
「きっと、今のあなたの状態では、人間たちも、もう少しで討ち取れると思って、簡単には諦めないでしょう。後ろ足の影に、人間の使うのもですが、体力回復剤とスタミナ回復剤、魔力回復剤を置いておきます。あなたにとっては、微々たる回復にしかならないかもしれませんが、新手の一人が合図をしたら、一度丸まって、後ろ足の回復剤を食べて下さい。その後の合図で、全力の魔法をお願いします」
「言われるとおりにしよう」
ドラゴン。話せました。もうこれでトンズラ決めても良い思い出が出来たよ。古代龍と話したとか、神話でも聞いたことねぇぞ。
あ、15分しか、ないんだった。
仕事しなきゃ。
まず、前衛3人、その後、弓隊、回復隊の順番で、ナイトサーベルパンサーレイピアでチクチク刺していく。赤い●当の他に、黄色い●麻マーク出来ますので、そこをチクチクっとね。これ凄い良いスキルですね。
「なんだ?何が起きている?」
メルロが凄く慌てています。
突然仲間が動かなくなったら、そうなるわな。
そして、メルロちゃんもチクっとな。
一旦、洞窟の中に戻ると、装備を変更。
ローブと杖を装備して、魔法使いっぽく変装してみる。
「大丈夫ですか?!」
ドラゴンを見ると、オレが入って来たのを見て、一瞬ビクッとするが、黙ってこちらを見ている。
「何者だ!?もう少しで倒せるのだ!邪魔をするな!」
メルロは凄い形相で睨んでくる。
「ですが、もうあなた方は、戦える状態ではないのでは?今が引き際かと!?」
「もう少しで地位も名声も全て手に入るのだ!」
「私にはそうは見えません、あれは古代龍です。あそこからが、古代龍の恐ろしいところです、冷静になって見て下さい。もうすぐ復活しますよ」
片手を挙げてドラゴンを指す動作をして、合図を送る。
ドラゴンが後ろ足に首を丸める。
「何を言うか、もう完全に虫の息だわ。見ろぐったりとしておる」
「はぁ。あれは、復活の前兆ですよ。もうすぐ完全に復活します。良く見て下さい傷が癒えてきているのが見えますか?ほら、ドラゴンの傷が塞がっていく。」
「な、なんと、まだそんな力が残っていたのか・・・・」
「とにかく、フィールド全体に今、治癒魔法をかけます。全員は助けられないかもしれませんが、即時撤退を」
「むむむ。仕切り直しか。口惜しや」
「また、チャンスはありますよ。いいですが、私が治癒を発動と同時に、撤退の号令をお願いします」
「解った。礼を言う」
オレは、昨日窃盗したスクロールの中から、フィールドヒールのスクロールを選びそれを使った。
オレから、フィールド全体に眩い光が降り注ぐ、それと同時にメルロが号令した。
「全軍!即時撤退!」
30人程が、洞窟の中に駆け込んでいく。
死んだと思ってたものも、回復が追いつかなかっただけで、瀕死だったようだ。それでも、動かない奴らもいる。かなりの被害には違いない。
去り際に、オレが合図をすると、凄まじい轟音と共に、ドラゴンの魔法が炸裂して、洞窟の出口は落石で防がれた。
洞窟の中は30人の冒険者達が、呆けた顔で座り込んでいる。
その中をメルロがオレに向かって進んできた。
みんな座り込んでいる、この状況下でこれだけ毅然として歩いているのは流石だ。
「さっきの一撃、食らっていたら全滅だったろう。それがこれだけ助かった。ありがとう。私は隣町に住むメルロ・クロッキーナというものだ」
「助けられて良かったです。私はしがない冒険者ルーク・トラビックと申します」
「まずはきちんと礼をしたい。手数だが一緒に隣町までご足労願いたいのだが良いだろうか?」
「分かりました」
この状況かで断る人間がいるだろうか。
恩を売ったぞ!これは馬鹿でかい恩になったんじゃないのか?
50人を束ねる力のある美熟女メルロに恩を売った!
行こうではないか!隣町だろうがどこだろうとも!




