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どうも、バッドエンド確定の聖なる乙女一行です!  作者: 諏訪ぺこ


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2.騎士オリバー


 この国には魔物討伐専門の部隊がある。その部隊長をしているのが、私の幼馴染みオリバーだ。

 彼は昔から騎士になると言っていた。有言実行とでもいえばいいのか……あれよあれよと言う間に部隊長まで上り詰めてしまったのだ。


 正直、あまり嬉しくはない。

 その分危険な仕事を熟さねばならないから。でも彼は笑いながら言うのだ「世界が平和になれば、その分、ティアが働かなくてすむでしょう?」と。


「そういえば、今回は怪我人が多かったわね」

「新人が入ったばかりだからね」

「そう。もうそんな季節なの」

「神殿にいると、外の情報はあまり入ってこない?」

「そうね。あんまり……オルは? みんなの治療が終わったらまた出るの?」


 オリバーは少し考える仕草をすると、数日は王都にいるという。私は数日か、とちょっとだけ、いやもの凄く残念な気持ちになった。


 私も一緒に行ければいいのに。そうすれば、怪我をした人たちだって直ぐに治療できる。土地の浄化だってそうだ。でも王家は私を魔物が蔓延る土地へ同行させることを渋っていた。


 聖なる乙女()に何かあったら、と思ってのことだろう。だが名誉の地へ赴く人数は年々増えている。それは土地の浄化が追いついていないからだ。

 魔力溜まりに魔物が入り込めばスタンピードが起こる可能性が高まる。軽微なものから大規模なものまで。スタンピードがどのように発生するかは予想がつかない。


 人々は、毎日そんな危険と向き合いながら生活をしている。それを王家は理解していない。そして人心が離れる原因となることも。


「……私も、付いていきたい」

「ティアは神殿で待ってて」

「でも……私が一緒に行けば、土地も浄化できるわ。怪我人だって直ぐに治せる」

「だけどとても危険だ」

「そりゃあ、私はオルたちに比べれば体力だってないけど……でも待ってるよりはずっと良いわ。待ってて、誰かを名誉の地へ送るよりずっといい」

「ティア……」


 オリバーはなんとも言えない表情を見せた。事実、騎士たちの中には私を同行させるべきだと訴える者も多い。産めよ、増やせよ、などと言っているより先に土地の浄化を優先させるべきだと。


 全くもってその通りだ。そもそも私が子供を産んだからといって、聖属性持ちが生まれるとは限らない。属性とは完全にランダム。たとえ両親が聖属性持ちでも、子供に遺伝はしないのだから。


 そんな運にまかせた政策のために数年無駄にするぐらいなら、現状を打開すべく土地の浄化を進めた方が圧倒的に世の中のためになる。


「俺はね、ティアには安全な場所にいてほしい。ティアが大事だから」

「そう。私もね? オルが大事よ。だから側にいたいの。怪我をしたら直ぐに治せるように。魔物が大量に発生したなら、他に被害が出る前に浄化できるように」

「ティア……」

「オル、私は小さな子供じゃないわ」


 そういってオリバーを見上げれば、彼は困ったように笑った。困らせている自覚はある。彼にとって私は幼馴染みでしかない。しかも王太子の婚約者。

 こちらがどんなに思っても、彼は思いを返してはくれないのだ。


「ファルティシーア、俺は……俺は……」

「隊長! こちらにおられましたか!!」


 オリバーが何かを言おうとしたとき、彼の部隊の騎士が走り寄ってきた。そして側に私の姿を見つけると、パッと敬礼する。私はすぐに裾を持ち上げて挨拶を返した。


「ファルティシーア様もご一緒でしたか」

「ええ。彼が帰還の挨拶に来たから、治療院へ一緒に行くところよ」

「ありがとうございます! 治療院に残られてる神官殿たちでは、少々間に合いませんで……」

「そんな重傷者がいるの!?」


 大変! と声を上げれば、オリバーが首を傾げた。


「うちの部隊にそんな怪我をした人間はいなかっただろ?」

「別の部隊です。どうやら無茶な進め方をしたようで……」

「そうか。ティア、ちょっとごめんね」

「え?」


 私の返事を聞く前に、オリバーは私の体を横抱きに持ち上げる。そして一足飛びに走りだす。私はあわててオリバーの首に抱きついた。軽々と持ち上げて走っているが、ドレスを着ている令嬢ほど重くはなくても軽くはない。


「わっわっ……オル、はやい。早いわ!」

「ごめんね。ティア。口は閉じてた方が良いかも!」

「う、うん!」


 それでも緩まぬスピードに感心しつつ、治療院へとたどり着く。

 するとそこは先ほどまでとは違い戦場のようだった。



 ***



 オリバーが部隊長をしている隊とは別の隊。上位貴族の子息が指揮を執っていた隊は、かなりの被害が出ていた。治療院にたどり着く前になくなった者もいる。

 だが、その上位貴族の子息は頭を掻き毟りながら「俺は悪くない。俺は悪くない」そうブツブツと呟いていた。


 功名心、とでもいえばいいのだろうか。オリバーの部隊は、軽微な被害で毎回戦果を上げて戻ってくる。だから対抗心が湧いたのかもしれない。自分の方が優秀であると。

 オリバーの部隊が毎回軽微な被害で済んでいるのは、オリバーの采配が上手いからだ。そして無茶な進軍をしない。


 それも理解できずに、上位貴族の子息と言うだけで部隊長に抜擢された男は失敗した。

 そしてその男はオリバーの姿を見つけると、急に声を荒げる。


「お前っ! お前のせいだ!! お前の部隊が、こっちに魔物を追い立てたんだろ!!」

「そんなことはしていない。そもそも無理に進軍をしないように、と上からも指示が出ていただろ。それなのに進軍したのはそちらでは?」

「あんな指示! 俺の実力があればっっ!!」

「……その実力がないから、こんなにも被害が出たのでは?」


 思わずそういうと、その男は私を睨みつけた。


「うるさい!! 神殿で守られてるだけの役立たずが!!」

「役立たず? そう。それで貴方の指示が悪かったせいで、何人の方を名誉の地へ送り込んだの? 彼らのご家族の前でも自分の指示は正しかったと言えるのかしら?」

「なんだと!?」

「邪魔よ。貴方、大した怪我もしていないのでしょ? 役立たずの治療は受けたくないでしょうから出て行って」


 顎で入り口を示し、私はすぐに治療に取りかかろうと怪我人に近寄る。だが私の腕をその男が捻り上げた。


「ちょっと!」

「うるさい役立たずめ!! お前なんか魔物に食われてしまえばいいんだ!!」

「私を前戦に連れ出したいなら王家に文句を言いなさい! 私が前戦に出られないのは王家が止めているからよ!!」

「王家を侮辱するの、ぐわっっ!!」


 男は一瞬のうちに、オリバーによって床に引き倒される。そして、首の脇に彼の剣が突き立てられた。


「ファルティシーア様は日夜、我々のために力を振るってくれている。前戦に出ることを望んでも、王家が止めているのも事実だ。それなのに貴様の行動は何だ? 騎士として、恥ずべきではないのか?」


 男は、あっ……あっ……と声にならない声を上げている。普段の彼からは想像もできない冷たい声。でもそんな彼の行動を周りの騎士たちは誰も止めない。この場でこの男の味方は誰一人いないのだ。


 私はその姿を冷ややかな目で見ていた。本当に前戦に私を連れて行きたいなら、王家に進言すべきだ。馬鹿みたいに子供を産め、増やせ、なんて言ってないで浄化を優先しろと。


 それができない時点でこの男も王家も同じ。

 人的被害という現実を見ていない。自己顕示欲に自分の部隊を使い、そして失敗した。


「ファルティシーア様……」

「ええ。直ぐに治します」


 様子を見ていた神官が私に声をかけてくる。私は小さく頷くと、重傷者の元へ向かった。

 その後、どんなやり取りがあったのかはわからない。


 だが―――― その高位貴族の子息が前戦に復帰することはなかった。

 そのせいでオリバーの部隊が、危険な前戦に送られることになる。自ら志願したのか、それとも高位貴族からの嫌がらせか……


 でも彼は笑っていくのだ。


「ちゃんと帰ってくるよ。ティアが待っててくれるからね」


 その後ろ姿を見送るしかできない私は歯がゆさに、たまたま治療院に様子を見に来た王太子に当たるのだった。



 ……もちろん怒られた。



バットエンド確定はネームドキャラを最小限にしようと頑張ってます…

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