表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/45

34.勇者一行との決戦

「フェリス様、今度こそ覚悟を」


 聖剣の切先をフェリスに向け、リオンが宣言する。その瞳は、燃え立つ正義感で輝いている。


「おおおお姉さま、あああのあの、やっつけに来た……っ」

「ま、そういうことだ」


 肩をすくめたガルドも剣を抜き、ミリアの前に出た。


「やられるなんてごめんよ。わたしからなにもかも奪ってこの上……もうたくさん」

「ごたくはいい。闇は葬るまでだ」


 吐き捨てるように言ったリオンをマオが睨み付けた。その瞳が、凶悪に輝く。


「あのさ、前も言ったけどフェリスは僕の推しなんだよね。推しって全てなんだ」

「なんの話だ」

「お前らにはフェリスは渡さないってこと」


 マオの身体から闇が立ち昇り、次の瞬間跳躍した。聖剣を構えたリオンと闇を纏った手で切り結ぶ。

 後ろに飛びすさったミリアが杖をにぎりしめた。その口が動く。

 フェリスに向かって剣をふり上げ走り込んで来るのはガルド。


「悪く思うなよ!」

「悪く思うに決まってるでしょ! 闇よ左手へ!」


 目前に迫る剣。そこから目を離さずに、左手ににぎったペンライトのスイッチを押した。昼間でも明るく輝くペンライトに、闇を集めて行く。

 ガルドの剣をフェリスは防ぐことが出来ない。でも怖くはない。信じているから。


「その力を獰猛な牙とし顕現させ……」


 フェリスを袈裟斬りにしようとしたガルドの剣。その前に、闇があふれた。黒々とした障壁に剣が弾かれ、ガルドに向けて爆発した。

 後ろに飛び退いて爆発を避けたガルドの目の前に、マオが飛び出す。リオンをいなして爆発を弾幕にし、接近していたのだ。

 そのままガルドと切り結んだ。

 視線を動かす。金の輝きがフェリスに迫って来た。リオンだ。


(リオン。リオンを壊したらマオくんはきっと褒めてくれる)


 背筋をぞくぞくする感覚が走った。高揚し、知らず口角が上がる。

 リオンへペンライトを伸ばした。


「我の手となり敵を引き裂け——狼牙急襲ろうがきゅうしゅう!」


 ペンライトの光が闇に染まり、点滅をくり返した。荒れ狂った闇が吹き出し、それが巨大な狼の頭を形作る。いつだかに失敗して出した小動物ではない。

 闇の中から、その四肢を引き抜き、狼が吠える。それに怯むことなく、リオンは聖剣を繰り出して来た。


 鋭い牙がリオンの聖剣を弾き、その衝撃を逃すためにリオンは後ろへと飛ぶ。

 同時に、ミリアが打ち上げた光の矢が、フェリスめがけて急下降して来た。

 慌てて頭を押さえてかがむと、闇の狼が盾になり立ち塞がった。盾となりフェリスを守り、光の矢を受ける。

 血のように飛び散った闇に、フェリスの中のなにかが歓喜している。もっと、もっと、こんな風に飛び散る血が見たい。


 光の矢が消えると、闇の狼はリオンへと向き直った。

 リオンもまた、狼を睨みつけて視線を外さない。そのまま、リオンは再び聖剣をふりかざした。

 聖剣と狼の爪が切り結ぶ。狼の胸を聖剣が薙ぎ払った。苦痛の声を上げる狼に、また歓喜が込み上げた。


(この苦痛の声がリオンだったならもっと……)


 戦況は、わずかに狼が劣っているように見える。勇者の名は伊達ではないらしい。

 離れてはまた切り結び、切り結んではお互いの隙を狙い攻撃をしかける。

 フェリスが聖力を込めた聖剣は、確実に狼にダメージを与えていた。大打撃とはならないものの、ダメージが蓄積されて行っている。


(だめ、リオンを壊さなきゃ)


 このままでは押し負けてしまう。

 視界の端でガルドが弾き飛ばされたのが見えた。ガルドだって、リオンには及ばずとも国内随一の剣の使い手だ。

 そのガルドでさえ、マオの手にかかれば足が地面から離れる。

 自分がマオの足を引っ張るわけには行かない。


「リオン、僕が相手をするよ!」


 狼を盾にあっという間に距離を詰めたマオが、リオンに殴りかかって行く。身体が小さい分、リオンの視界から出やすい。狼の影にすっぽり隠れることも可能だ。

 歯を食いしばったリオンが、マオと再び切り結んだ。その横から襲いかかる狼も、リオンは華麗とも言える剣技と身のこなしで躱している。

 とはいえ、さすがのリオンも二対一では分が悪いようだ。狼を押していた勢いは削がれている。

 ガルドが立ち上がったのが見えた。その後方で、ミリアが再びなにかを唱え出している。


「闇よ左手に!」


 胸の中心から闇があふれ、左手のペンライトへ流れる。

 ミリアが杖の頭で円を描いた。魔法を放つ瞬間にする彼女の癖だ。

 来る!


(魔法の後にきっとガルドが来るわ)


 空中に次々と炎が浮かび、それが真っ直ぐにフェリスに跳んだ!

 同時に左手を出し、闇を自分の前に展開させる。そこに炎が激突し、熱風が吹き抜けた。

 炎が次々とフェリスを襲う。


(耐えて……!)


 ぐっと左手に力を込め、闇を送り込み続ける。なぜか胸の鼓動が乱れ、酷く痛んだ。それでも、やめるわけにはいかない。

 ペンライトが激しく点滅している。

 闇の障壁に力を注ぎつつ、ゆっくりと後ずさる。フェリスの姿は、炎に隠されて見えないはずだ。

 フェリスからもガルドは見えないが、炎があるうちは大丈夫だろう。


「闇よ、我が声に応えよ——」


 ガルドが来るなら、それを迎え撃つ。そして壊す。

 ガルドが地面に倒れ伏す様子を思い描き、気力を高揚させる。見たい、血を流して倒れるガルドが。


「その悪しき姿をあらわし、肉を断て!」


 炎が尽きた。闇の障壁の向こうに、剣の切先をこちらに向けたガルドの姿。


蛇蝎顕現だかつけんげん!」


 叫んだと同時に、障壁の内側から牙を持つ巨大なあごが現れた。大蛇だ。

 ぬっと顕現したそれに、ガルドは怯まなかった。身体を低くして、威嚇のために開いた口を下から突き刺したのだ。


「——おらァ‼︎」


 粗野な声を上げ、蛇の上あごに剣をめり込ませていく。それは、上あごを下から貫いた。

 ざっと引き抜いた剣を、今度は蛇の頭部にふり降ろす。

 闇が飛び散った。蛇の姿が崩れて行く。その壊れ行く様に、また背筋が歓喜で震えた。


「まだよ!」


 崩れた闇が再び集まり、ガルドの前に立ち塞がる。それは、巨大なさそりの姿。

 巨大なハサミと、ガルドの顔ほどもある毒針をふりかざし向かって行く。

 顔をしかめたガルドが応戦する。その右手では、リオンとマオがやり合っていた。

 ミリアはさらに後方に控えている。また杖をにぎり締めて口を動かし始めたのは、詠唱だろう。


(ミリアをなんとかしなきゃ)


 ミリアの魔法の射程はかなり広い。その上威力も強いから厄介だ。今は防げているが、長引けばわからない。

 ガルドがさそりに気を取られている隙に、彼女を地面に転がしてしまおう。そうすればきっと、リオンもガルドも自分がやられるよりもショックを受けるはず。

 その絶望の中で壊すのは、さぞ美しいだろう。


「闇よ集え! 暴虐散鳥ぼうぎゃくさんちょう!」


 ぼっ、ぼっと音を立ててフェリスの周りに闇の炎が無数に現れた。ガルドの向こう、ミリアへ向けて腕をふると、闇の炎が尾を引いて矢のように真っ直ぐ宙を切り裂いた。

 ミリアから氷の矢が放たれる。闇の炎を次々に撃ち落として行くその正確さとパワーは、さすが勇者一行だ。


(そうよミリア、こっちに集中するのよ)


 次々と闇の炎を撃ちながら息を詰める。ぼっ、ぼっとフェリスの周囲にわき出す闇の炎は、視線の高さから地面すれすれの場所まで無数にあらわれている。そのうち低い場所にあらわれたものが、すっと地面へ消えて行くのをしっかりと確認した。

 闇の炎を撃ち落とすミリアの視線は上を見ている。


(ミリア。愉しませてね。さようなら)


   * * *


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ