試験会場
毒猪の狩猟から一週間後、クリカラ達は試験会場の視察に来ていた。
皇帝の暮らす万永城の一画にある専用の大きな区域。
数十はある部屋の一つ一つに数えきれないほどの机が並べられ、汚れ一つないように丁寧に掃除がされている。
「大臣、いかがでしょうか?」
担当の臣下が様子を尋ねる。
「部屋自体には問題は見られません、試験当日までこの状態を維持するようにお願いします」
「は、仰せのままに」
部屋を出ると、今度は警備主任の元へと向かう。
「リビク主任、警備の様子はいかがですか?」
「抜かりありません、総勢五千名、いつでも対応可能です」
「それは何よりです。当日、手荷物検査や身体検査を徹底するように言い聞かせておいてください。
陛下に御身に何かあってはなりませんので」
おびただしい数の受験生が皇帝の近くに集まる以上、不正や暴動のほか刺客などの脅威も徹底的に排除しなければならない。
特に手荷物検査や身体検査は過剰なまでに徹底され、城門から試験会場までに三回行われる。
そのうえ、饅頭などの食料品は中を割って不審物が仕込まれていないかを確認し、靴や衣服の裏、果ては下着の中の確認も男女関係なく行われる。
もちろん、不正が発覚すれば叩き出されるか投獄の措置が取られる。
官僚は国の中枢を担う要職であるだけでなく、国威に関わる存在。
その選定において不正は絶対に許されない。
全ての試験部屋の巡回を終えると、今度はリビクを連れて受験生用の宿舎に向かう。
牢獄のように狭く、無機質な部屋がひたすらに並ぶ。
備品は粗末な布団だけで、小さな棚には最低限の所持品しか持ち込めない。
その居心地の悪さは、発狂する者が毎年現れる程である。
一応、共用の場所として大食堂があるが、料金は当然すべて自己負担であるし、全員が食事をとれるほどの余裕はない。
「まあ、いいでしょう。
いざという時の措置も、万全ですか?」
「ええ、悪臭を放つ前に速やかに場外に放り出します」
過酷な環境の下で行われる登用試験において、精神的、肉体的に追い詰められたものが急死することがよくあり、その処理がクリカラの統括する文部省において問題となっている。
一応の手順としては場外に放り出して外部の業者に回収させるが、最近は冒涜的という意見が出ている。




