報告
「以上が報告です」
毒猪を討伐した晩、玉門台に戻ったクリカラは討伐の証である牙を手土産にエイテイに報告する。
「流石だな、おかげで助かった」
メラメラと燃え盛る篝火を背に、エイテイが労をねぎらう。
「しかし、なぜエンシン街道に毒猪か来たのでしょうか?
彼らは森や山に暮らす生物のはず」
「俺に言われてもな...
何らかの環境の変化が起きたんじゃないか?」
クリカラからの専門外の質問にいい加減に返す。
「調べてみる必要がありそうですね」
「生物の生態調査に関しては県令庁の仕事だ。
俺たちの出番じゃねぇ」
「それを言ったら毒猪の狩猟自体が本来なら私の管轄外なのですが…」
費用をケチるためというしょうもない理由で危険な生物の相手をさせられたことを愚痴る。
「一応、報告書をまとめておきますね。
それと、県令庁への要請書をお願いいたします。
もちろん将軍の名前で」
「はいはい」
クリカラの要望に執務室に戻るエイテイ。
エンシン街道における出来事と本来の生息域の現状の調査の要請を書簡にまとめると、それを「じゃ、頼む」と言ってクリカラに手渡す。
「何故私に?」
「明日の訓練があるからな。
ここを離れるわけにはいかねぇのよ」
「先ほどの件といい、貴方は私を便利屋だと思っているのですか?」
「半分」
悪びれなくそう言い放つ彼に「はぁ」とため息をつくと、再び馬を駆って県令庁へと向かう。
玉門台より十時間、朝日が昇る頃に毒猪の本来の生息域のある霊県を統治する県令庁にたどり着く。
古くからある要塞を改修した庁舎。
住民の暴動に備えてのものらしい。
「何用か?」
「エイテイ将軍に代わり、エンシン街道に関する報告書を県令に持ってまいりました」
門番に用件を伝え、書簡を手渡す。
「そうか、県令は中にいる、通れ」
鉄門をくぐってそのまま受付に向かい、門番に向けたものと同じ言葉を伝えると、官吏に案内される形で県令の部屋に通される。
「これは文部大臣、わざわざご足労頂くとは、何用ですかな?」
恰幅の良い男。
霊県を治める県令のヨハク。
「エンシン街道に関する事案の報告書及び、エイテイ将軍による毒猪の生態調査の要請書の書簡でございます」
書簡を提出すると、ヨハクは手に取り、素早く広げる。
「ほう、毒猪の群れですか、これは物騒な」
「何とか退治いたしましたが、同様な事例が起きる可能性がある以上、対処願います。
何分、試験が近いものでして」
「そういえば、登用試験ももうすぐでしたね。
受験生たちに何かあれば一大事です、すぐに対応致しましょう」
「ありがとうございます」
県令に礼を述べる。
「そうだ、大臣に御足労頂いたのです、何かもてなそうと思うのですが、何がよろしいですか?」
「であれば、茶を一杯いただけますか?喉が渇いておりまして」
「お安い御用です」




