玉門台
帝都の入口にある城塞、玉門台。
帝都防衛の要となるこの城塞は王朝が成立して以来、侵略者に決して落とされたことはなく、真王朝の栄光の象徴としてその威容を保っている。
「大砲、撃ち方始め!」
教官の号令の直後、砲声が響く。
轟音と共に撃ち出された砲弾は放物線を描き、木の的を粉砕する。
「凄まじい威力だな」
教官の後ろ、腕を組みながら訓練を見物していた長い髭の将軍が満足そうにつぶやく。
視線の先には蘭国から輸入した新型の大砲。
真国で配備されているものとは違う後装式で射撃間隔が短く、弾道の安定性や飛距離も真国で運用されている物と比べて優れている。
「エイテイ将軍、文部大臣がお越しです」
「わかった」
片膝をついて報告する部下に、エイテイは速やかに動く。
「久しぶりだな、クリカラ。用件は、あれだろ?」
軽く挨拶すると、エイテイは視線を大砲に移す。
「蘭国からの新型と聞いて直々に視察しようと思いましたが、ずいぶんと変わった形ですね?」
「俺も驚いたよ、まさか後装式とはな」
後装式の大砲は真国でも開発が進められていたが、後部閉鎖弁の開発が難航して遅々として進まなかった。
「しかもそれだけじゃねえ、らいふりんぐ?とかも施されているらしい」
「ライフリングですね、螺旋状の溝を施すことで弾道を安定させると蘭国の技術者から聞いたことがあります」
「ひとまず、これさえあればここに竜や巨獣共が攻めてきても今まで以上に楽に追い払える」
腕を組みながら上機嫌の将軍。
真国や蘭国の属するこの大陸には竜や巨獣といった超生物が生息しており、時折人の領域に侵入しては災害並の損害をもたらしている。
一方で超生物の素材は需要がとても高く、それの狩猟を専門とする狩人と呼ばれる職業が存在している他、超生物を使役して戦力とする竜騎兵と呼ばれる戦力も辺境を中心に配備されている。
「で、今回はどれを使うんだ?」
「せっかくなので新型の砲を合図に使おうかと」
件の大砲に視界を映しながら答える。
万を超える受験生に対して試験開始時刻などを伝えるには銅鑼では音量が足りず、炸薬を大量に詰め込んだ空砲の大砲をいつも用いて合図を送っている。
「わかった。輸送の手配をしておく。
ところで頼みがあるんだが、いいか?」
「私にできる事ならば」
「実はエンシンの街道に巨獣が現れて交易が寸断しているんだ。
代わりに片付けてくれねぇか?」
帝都と外の街を繋ぐエンシン街道。
交易路として整備されており、馬車が余裕ですれ違えるほどに広い。
「巨獣ならば、狩人組合に要請すればよいのでは?」
「高額な依頼料を出すよりも、お前を一人で向かわせた方が費用も掛からないだろ。
それにすぐ済むしな」
「…詳しくお願い出来ますか?」
「毒猪の群れが街道を占拠してるんだ。
警邏中の部下が群れを見たんだと」
「それは妙ですね、あの辺に毒猪は生息していないはず」
疑念を覚えるクリカラ。
毒猪は餌である毒キノコが群生する森林地帯や山岳地帯に生息する生物。
開拓されたエンシン街道では彼らの餌が足りない。
「しかし、実際に報告が上がっているんだ。頼む」
「わかりました、支度してきます」
エイテイの頼みごとを承諾し、支度を整えるべく馬を駆って宮中に戻る。




