道士ソウゲン
試験三日前、帝都主通り。
城へと続く大通りを独特な装飾をつけた竜車が進む。
車両には宮中の客人であることを示す旗が掲げられており、選出された数十人の精鋭兵によって守られている。
「開門!開門!」
城前の停車するや、開門を要請する御者。
「道士様のお通りだ、開門せよ!」
「は!」
上官の命令に両開きの門を開く衛兵。
鉄製の分厚い扉がゴゴゴと重低音を響かせて左右に開く。
「お通りください」
地面に片膝をつき、首を垂れる衛兵たち。
それを一顧だにすること無く、竜車は宮中へと向けて進む。
本丸である万永城を守るための防衛施設。
龍郭と呼ばれる複雑な形状の区域を、車両用に敷かれた大理石の石畳に沿って移動する。
「…気が満ちておる」
竜車の中、黒い布で顔を隠した祈祷師が老いた声で呟く。
窓のない暗い車内で胡坐をかきながら、ただただ車に揺られること三十分。
竜車が止まり、扉が外から開けられる。
「道士様、到着いたしました」
到着の報せに祈祷師はおもむろに立ち上がり、兵士の手を借りて降りる。
「お待ちしておりました、ソウゲン様」
ソウゲンと呼ばれた道士にクリカラが挨拶する。
「息災か、クリカラよ。相変わらずの気の凄さだ」
「お手を」
差し出されたクリカラの手をつかみ、彼女に先導される形で皇帝の待つ謁見の間に向かう。
「陛下、ソウゲン様をお連れいたしました」
万永城の中でも特別豪華に装飾された謁見の間。
部屋の左右に衛兵が立ち並び、奥には皇帝が玉座に腰を下ろしている。
「ソウゲン様、お辞儀を」
クリカラに従い、三跪九叩頭を終えたソウゲンに皇帝は口を開く。
「天貫山よりはるばるご苦労であった、ソウゲン」
「多忙を極める陛下に比べれば、どうということはございません」
顔を隠したまま、皇帝に言葉を返す。
「疲れが残っているだろう、儀式の時間までは十二分ある。
部屋を用意してある故、それまではそこでゆっくりと過ごすがよい」
「は!陛下のお気遣い、大変痛み入ります。
クリカラ、手を」
「はい」
ソウゲンの手を取り、竜車へと向かう一行。
ソウゲンが乗車したのを確認すると、用意された部屋へ向けて発進する。




