貧すれば鈍する
「朝だ、起きろ!」
翌朝、衛兵の声に牢内の人たちは起床する。
「出ろ」
牢から解放されたルイクシンをはじめとする二十人ほどの受験生たち。
用意された食事を終えた後、放り出される形で再び街に繰り出す。
「で、どうするんだよ…これから」
朝の寒さに身を震わせながら今後の行動を尋ねるチュウユウ。
「狩人組合に行こうと思う」
「狩人組合?なんで?」
突拍子のないルイクシンの案に、ただただ困惑する。
「昨日、馬車で会ったあの人、狩人組合に寄ってただろ?もしかしてまた来るんじゃないか?」
「お前なぁ…」
昨日と何も変わらないバカげた考えに、呆れて声を漏らす。
「そもそも馬車で同席しただけだろ!?
なんでそれだけで試験日まで泊めてくれると思うんだよ!?」
「じゃあ他にいい案があるのか!?
今日も宿泊所を見つけられなかったら受験すらできずに帰郷することになるんだぞ!?
そうなったら錦を飾るどころか故郷の笑いものだ!」
雀がチュンチュンと鳴く中に響く二人の怒声。
見かねた衛兵が駆け寄り「うるせぇ!」と一喝する。
「たく、貧すれば鈍するだな」
余裕がなくなれば思考まで貧しくなることを身をもって知りながら、しかし代案の浮かばないチュウユウはルイクシンの提案に不本意ながら乗る。
一陣の寒風の吹く帝都。
早朝とあって大通りに人は少なく、店もほとんどが閉まっている。
「確か組合は…あった」
昨日、あの女性の立ち寄った組合の建物。
昼夜問わず開いており、まばらながら人の出入りが確認できる。
「すみません」
分厚い両扉を開き、中に立ち入る。
そこにいたのは大剣を背負った一人の狩人と受付の女性三人。
場の視線が二人に一斉に集まる。
「ご依頼ですか?」
用件を尋ねる受付の女性。
「えっと、人を探しているんです」
「あの、人探しの依頼ならば役所の方に…」
「違うんです、昨日、ここに出入りしていた人を探しておりまして。
踊り子の女性の方なんですけど」
「…もしかして追っかけですか?」
怪訝な表情を向ける三人の受付嬢。
するとルイクシンの後ろから大剣を背負った男がゆっくりと近づく。
「兄ちゃん、いくらあの子が好きでも限度ってもんがあるぜ?
ああいうのは遠くから応援するってのが―――」
「引くぞ、クシン。
失礼しました!」
場の空気に耐えられなくなったチュウユウがルイクシンの手を引き、関係者たちに頭を下げて退散する。
読んでくれてありがとうございます。
他にも、追放された王様の物語や女帝と呼ばれた海軍大将の戦記などのいろいろな作品を書いているのでよろしければ見ていただけると幸いです。




