宿探し
「着きましたよ、お客さん」
万永城の外門前、豪華な装飾の門前に馬車が止まる。
受験者に向けた特別措置として割引かれた運賃を支払い、二人は荷物を持って出る。
「ここが万永城か」
皇帝の鎮座する、国家の中枢。
将来の職場になるかもしれない場所に可能なまで近づく。
「何用だ?」
「登用試験に臨む前に会場の確認に参りました」
呼び止める衛兵の問いに、ルイクシンは受験票を見せながら毅然と答える。
「それはご苦労、だが今は立ち入ることはできない、去るがいい」
「は、失礼します」
一礼し、城を背に来た道を徒歩で戻る。
「さて、まずは宿だな」
当日まで宿泊できる宿を探す二人。
手始めに近くの宿に飛び込み、受付に尋ねる。
「すみません、試験日までニ名で泊まりたいのですが…」
「申し訳ありません、全室満室となっております」
事務的な応答で断る受付嬢。
万人を超える受験者が集まっているだけあって、万永城の近くの宿はすでに宿泊者でいっぱいであり、二人の入る余地はない。
「もう少し早く来ればよかったかな」
少し後悔しつつ、万永城から離れた場所で別の宿を探す。
しかし、どこに行ってもすでに満室であり、二人の宿の捜索は徒労に終わる。
「はあ、このままだと帝都で野宿かぁ…」
夕暮れの迫る帝都、冷たくなり始めた空気にチュウユウのため息が混じる。
「腹が減った、食事に行こう」
寒さに身を震わせながら、歓楽街へと向かう。
煌々と光る提灯。
並ぶ店の中からは客たちのがやがやとした声が響く。
「そこにしよう」
適当に選んだ酒場に入り、案内されるがままに席に着く。
「高いな…」
帝都とあってか、故郷の店と比べて割高な料金がお品書きに書かれている。
「とりあえず、一つだけ頼もう」
受験票の割引の効かない店。
少しでも出費を抑えるべく、一人一品だけ頼む。
酔いどれの喧騒を耳に、出された料理をゆっくり食べる。
すると、奥にある舞台に一人の踊り子と二人の奏者が現れる。
美しい化粧が施され、天女の様な衣装を纏い、幽玄な音楽に合わせて歌い踊る。
「・・・・・」
客達が上機嫌になる中、踊り子の声に耳を澄ませるルイクシン。
「この声、聴いたことがある、確か…」
食事を止めて声の記憶をたどる。
最近聞いたばかりの声。
「思い出した、馬車の時のだ」
馬車で出会った華奢な少女の姿を思い浮かべ、踊り子とその容姿を重ねる。
「それ本当か?」
姿のまるで違う踊り子に困惑しながらも、ルイクシンに倣って耳を澄ませるチュウユウ。
「…賭けてみるか」
食事を急いで済ませて代金を払うと、ルイクシンはチュウユウを引っ張って店を出る。




