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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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魔族の国はブラックだ 


 ツァオバライ商会に行った日から、幾日か過ぎたけれど、私達に特別な変化はない。


 強いて言えば、王子とリリお姉様が以前に比べて仲良くなったので、毎日が平和だわ。


「ティト様は、週末のパーティーには参加なさるのですよね?」


 授業の合間の休憩中に、ダリエが隣から話しかけてきた。


 週末に、ユング王子とリリお姉様の婚約式があることは、貴族ならば誰もが知っている。


「ええ、光栄なことに、二人から参列しても良いと、お招き頂いたわ」


 二人とは仲良くなれたけど、正直、正式なパーティーとなると気が重い。


「ティト様のパートナーは、やはりアズール様なのですか?」


 ロアは、探るわけでもなく、素直にパートナーを尋ねてきた。


 婚約したことを知らせることもなく来たけど、隠すつもりはない。


「ええ、婚約式のパーティーには、アズール様と共に参列いたしますわ」


 ダリエとロアに伝えたつもりが——



「え?!」

「うそよ!!」

「嫌ぁ!!」



 どうも、私の声は他の人にも通ってしまったみたいだ。


 あちこちで叫び声が湧き上がってるわ……


 聞こえなかった人も「なんだなんだ」と叫び声に興味を持ったので、あっという間にクラス全員に知れ渡ってしまった。


「あ……も、申し訳ありません!」


 ロアが青い顔をして、迂闊なことをしてしまったと慌てている。


「ロア、アズール様のことは、隠してなどいないから、気にしなくてもいいわよ?」


 周りの耳目が煩わしいと感じながら、私はロアに声をかけた。


「で、ですが……え? 隠してない?」


 ダリエとロアは、言葉の意味に気づいたのか、期待に目をキラキラさせながらこちらを見ている。


「私は先日、正式にアズール様と婚約いたしました。なので、問題ありませんわ」


 憶測でコソコソ言われるより、ハッキリさせたほうがアズ兄様にとってもいいわよね?



 ギャーーー!!



 私は敢えて声を張って発言したので、ダリエとロア以外のクラスの令嬢が、一斉に叫び声を上げた。


 パニックになる前に、教壇に先生が戻られたので、私は特別困ることはなかった。




 ***




「ティト、サロンに行くよ」


 授業後、捕食者の目をした令嬢達が、ギラギラしながら私に狙いを定めていた時に、アズ兄様が迎えにきてくれた。



「アズール様……ちょうど良かったです」


 私の背中には今、ビシビシと視線が突き刺さっている。



 皆の心の声は授業中ずっとダダ漏れだった。


(何で?!)

(嫌よ)

(嘘よ)

(ダメよ)

(騙された!)

(ずるいわ)

(いいな)



 能力を閉じていたのに、思いが強かったのか、無限に聞こえてきて、もうウンザリだ。



「ティト、どうかしたのか? 顔色が……」


 心配したアズ兄様が私の顔に触れたら……



「きゃー!!」 

「嫌ぁー!!」

「もうやめてぇ!!」


 盛大な叫び声が教室内にこだました。



「……アズール様、参りましょう」


 あまりの煩さに、私はアズ兄様を引きずるようにして教室から離れた。


「ティト、さっきの叫び声は何だったの?」


 アズ兄様は令嬢の発狂ぶりに引いてしまったようで、恐る恐る尋ねてくる。


「週末のパートナーの話から、ダリエとロアに婚約したことを伝えたら、聞き耳立てていた方達が、ああなりました」


 2人での会話は、基本的に防音にしているので、婚約の話をしても、廊下ですれ違う令嬢達に被害はない。


「なんだ、まだ言ってなかったのか?」


 アズ兄様は納得しつつ、少し不服そうだ。


「聞かれない限り、こちらから情報を流してオモチャにされる気はありませんわ」


 令嬢にとって、他者の婚約の話などは大好物の話題だ。


「それもそうか。俺は翌日に聞かれたけど……騒ぎにはならなかったな」


 アズ兄様は「なんでだ?」と首を傾げた。


「それは男女の違いと、アズ兄様の立場だからですわ。下手なこと言って印象下がったら、貴族は困るでしょう?」


 いずれ宰相になるのだし……


「確かに、俺は『絶対忘れない』しな」


 能力的にも、敵に回すと怖い人よね。


 話をしながらサロンに着いたけど、まだ誰も来ていなかった。



 アズ兄様と話をしながら待っていたら——


 バングルがチカチカッと光った。



「ティト、チャコさんから通信きてるよ」


 アズ兄様に促され、部屋の隅に行き、防音魔法をかける。


「チャコ姉、何かありましたか?」


 私のバングルは、国外にいるチャコ姉としか使わないので、光ったらチャコだ。


『久しぶり。実は賢者ティトに調べて欲しいことがあるの』


 防音魔法を使っていて良かった。


 ——チャコ姉は迂闊すぎる。


 周りに他人がいたらどうするつもりなの?


 私はやれやれと思いながら、とりあえずチャコ姉の話を聞いた。


『捕まえて保護した魔族から直接聞いたんだけど、幹部は24時間年中無休らしいの」


 ——それ、どこのブラック企業ですか?


「魔族は魔王の支配下だから、拒否できないらしいわ。魔王のわがままで、今は眠ることすら難しいみたい』


 社畜だわ……めっちゃくちゃ可哀想。


「魔王軍って、そんなに過酷なの?」


 なんでまたそんなことに?


『ティトも私と同じことを聞くのね? 魔族と魔物は、魔王の支配からは逃げられないんだって。だから、辞めたくても辞められないのよ』


 ——洗脳でもされてるのかしら?


『人格も否定されて……もう逃げたいって言って泣いていたわ』


 それは……泣くわ。


「それ、軍として成り立ってるの?」


 人間の敵とはいえ、あまりにも悲惨ね。


『それが、今の魔王は、かなり弱いはずなのに逆らえないから、なんとか成り立っているの』


 ——なんで逆らえないのかしら?


『……魔族を支配下に置く物でもあるんじゃないかって話よ』


 そんなものがあるなら……


 ——私なら、破壊一択だわ。


「それは、使われる側はかなり辛いわね」


 私は見た事の無い魔族に、同情してしまう。


『実際ボロボロよ。魔王は根性論を翳すし、できないことは全て部下のせい』


 ——うわ、前世の上司だわ。


『幹部も疲弊してどんどん倒れて……無理難題を熟せなければ減給。食事すら取れなかったみたい……』


 チャコ姉は、魔族の国の魔王は最低だけど、殺すのは忍びないとのことだった。


『……命を取らず、魔王の支配から外れることができないか、後、可能なら、魔族を人間に戻す方法はあるのか調べてくれないかな?』


 ゴルドファブレンは勇者資料館があるし、調べることは可能だわ。


 ——討伐は任せてるし、協力しなきゃね。


「分かった。話を聞く限り今の魔王、最悪ね。かつての職場を思い出しちゃった。気分が悪くなったわよ」


 ——食欲がなくなったわ


「物凄く腹立つし、すぐに調べてみる。じゃあ、チャコ姉、また連絡するね」


 通信を切り振り返ると、全員揃っていた。


「ごめんなさい! お待たせいたしました」


 私は急いで席につき、何から調べようかと考えながら、食べる気をなくした昼食を頂いた。

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