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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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憧れの人 


 通信を終えたら、速攻で2人から両脇を固められてしまった。



 ——これ、逃げれないわ



「何か、嫌なことでも言われたのか?」


 アズ兄様の目が鋭くなっている。


「ティト、脅されたりしたわけじゃない?」


 ヘルグ兄様も、心配そうに顔を覗き込んだ。


 チャコ姉との会話中、何度も私が険しい顔をしたのを心配してくれたのね……


「ごめんなさい。前世の話をしていたから、つい、昔のことを思い出しちゃって……今は幸せだし、大丈夫だから心配しないで?」


 私がにこりと笑いながら伝えたら、


「「はーぁ」」


 2人そろって息を吐き、ソファの背もたれに倒れ込んだ。


「心配かけちゃってごめんね?」


 私が謝ると、


「ふふ、ティトはチャコさんと話した後は、言葉遣いが子供っぽくなるよな」


 アズ兄様に指摘されて気づいた。確かに、令嬢の喋り方じゃないわね。


 ——ちょっと恥ずかしいわ。


「前世の世界の人と話をすると、つい釣られちゃいます。恥ずかしいわ」


 なんだか気恥ずかしくなっていたら、


「で? ティト、いつの間にバングルの仕様が変わったんだよ」


 ヘルグ兄様にバングルをコツコツと突かれ、伝え忘れていたことにハッとした。


「すっかり忘れていたのよ。チャコ姉に会った日に、またお話したくて、私のバングルをあげたの。これはそのお返しに頂いたのよ」


 見た目が同じだから、違和感なさすぎてすっかり忘れていた。


「それ、同時通話だよね? 凄いな……ヘルグ、俺達のバングルもやってもらおう」


 アズ兄様は商会長のデアマギアを呼んでもらうと、私のバングルを見せた。


「ティトのと同じにしたいんだけど、お願いできるかな?」


 アズ兄様がデアマギアにお願いすると……


「製作者に尋ねてみますので、少々お時間頂けますか?」


 デアマギアが、珍しく困り顔をしている。


「こちらはペリル様が、チャコ様とティト様のために手ずから構築された魔法陣でして、我々には、まだ仕様が分からず……」


 なんと、一点物だったわ!


「は? これ、アウスヴェーク様の魔法陣なのか?そんな……凄すぎる……」


 アズ兄様は、食い入るように私のバングルを見つめている。


 確か、アズ兄様はアウスヴェーク様のファンだったわね……


「さすがに、僕らには手が出せないよ」


 ヘルグ兄様も、がっかりしながら私のバングルを見つめている。


 な、なんだか、申し訳ないわ……


「お待ちください。難しいかもしれませんが、一度ペリル様に確認をしてみます」


 デアマギアは、私達のバングルを持ったまま部屋を出て行った。


「あー、さすがにティトが羨ましい!」


 アズ兄様にしては珍しく乱れている。


「アズ兄様、アウスヴェーク様はそんなに凄い人なの?」


 アズ兄様が憧れるなんて、よほどよね?


「凄いなんてもんじゃないよ! 天才ってあの人のための言葉だよ。アウスヴェーク様ひとりで世界征服できると噂が立つくらいだよ?」


 ——そんなに?!


「え? もしかしてあのバングル、とんでもない価値になってない?」


 なんて厄介な物を送ってきたのよ!


「ある意味国宝級だよ。設計図が広がれば目立たなくなるけど、アウスヴェーク様作だとかなり高価だな」


 アズ兄様は、うーむと唸っている。


「もしできるとしても、高価すぎて、どちらにせよ諦めるしかないかぁ」


 ヘルグ兄様ががっくり項垂れているアズ兄様を笑いながら見ていたら



 コンコン



「失礼致します」


 デアマギアがあっさり戻ってきた。


 アズ兄様は、パッと貴族の子息の仮面を被り、品良く澄ましている。



 ——変わり身が早いわね。



 ヘルグ兄様は、笑いを堪えているのかプルプルしている。


「お待たせいたしました。こちら、お渡しいたしますね」


 バングルは、私達に返された。


「無理を言ってしまって、アウスヴェーク様に余分な手間をかけ、申し訳ありませんでした」


 アズ兄様が代表して謝り、三人で、デアマギアに頭を下げた。


「頭を上げてください。こちらは、ペリル様から皆様へのお手紙になります」


 お手紙?……なんの?


 私達はお互いを見ながら頭を寄せ合い、恐る恐る手紙を開いた。



『ティトと、その友人へ


 デアマギアから、3人は店の常連で、とても仲良く、あのバングルは本来ならお揃いだったと聞いたよ。


 チャコのためにありがとう。


 お礼に、皆お揃いにしておくけど、バングルの仕様が違うことは秘密にすること。


 グランディエラ家とフェルトシュパート家の子息ならば、信用して渡しても大丈夫だよね。


 これからも仲良くね。


 ペリル・アウスヴェーク』




 隣にいるアズ兄様が、ブルブル震え出した。



「こ、こ、これ!!」


 視線は手紙とバングルを往復している。



「アズール、落ち着いて」


 ヘルグ兄様がアズ兄様を嗜め、


「デアマギア、これ本当に受け取っていいのか?その……お代はどのくらいするのかな?」


 ヘルグ兄様は、ちゃんと値段を確認した。


 アズ兄様もハッとして、デアマギアに向き直った。


「そちらは、ペリル様からのお礼の贈り物です。どうぞお納めください」


 デアマギアは、優しく微笑んで頷く。


「でも、バングルを渡したのはティトです。僕らは何もしていません」


 ヘルグ兄様が遠慮して伝えたら、


「ペリル様に、バングルを購入した時の皆様の様子をお伝えいたしたら、ふふふ、ペリル様が『それじゃあお揃いに戻してあげよう』と」


 デアマギアは楽しそうに教えてくれた。


「ペリル様は、ティト様がチャコ様を気遣ってくれたことに、大変感謝しております。どうか、ペリル様のお気持ちを受け取ってくださいね」


 デアマギアは、優しく伝えてくれた。


「ありがとうございます」


 私は、これ以上断るのは失礼に当たると思い、お礼を伝えた。


「ありがとうございます。アウスヴェーク様にお礼をお伝えください」


 アズ兄様は、頬を赤く染めて感無量とばかりにお礼を言っている。


「ありがとうございます。大切に使います」


 ヘルグ兄様は、まるで勲章でも賜ったかのように恐縮した。


「ははは、ペリル様に伝えておきますよ。特に、アズール坊ちゃんがペリル様を大好きな様だともね?」


 デアマギアは、いたずらっぽくウインクをしてアズ兄様を揶揄った。


 アズ兄様は更に真っ赤になりながら、


「……間違いないから、アウスヴェーク様によろしくお伝えください」


 アズ兄様は、ソファテーブルに頭が付きそうなくらいひれ伏した後、


「……この手紙、もらっていい?」


 と、私とヘルグ兄様にペリル様の手紙の所有権を確認してきた。


「どーぞ」


 私は、珍しいものが見れたので満足だ。


「アズール、良かったな」


 ヘルグ兄様も、満足そうだ。


 アズ兄様は、幸せそうに手紙とバングルを胸に抱きしめていた。



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