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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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おかげ様で幸せです 


 チャコ姉、私に話をしながら、自分の考えに折り合いをつけているわね……


 彼女なりに、祖父母の残した道場を必死に守っていたつもりだったんだわ。


「うん、だからそれを見ていた叔父さんは、敢えて何も言わなかったんじゃないかな?」


 ——叔父さんは、見守っていてくれたのね


「経営するって簡単じゃないのよ?会計や経理もやらなきゃならないし。叔父さんにチャコ姉が給料払ってたの?」


 きっとそこまでは頭が回ってないだろうから、給料は払ってないのだろうな……


『生徒に教えていただけだったわ。私の方がお給料を貰ってた。叔父さんの奥さんが会計士だったし、全部丸投げしていたわ』


 ——やっぱりね?そうだと思ったわ。


『やだ……私ったら、やってる気になっていただけじゃない』


 んー、今知ったのか……


 もしチャコ姉があちらに戻ったとして、彼女ひとりで大丈夫なのかしら?


「チャコ姉と私は、本来なら一つ違いよね? チャコ姉は今21歳かな?」


 あんまり当時は思い出したくないけど……


「少なくとも、私は19歳で家を出たの。チャコ姉の世界の私はまだ20歳よ」


 その頃の私は……殺伐としていたわね。


「私が20〜21歳の時は、何度も種が私の元へ金の無心に来たわ。その度に居留守を使ったのを覚えてる」


 私はついうっかり、自虐的な笑みを浮かべてしまった。


「職場に現れた時、職場でもいいように利用されていていたから……嫌になって男に逃げたんだ。ま、結果男にも騙されたけどね?」


 ——あの頃は、落ちるところまで落ちたわ。


「チャコ姉が心配しているように、不動産を売り払っていたなら、あの男、私の所なんか来なかったんじゃないかな?」


 そうなら、どんなに良かったか……



『ティト、私が今戻ったら、あちらの世界の貴方に会えるわよね?』


 は?この娘、何言ってるの?


 私は、嫌悪感からゾワッと鳥肌が立った。


「チャコ姉、気持ちはありがたいけど、会いに行くのはやめておいて?私は26歳まで生きて、最後は比較的平穏だったわ」


 あの頃は、想像すら出来なかった……


「今は幸せだから、チャコ姉を好きになれるし、話を聞いても相談に乗れるわ。こちらで出会えて良かったと思ってる」


 チャコ姉には、本当に出会えて良かったわ。


 ——でもね?


「でもね、20歳の私は、チャコ姉が同情するくらいには悲惨だったの」


 必死に足掻いていたのよ……


「当時の私からすると、幸せに育って見える異母姉をどう思うかしら?」


 ——少し意地悪だったかもしれない。


「少しだけ考えてみてくれる?もしも逆なら会いたいと思う?」


 でも、それが現実だわ。


 私の過去に同情はいらないの。


 笑われた方がマシよ。


 

 ——バカにしないで



「間違えないでね?謝ったりもしないで。私にとっては過ぎた事なの」



 私が必死に生きてきた人生だわ。



「もし、この先私の記憶が変わったりしたら、私はチャコ姉の事を恨むかもしれない」



 ——後になって勝手な事はされたくない。



「あの頃の自分を、私はあなたには見られたくない。何で前にお墓の話をしたか分かる?」


 本当は、こんな事は口にしたくなかった。


「チャコ姉は、私の気持ちに気付いてなかったから誤魔化せると思ったんだよ」


 でも、伝えなければチャコ姉は気付けない。


「それを聞いても、まだ前世の私に、チャコ姉を知らない私に、会いたいと言える?」


 あの頃の私なら、チャコ姉を不快に思って、深く傷つけるわ……



『……ティト、色々教えてくれてありがとう。私、正直帰る意味が分からなくなったわ。こちらの世界に残る事も、真剣に考えるよ』


 チャコ姉……さすがに落ち込んでるわね。


 ——全く……仕方がないわね。


『あちらでは、ティトには絶対会わないけど、こっちのティトにはまた会いたいわ……その時は会ってくれる?』


 彼女の事、嫌いになれないのよね……


「本当にこっちに残るなら、またそのうちゆっくり話をしよう?」


 話ができるのは……私も嬉しいもの。


「チャコ姉と話したい事はたくさんあるよ?前世の愚痴も聞いてよね?あと、その時は頑張ったって褒めてね」


 叶うなら、いつでも会える、だからこの世界にいてほしいわ。


『こんな恥ずかしい私を、まだ姉と呼んでくれるの?そもそも数ヶ月しか違わないし、実際の魂の年齢だと、ティトの方が年上じゃない』


 それは……そうなのよね。


 でも……


「嫌よ? 私は姉に憧れていたんだから」


 私はずっと、姉がいると知っていた。


「学生の頃、父親に『お前には姉がいる。姉は母を亡くし口煩い祖父母といる。お前には両親がいるから幸せだと思え』と、言われたわ」


 本当、あの頃に会わなくて良かったわ。


「姉は大変で頑張ってるんだ、私も頑張らなきゃって考えてた。実際は違ったけど……」


 きっと、会ったら惨めになったし、甘えた考えのチャコ姉を嫌いになったと思うわ。


『私の考えってかなり甘いわね。自分ではしっかりしているつもりだったけど』


 それは……そうね?


『ティトの話を聞くと、ハリボテ過ぎるし、私の傷なんてちっぽけ過ぎて情けないわ』


 ——経験値の問題だし、仕方がないわ。


「そればかりは仕方がないんじゃない?子供に、生まれてくる環境は選べないわ。たまたま私に運がなかっただけよ」


 もう、私には終わった事なのよ。


「だから気にしないで。悩みだって比べるものじゃないし、人それぞれでしょう?」


 今世はかなり運がいいから、それでいいわ。



『ティト、大人だね』


 チャコ姉、感心してるけど、自分の事くらいはしっかりしなさいな。


「まあ、26歳まで生きたし?色々経験はしたわ。だから人よりもちょっと大人かも」


 ——おかげで上手く立ち回れるわ。


「でも、まともな育ち方しなかったから、今生き直せて本当に良かったんだよ」


 苦労を知った分、毎日が幸せよ?


 ふと、視線を感じたので横を見た。


「あ、ごめん、もう少し話をしたいけど、そろそろ連れが痺れを切らしてるから、通話切るね?」


 さっきから、両サイドの2人が、一言も話さずに、ずっとこちらを見ている。


 ——うわぁ……これ、面倒くさいわ


『ティト、本当にありがとう。ティトと話すとなんだかスッキリするわ』


 ま、役に立てたなら良かったかしら?


『助かりました。してもらってばかりだから、いつかお礼させてね?』


 私がチャコ姉に頼ることは……あるかしら?


「おおげさだよ?私が大変になったらチャコ姉も助けてね?じゃあまたね」


 通信を切ると、アズ兄様とヘルグ兄様が突き刺さるようや目でこちらを見ていた。

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