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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。  作者: 黒砂 無糖
学園生活

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魔族の国はブラックだ 

 ツァオバライ商会に行った日から、幾日か過ぎたけれど、私達に特別な変化はない。


 強いて言えば、王子とリリお姉様が以前に比べて仲良くなったので、毎日が平和だ。


「ティト様は、週末のパーティーには参加なさるのですよね?」


 授業の合間の休憩中に、ダリエが話しかけてきた。


 週末に、ユング王子とリリお姉様の婚約式があることは、貴族ならば誰でも知っている。


「ええ、光栄なことに、2人から参列しても良いと、お招き頂いたわ」


 2人とは仲良くなれたけど、正直、正式なパーティーとなると気が重い。


「ティト様のパートナーは、やはりアズール様なのですか?」


 ロアは、探るわけでもなく、素直にパートナーを尋ねてきた。


 婚約したことを知らせることもなく来たけど、隠すつもりはない。


「ええ、婚約式のパーティーには、アズール様と共に参列いたしますわ」


 ダリエとロアに伝えたつもりが——


「え?!」「うそよ!!」「嫌ぁ!!」


 どうも、私の声は他の人にも通ってしまったみたいだ。


 あちこちで叫び声が湧き上がる。


 聞こえなかった人も「なんだなんだ」と叫び声に興味を持ったので、あっという間にクラス全員に知れ渡ってしまった。


「あ……も、申し訳ありません!」


 ロアが青い顔をして、迂闊なことをしてしまったと慌てている。


「ロア、アズール様のことは隠してなどいないから、気にしなくてもいいわよ?」


 周りの耳目が煩わしいと感じながら、私はロアに声をかけた。


「で、ですが……隠してない?」


 ダリエとロアは、言葉の意味に気づいたのか、期待に目をキラキラさせながらこちらを見ている。


「私は先日、正式にアズール様と婚約いたしました。なので、問題ありませんわ」


 憶測でコソコソ言われるより、ハッキリさせたほうがアズ兄様にとってもいいわよね?


 ギャーーー!!


 私は敢えて声を張って発言したので、ダリエとロア以外のクラスの令嬢が一斉に叫び声を上げた。


 パニックになる前に教壇に先生が戻られたので、特別困ることはなかった。


「ティト、サロンに行くよ」


 捕食者の目をした令嬢達が授業後、私に狙いを定めていた時、アズ兄様が迎えに来た。


「アズール様、ちょうど良かったです」


 私の背中には今、ビシビシと視線が突き刺さっている。


 皆様、心の声がダダ漏れで、授業中ずっと——


(何で?!)(嫌よ)(嘘よ)(ダメよ)

(騙された!)(ずるいわ)(いいな)


 能力を閉じていたのに、思いが強かったのか、無限に聞こえてきてウンザリだ。


「ティト、どうかしたのか? 顔色が……」


 心配したアズ兄様が私の顔に触れたら——


 きゃー!! 嫌ぁー!! もうやめてぇ!!


 盛大な叫び声が教室内にこだました。


「アズール様、参りましょう」


 あまりの煩さに、私はアズ兄様を引きずるようにして教室から離れた。


「ティト、さっきの叫び声は何だったの?」


 アズ兄様は令嬢の発狂ぶりに引いてしまったようで、恐る恐る尋ねてくる。


「週末のパートナーの話から、ダリエとロアに婚約したことを伝えたら、聞き耳立てていた方達が、ああなりました」


 2人での会話は、基本的に防音にしているので、婚約の話をしても、廊下ですれ違う令嬢達に被害はない。


「なんだ、まだ言ってなかったのか?」


 アズ兄様は納得しつつ、少し不服そうだ。


「聞かれない限り、こちらから情報を流してオモチャにされる気はありませんわ」


 令嬢にとって、婚約の話など大好物の話題だ。


「それもそうか。俺は翌日には聞かれたけど……騒ぎにはならなかったな」


 アズ兄様は「なんでだ?」と首を傾げた。


「それは男女の違いと、アズ兄様の立場だからですわ。下手なこと言って印象下がったら、貴族は困るでしょう?」


 いずれ宰相になるのだし……


「確かに、俺は、絶対忘れないしな」


 能力的にも、敵に回すと怖い人よね。


 話をしながらサロンに着いたけど、まだ皆来ていなかった。


 アズ兄様と話をしながら待っていたら——


 バングルがチカチカッと光った。


「ティト、チャコさんから通信きてるよ」


 アズ兄様に促され、部屋の隅に行き、防音魔法をかける。


「チャコ姉、何かありましたか?」


 私のバングルは、国外にいるチャコ姉としか使わないので、光ったらチャコだ。


『久しぶり。実は賢者ティトに調べて欲しいことがあるの』


 防音魔法を使っていて良かった。


 チャコ姉は迂闊すぎる。


 周りに他人がいたらどうするつもりなの。


 私はやれやれと思いながら、とりあえずチャコ姉の話を聞いた。


『捕まえて保護した魔族から直接聞いたんだけど、幹部は24時間年中無休らしいの。

 魔族は魔王の支配下だから、拒否できないらしいわ。魔王のわがままで、今は眠ることすら難しいみたい』


 社畜だわ……めっちゃくちゃ可哀想。


「魔王軍って、そんなに過酷なの?」


 なんでまたそんなことに?


『ティトも私と同じことを聞くのね?

 魔族と魔物は、魔王の支配からは逃げられないんだって。

 だから、辞めたくても辞められないのよ。

 人格も否定されて……もう逃げたいって言って泣いていたわ』


 それは……泣くわ。


「それ、軍として成り立ってるの?」


 人間の敵とはいえ、あまりにも悲惨だ。


「それが、今の魔王は、かなり弱いはずなのに逆らえないから、なんとか成り立っているの。魔族を支配下に置く物でもあるんじゃないかって話よ」


 そんなものがあるなら、破壊一択よね……


 「それは、使われる側はかなり辛いわね」


 私は見た事の無い魔族に少し同情してしまう。


『実際ボロボロよ。魔王は根性論を翳すし、できないことは全て部下のせい。

 幹部も疲弊してどんどん倒れて……無理難題を熟せなければ減給。

 食事すら取れなかったみたい』


 チャコ姉曰く、魔族の国の魔王は最低だけど、殺すのは忍びない。


 命を取らず、魔王の支配から外れることができないか、そして可能なら、魔族を人間に戻す方法はあるのかも調べてくれという話だ。


 ゴルドファブレンは勇者資料館があるし、

 調べることは可能よね。


 討伐は任せちゃってるし、協力しよう。


「分かった。話を聞く限り今の魔王、最悪ね。かつての職場を思い出しちゃった。気分が悪くなったわよ。

 物凄く腹立つし、すぐに調べてみる。じゃあ、チャコ姉、また連絡するね」


 通信を切り、振り返ると、既に皆揃っていた。


「ごめんなさい! お待たせいたしました」


 私は急いで席につき、何から調べようかと考えながら、昼食をいただいた。

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