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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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私の婚約よね?


「勇者資料館に行った日に、ティトのご両親から確認されたろ?あの日の夜、シュピネル卿から父に連絡があったんだ」


 ヘルグ兄様の質問に対して、アズ兄様は淡々と説明をしていく。


 お父様は、私に話をした後すぐに、グランディエラ家に連絡をしたようだ。


「ティトとの婚約は、週末には纏まる。登下校を共にするほど仲が良いならと、親が先走ってシュピネル家に打診していたからね」


 アズ兄様が、ちょっと困った顔をしている。


 どうやら、親が勝手に打診したようね?


「なんだ、アズールから親にお願いしたんじゃないのか?」


 ヘルグ兄様は、意外だと目を見開いた。


 私も、アズ兄様が言い出したと思ったわ……


「違うよ、俺は婚約するなら絶対ティトが良いけど、できるだけしっかり、関係を作ってから決めたかったんだ。ただ……」


 アズ兄様も、私と同じように考えたのかもしれないわね?


「ただ?何があるのか」


 ヘルグ兄様は、アズ兄様の歯切れの悪さに、気に留めている。


「親に、カフェでのことを報告した時に……『お前は早急に婚約した方がいい。既に打診もした』って言われたんだよ」


 アズ兄様は、力なく笑った。


「なんか、両家ともずいぶん急いでないか?」


 ヘルグ兄様は、私も気になっていることをアズ兄様に尋ねていた。


「まあ、カフェでのこともあったし、普段から令嬢に囲まれて女性不審だったから……両親は、かなり気にしていたみたいなんだ」


 ——次期当主だし、仕方がないわよね。

 

「俺にとってティトは特別だと知ってからは、俺の気が変わらないうちに、さっさと決めたかったみたいだよ」


 アズ兄様のご両親は、即断即決するくらいには、相当気を揉んでいたようね……


「昨日のことが引き金だったのか……まあ、アズールは、昔から令嬢相手で碌な目に会ってなかったし、ご両親も相当心配していたんだな」


 ヘルグ兄様は納得していたけれど…‥


 ——やっぱり、なんとなく腑に落ちないわ。


 先程から、私の婚約の話をしているけど……


 どうして私以外の人達だけで、話が進んでいくのかしら?


 ——貴族の結婚は、家同士の契約


 でも……


 もう少し嫁ぐ側の、私の意見を聞いてくれても良いのではないかしら?



「婚約するのは、私とアズ兄様なのに、親が勝手に話を進めるのは……どうかと思うわ」


 私は、なんだかモヤモヤしていたので、つい本音を言ってしまった。


「なんだ?ティトは、婚約に反対なのか?」


 ヘルグ兄様はびっくりしているし、アズ兄様はショックを受けている。


「だって、私の場合、まるで決定事項のように言われたわよ? 週末のことも、何も聞かされていなかったわ」


 アズ兄様は、ちゃんと知っていたのに……


「……ティトは……俺が相手だと、嫌?」


 アズ兄様が、恐る恐る確認してくる。


「全然嫌じゃないわ。そもそもヘルグ兄様を除くと、他に選択肢に上がった相手はユング王子だけよ?私、リリお姉様とは争いたくないわ」


 アズ兄様も、ヘルグ兄様も、私の婚約に選択肢が少ないことは、わかっていたみたいだ。


 2人そろって、同情の目を向けてきた。


「今は、ユングよりはまだマシってとこか……俺、もう少し頑張らなきゃな」


 アズ兄様は、苦笑いをしていた。


「ティト、お前せめて言い方を……まあ、でも、ティトだしな……」


 ヘルグ兄様は、がっくり項垂れて、アズ兄様の肩をぽんと叩いた。


「なによ、婚約するなら、アズ兄様が一番マシだってことは、本当でしょう?」


 なんで2人とも、私をそんなに残念な子を見るような目で見るのよ……


「ティトが嫌じゃないなら、それでいいよ。どんな形であれ、ティトの一番になれたんだ。今はそれで満足するよ」


 アズ兄様は、ひとりで納得している。


「ご両親が、婚約のことをティトに細かく言わなかったのは、すでにアズールと仲が良いのを知っていたからだろう?」


 それは……そうだけど……


「ティトの気持ちを、蔑ろにされたわけじゃないと思うよ」


 ヘルグ兄様にフォローされ、ちょっと気持ちが落ち着いた。


「私の婚約は、アズ兄様なら大丈夫ですわ……アズ兄様に文句はないのです。何も知らされなかったのが、嫌なだけですわ」


 自分のことは、自分で決めたかっただけよ。


「ご両親は、貴族の結婚をまだ理解していないと考えて、年齢的にもティトに決断させるには早いと考えたんじゃないか?」


 アズ兄様にも、ヘルグ兄様と似たようなことを言われ、ハタと気付いた。


「……よく考えてみたら、私、まだ11歳になったばかりだったわ」


 こんな子供に、家柄が関わる人生の決断は任せられないのは当然だわ……


「とりあえず、2人が合意してるんなら、それで良くないか?俺の勘だと、2人はそのままうまくいくよ」


 ヘルグ兄様にそう言われたら、納得するしかないじゃない。


「うまくいくならいいわ。それより、カフェで会った令嬢は、どうなったのかしら?」


 今朝はお見かけしなかったし、気になっていたのよね。


「彼女は、自宅謹慎してるんじゃないかな?思い込みが激しそうだし、逆恨みされても困るから、今回は大事にはしなかったよ」


 ——大事にならなくて良かったわ。


「自宅謹慎だけでも、傲慢で我儘に生きてきた令嬢には辛いだろうな」


 アズ兄様が納得しているならそれでいい。


「そうだな、プライドの高い令嬢には、温情ある対応でも、厳しいと感じるだろうから、念のため彼女には警戒した方がいいかな?」


 ヘルグ兄様に、警戒を促されだけど、


「学年が違うし、大丈夫じゃないかしら?」


 たかが恋愛脳な令嬢くらい、どうにでもなるのでは?と、私は考えていたら……


「いや、あのタイプは、プライドが傷つけられると、罪を認めたくなくて、他害に走るから、厄介になりやすいんだ……」


 アズ兄様は、厄介な令嬢対応には慣れているのか、先を思ってうんざりしていた。


「ティトが逆恨みされるか、よくわからないイチャモンで、俺に責任が来る可能性もある……だから、婚約を急ぐことになったんだよ」


 アズ兄様のご両親は、カフェでの行動を知り『早急に希望を打ち砕くべきだ』ということになったらしい。



「なんか、面倒ね?」


 私は素直に、面倒くさいと思った。


「すごく……煩わしいよ」


 アズ兄様は、目に見えて疲れ果てていた。


「2人が婚約してしまえば、あの令嬢がいくら騒いだところで、誰も耳を傾けないだろうね」


 正式な肩書きがなければ、余計な噂が広がりやすい。


 ——だからこそ、先手を打ったのね。


 令嬢の迂闊な行動で、私の人生を親が勝手に決めて進めることになったし……


 ——まったく、迷惑な話だわ。



「我が家は訳あって、とりあえず正式に決まるまでは従者にも秘密なんです。ソフィアだけには伝えましたが、口止めしてありますわ」


 シュト兄様に、バレなければいい。


「あー、ティトのお兄様か……バレたら絶対に邪魔するよなぁ……」


 ヘルグ兄様はかつての犠牲者だからか、シュト兄様の厄介さをよくわかっている。


「ま、今週末のことだから、大丈夫だろう」


 アズ兄様は、気楽に考えているが……


「アズ兄様、シュト兄様は、いろいろ、かなりヤバいので、気をつけてくださいね?何があったら、すぐに私に教えてください」


 私は、いずれ会うことになるシュト兄様に気をつけるよう、アズ兄様に忠告した。

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