パーティーとパートナー
その日の午前中の教室では、ユング王子とリリ様の話題で持ちきりだった。
「ユング王子とリリ姫様は、本当にお似合いですわね。まるで絵画のようですわ」
ダリエは、うっとりしながら朝の2人がいかにお似合いかを語っている。
あの2人は、見た目はどちらも素晴らしく良いので、ダリエの言葉に納得はできる。
「ユング王子は優秀ですし、リリ姫様も淑女の鏡ですわ。ゴルドファブレンのこれからの将来は安泰ですわね」
ロアの言葉を聞き、私はちょっと笑いそうになってしまった。
——知らないって幸せかもしれないわ
私には2人が、恋愛空回りドタバタコンビのイメージが強くて……笑いしか起きない。
まあ、幸せならそれでいいわよね?
私は内心ニヤニヤしながら、午前の授業の終わると、ダリエとロアの話を聞いていた。
「ティト、迎えに来たよ」
呼ばれて振り返ると、教室の入り口にアズ兄様が迎えに来てくれていた。
「ダリエ、ロア、また後でお話聞かせてくださいませ」
私が席を立つと、ダリエとロアが
「ティト様とグランディエラ様の話も、いつか楽しみにしておりますわ」
と、にこやかに見送られたけど、とりあえずよくわからないふりをしておいた。
「アズール様、お待たせしました」
アズ兄様の元へ行くと、
「アズ兄様に慣れてるから、その呼び方は却って恥ずかしいな」
アズ兄様は私の耳に顔を寄せて、小さな声で耳打ちしてきた。
彼の行動に周りがザワッつき、一瞬戸惑ったけど、アズ兄様の牽制なのだろうと思い至る。
「サロンに参りましょうか」
私は平然としたまま、アズ兄様と談話しながらサロンに向かう。
あまりにも私が慣れた感じに見えたのか、普段からアズ兄様と私の距離が近いようだと、後から周りに噂されていたようだ。
教室に戻った後、ダリエから聞かされるまで私は知らなかった……
「おー、やっと来たか。ユング王子は、リリ様を迎えに行ったよ」
サロンに入ると、ヘルグ兄様が、なぜか従僕に混ざり準備をしていた。
「ヘルグ兄様、なぜ準備を?」
思わず尋ねたら、
「ん?暇だったから。俺だけやること無いし」
当然のように手伝っている。
ヘルグ兄様は普段から、自分のことは自分でやりたい人だから、仕方がないのだろう。
「とりあえず、座って待つか?」
アズ兄様がそう言うと、
「ユング王子は、今来るから、そのままで」
ヘルグ兄様はそう言って、入り口に近付き扉を開けると、
「ヘルグラウ、お前相変わらずすごいな……」
アズ兄様は感心して、思わず呟いた。
入り口には、ユング王子とリリお姉様が、ちょうど部屋に入ってこようと立っていた。
皆席に着き、食前の祈りを捧げ食べ始める。
「食後に、皆に伝えたいことがある」
ユング王子がそう言ったので、皆、黙って黙々と食事を進める。
——急いで食べなければ
私はモキュモキュと頑張って咀嚼をしたが、食べる速度は遅い。
私がメインを食べ終わる頃には、皆デザートまで食べ終わっていた。
「ティトは、デザートを食べながら話を聞いてくれたら良い。大事な話ではあるが、楽にしてくれて構わない」
まるで今までと別人のようなユング王子に、私は思わずポカンとしてしまった。
「この度、僕とリリは無事、正式に婚約者となった。少し慌ただしくなるが、月末に身内で婚約式を行う。お前たちは参列してほしい」
——うそ、身内だけなのに、私も行くの?
「年度末には、貴賓客を招いて正式に婚約パーティーをするから、そのつもりで」
正式なパーティーなら、正式なパートナーが必須よね?
子供は関係ない、なんてことないわよね?
パーティーには、エスコート相手が必要だ。
「あの、ユング王子、私も婚約式に伺うのでしょうか?」
私は少しの希望を持って、ユング王子に尋ねてみた。
「ティト、お前は絶対だ。なんたって、我々の恋のキューピッドだからな!」
王子は溌剌と答え、リリお姉様も大きく頷いている。
キューピットって……こちらでも言うのね?
「はい……分かりました」
おめでたい話だけど、パーティー前はお母様の淑女教育のチェックが厳しくなるのが嫌だ。
私は少し、うんざりしていたら、
「ティトは、アズールと来るのでしょう?ヘルグラウはどうなさるの?」
リリお姉様が、ヘルグ兄様にパートナーのことを尋ねた。
「俺はユングの護衛だ。その日も護衛だから、パートナーは要らないかな」
ヘルグ兄様はいい笑顔をした。
ずるいな……
「ティト、婚約式は気が乗らないのか?」
アズ兄様は、私の気持ちに気付き話しかけてきた。
「……2人を祝う気持ちはあるのですが、参列するとなると、お母様の淑女教育がいっそう厳しくなるのです」
私がそう言うと、
「ラヴェンデル様は、淑女の中の淑女と言われるお方ですものね……」
リリお姉様は、お母様のことを知っているのか、言葉にキレがない。
「確かに、ティトの母君は、なんて言うか……笑顔の圧があるよなぁ……」
ユング王子も思うところがあるのか、遠い目をしている。
——お母様!2人に何をしたのですか?
「まあ、大変かもしれないけど、俺はティトと正式な場に一緒に行けるなら嬉しいかな」
アズ兄様が優しく笑いかけてくれた。
「頑張ります……」
私は、決定事項は仕方がないと諦めて、考えることをやめることにした。
「なんだ?アズールはティトと婚約が決まったのか?」
ユング王子はキラキラしながら、アズ兄様に尋ねてくる。
リリお姉様がハッとしてこちらを見た。
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