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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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噂話と内緒話 


 学園に到着して、最初にヘルグ兄様が馬車を降り、引き続きアズ兄様のエスコートで、私が馬車を降りると……


「ほら、また3人で……」

「どっちが本命なのかしら……」

「あら、でもあの幼さだし、ねぇ?」

「そうですわ。今だけではないかしら?」


 アズ兄様の取り巻き達が、朝からヒソヒソ、わざとこちらに聞こえる声で話をしている。


 ——毎朝、ご苦労様です


 慣れとは怖いもので、毎朝のヒソヒソ話は、すでに私には一切ダメージがない。


「そういえば、あの令嬢がいませんわ? アズ兄様、何かご存じですか?」


 先日、カフェでやらかしてしまった令嬢は、集団の中に見当たらない。


「ん?ああ、彼女の親の耳に入っただろうから、自宅謹慎でもしてるのではないか?」


 アズ兄様が、取り巻きをチラッと見たら


「キャー!!アズール様あっ!」

「アズール様、おはようございます!」

「私を見たわ!アズール様今日も素敵♡」

「何よ、私を見てくださったのよ!」


 彼女達は、令嬢にはあるまじきギャーギャーと、醜い争いを繰り広げていた。


「アレを見て、彼女達を選びたくなる子息はいるのでしょうか?」


 私は思わず呆れてしまい、アズ兄様とヘルグ兄様を見た。


「ある意味素直なんじゃないかな? ツンとすましているより、感情が分かりやすいから、ある意味扱いやすいと思うよ」


 ヘルグ兄様、着眼点が違いすぎます。


「俺は……無理だな。そろそろ、ユングが来るから、このまま迎えようか」


 アズ兄様は、にっこりバッサリ、彼女達は無理だと言い切った。


 私達が校門の横に待機しようとしたら、スッと王族の馬車が横付けした。


「あ、丁度来たようですわね」


 ヘルグ兄様とアズ兄様は、慣れた様子で迎えるために馬車の入り口に並んだので、私も同じように並んだ。


 馬車の扉が開くと、ユング王子が颯爽と降りてきた。


「「おはようございます」」


 ヘルグ兄様とアズ兄様は、声を揃えて、同じタイミングで挨拶をしている。


「おはようございます」


 私も、ワンテンポ遅れてユング王子に挨拶をした。


「おはよう、今日も揃っているな」


 ユング王子は爽やかな笑顔でそう言うと、馬車を振り返り、エスコートの姿勢を取った。


 周りがザワザワとざわめき、誰が降りてくるのか、固唾を飲んでいるのがわかる。


 ——リリお姉様だわ。


 ユング王子にエスコートされて、恥ずかしそうに降りてきたのは、リリお姉様だった。


「「リリ様、おはようございます」」


 ヘルグ兄様とアズ兄様は、当然のように、リリお姉様にも挨拶をした。


「リリお姉様!おはようございます」


 私は、嬉しくて少し気持ちが高揚した。



「ついに王子は、ナトゥーアの姫をお選びになられたのか!」

「お前、知っていたか?」

「いや、知らなかった」

「何?決まったのか?」

「一緒に来たのなら、そうだろう?」


 子息達は、今後の貴族の勢力図に関わるからか、王子が誰を選んだのかに興味を持っているようだ。



「王子と来たのは、ナトゥーアの姫様よ!」

「あら、シュピネル家じゃなかったのね」

「グランディエラ家がシュピネル家としたら、フルオリート家はどうなるの?」

「次は、フェルトシュパート家狙い?」


 取り巻き以外の令嬢達は、私達の今後の婚姻関係がどうなっていくのか興味津々だ。


「それじゃあ、行こうか」


 ユング王子は、外野の声には見向きもせず、リリお姉様を幸せそうに見つめている。


 ——リリお姉様、良かったですね


 リリお姉様は、頬を染めて、先日とは違い、びっくりするほどしおらしくなってしまった。


(上手くいったみたいですね)


 私はアズ兄様とヘルグ兄様に念話を繋いだ。


(まさか、リリ様がこんなに大人しいとは予想外だよ……なあ、アズール)


(ああ、ユングもまともになっているし、あの毎日はなんだったのか……)


 ヘルグ兄様もアズ兄様も、ユング王子をチラッと見て、何事もない真顔のまま進む。


(ユング王子もリリお姉様も、幸せそうです。恋する気持ちがなせる業ですね)


 ふたりの心境を聞きながら、私はニヤニヤ笑わないように、下を向いてやり過ごした。


 遠巻きにこちらを観察している人達の視線を感じながら、私はヘルグ兄様に


(アズ兄様が無理そうだからと、これからはヘルグ兄様が狙われるみたいですね)


 私は意地悪く伝えてみたが、


(ティト、それは言わないでくれないかな? 今は何も考えたくもない)


 ヘルグ兄様は、眉間にしわを寄せている。


(おや? ヘルグ、彼女達のような令嬢は、素直でいいのではないのか)


 アズ兄様は、ヘルグ兄様を煽るように言葉を重ねてきた。


(アズール、ティト、二人はいいよな……全く、性格悪いぞ)


 ヘルグ兄様は、うんざりしながらこちらをジロッと睨んだ。


 私と同様に、アズ兄様は笑いを堪えるためか、ことさら真面目な顔をしているが、


 アズ兄様のエスコートの腕が震えている。


(アズ兄様、笑いを堪えている?)


 私は、アズ兄様をつつきたい衝動に駆られたけれど……


(アズ兄様をつつきたいわ)


 私の思考回路は2人にダダ漏れだったため、


(ティト、さすがにアズールをつつくのは学園ではやめてやれよ)


 と、ヘルグ兄様に止められ、


(ティトの思考回路のおかげで、笑いはおさまりましたよ)


 アズ兄様からはドヤ顔をされてしまった。


(もう、考えが丸わかりだと、イタズラできないじゃない)


 ぷぅっとふくれたくなってしまった私に、


((学園でふくれるのは禁止だよ))


 ふくれる前に、2人からあっさり止められてしまった。


 そうこうするうちに、教室までたどり着き、


「ティト、お昼は皆でサロンに向かう。迎えが来るまで、教室で待っているように」


 ユング王子が、全力でお兄さん風を吹かせてきたので、


「はい。お待ちいたしております」


 私には、そう答えることしかできなかった。

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