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目覚めと認識

見つけてくれてありがとうございます。

更新は不定期になります。出来る時に頑張ります

「……だ!……たのむ!」


「わ……だ……です!!」


 ドタバタと動き回っている音と、慌てている空気感が伝わってくる。


 誰かが大きな声で指示している様だ。話し声が聞こえるが、音は遠くに思える。


 段々と意識がハッキリしてきた。でもまだ目が開かない。


 パシャーンと薄いグラスを破る音が聞こえ、やっと目を開けることが出来た。


 すると、周りの音は一度に入ってきた。


「良かった!ああぁ!うわぁーん」

 妹の、フリーダーは、泣き出して私の足元にダイブした。


「ふざけんな!心配かけすぎた!バーカ!」

 走り去ったのは、弟のシャルラックだ。口は悪いけど彼も泣いていた。


 父ヴァインロートと母ラヴェンデルは無言。

絶対に離すもんかと、ガッチリ両サイドから抱きつき涙を流している。


 ——首から涙が入ってきて冷たいわ


 どうしたものかと途方に暮れていると


「父様母様、ティトが潰れてしまいますよ?目覚めたばかりです。混乱していますよ?」

 穏やかな口調なのは兄のシュヴェルト。


「おはよう、ティト。随分お寝坊さんだったね?もう体調は大丈夫かい?」

 お兄様は優しく微笑む。至って冷静だ。


 お父様は、お兄様の冷静さにちょっと気まずくなったのか、お母様と顔を見合わせ、私の顔を覗き、お兄様を見た。


 そして、ため息を吐いて離れていった。


 お母様と妹は、まだしがみついている。


「んんっ、そうだね、ティト。身体の具合は大丈夫かい?後で医官が来るから、元気なら着替えを済ませた後に見てもらうといい」


 お父様は、気まずさを咳払いで誤魔化し、嬉しそうににっこり笑っていた。


——その目元には涙が滲んでいた


 時を止めていたせいか、肉体的に不都合は何も無い。違和感も全く無かったので、着替えを済ませて応接室に向かった。


 部屋付きの侍女も着替えを手伝う際、ポロポロと涙を流しながらテキパキ仕上げていく。


「ヒクッ、申し訳ありません。ヒクッ、嬉しくてヒクッ、涙が止まらずヒクッ」

 泣きながら髪も整えている。


 いつも世話して貰って、手間を掛けていたのに、こんなに涙を流すほど私の目覚めを喜んでくれたなんて。


(…….…….…….……)


 ——ん?なんだろう?


 布団を押し付けて喋る様な、くぐもった声が聞こえる。 


 ——これは私の能力だわ!


 意識を向けると、声は明瞭になる。


(良かった、本当によかった。毎日何の変化もなくて、もう起きてこないかと思った。あぁ神様!又お嬢様のお世話をさせていただきありがとうございます!)


 ——びっくりだ。


 こんなに、私に対して気持ちを持ちながら接していてくれたなんて、知らなかった。


 ——こちらこそありがとう。


 お礼を伝えたいけど大丈夫かな?


 丁度髪がまとめ終わった様だ。


「……ありがとう、ソフィア」

 涙の止まったソフィアは、パチリと目を瞬き


「とんでもございません!!お嬢様のお世話は私のやりがいです。これからもずっとお側におりますので何なりとお申し付けくださいぃぃ」

 と一息で言うと、またボロボロ泣き出してしまった。


「あー、泣かないでソフィア、もう大丈夫ですから。これからもお願いしますね?目が腫れてしまうわ。冷やしていらっしゃい」


 鏡台にあるハンカチを渡すと、言葉が出なくなってしまったのか、何度も頭を下げて


「……申し訳ありません、一旦失礼します」

 と下がっていった。


 ちなみにソフィアの心の声は、ひたすら私を褒め称えていた。

 まるで呪文の様だったので、必死に聞かなかった事にした。



 私の能力は『以心伝心』



 言葉が無くても、相手の心の声が聞こえる。


 意識を向けるとラジオの周波数が合う様に、相手の心の声がクリアに聞こえる。


 ——どのくらいの範囲で聞こえるのかしら?


 ちょっと試してみようと屋敷を意識したら


((((((====!======‼︎))))))


「うわっ!」

 煩いから意識的に遮断。

 

 余りの音にドキドキした。

 

 大騒ぎなのは当然ね、ソフィアの大泣きを見たら、屋敷に勤める人の心が、ガヤガヤするのも仕方がないな。


——素直に嬉しいわ。


 とりあえず応接室に向かおうか?と、考えていたら、


(あぁ、やっぱり心配だわ!着替えをすると言うから下がったけど、もう一度顔を見なきゃ落ち着かないわ!)


 ——お母様だわ。


 余程強い気持ちなのか、意識せずとも聞こえてきた。


 何だかくすぐったい。


 部屋に入ってくる前に、自ら部屋のドアを開けて、びっくりしているお母様に飛びつき、思い切り抱きしめた。


「まあ!本当に元気になったのね?よかったわ」

 お母様は、私をギュッギュッっと抱きしめ返してくれた。そして耳元で


「扉を開けて勢いよく飛び付くのは淑女のする事ではありませんが、今日は許します」


 ——流石ですわ、お母様。


 お母様はいつだってお母様だわ。

 

 一瞬説教か?と身が竦んだが、お母様の心の声が喜びでいっぱいなので、涙が溢れてきた。


「あら?どこか辛い?苦しい?」

(やっぱりまだつらいのかしら?大丈夫かしら?)

 酷く心配して、私をさすっている。


「お母様、大丈夫ですわ。お母様に抱きしめて貰って安心したら涙が出ちゃっただけですの」

 お母様は、ハンカチで優しく涙を拭いてくれている。


「そう、ティトが1番不安よね?目覚めてくれてありがとう。お父様がソワソワしながら待っているわ。一緒に応接室まで行きましょうか」

(旦那様、ティトに対して愛情が暴走しそうね、後の3人も喋り倒しそうだし、私が防波堤になってあげなきゃだわ)


「……お母様、ありがとうございます」


 お母様、私の為とはいえ、家族に会うのに握り拳で気合いを入れるのは……淑女として違うと思います。

人の心、知りたいですか?

教えて下さいね

ブックマークと反応ありがとうございます!

お気軽にコメントしてくれたら喜びます。

これからも頑張ります!



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