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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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軽量化した気持ち


 私はソフィアに、アズ兄様ヘルグ兄様、両親にすら話さなかった、心の内まで全て話した。


 今日、勇者資料館で勇者に出会ったこと、

 私が勇者パーティーの賢者であること、


 ——転生者で能力が2つあること。


「……あと、いろいろ話した結果チャコ姉が、前世の異母姉だと知ったのよね」


 偶然って凄いわよね。


「こちらの世界では、異母兄弟や姉妹なんて当たり前のことだけど、前世は違ったの……昔はちょっと複雑な気持ちだったのよ」


 私は、合間を入れることなく、ソフィアに向かって一気に話をした。


「昔は、ということは、今は違うのですか?」


 話を聞くために、向かいのソファーに座っていたソフィアは、私に静かに尋ねてきた。


「今は違うわ。会えてよかったし。でも、生きているうちに会いに行けばよかったかなって、ちょっと思っちゃった……」


 後悔まではいかないけど、少し残念かな。


 前世は姉妹でも、今は血のつながりもない

 ただの他人なんだよね……


 彼女に何かあっても、今後かかわることは

 難しいだろうな。


「今後、その方にお会いになるつもりはないのですか?」


 ソフィアは、意思を確認するようにまっすぐ私の目を見ている。


「そうね……もう一度くらいゆっくり会えればいいけど。魔王討伐後に、元の世界に帰ってしまうなら……もう会えないわね」


 残ってほしいとは言ったけど、私に彼女を留めるだけの力はないの。


 ——彼女には帰る世界がある。


 でも、特殊部隊の皆さんとの関係次第かな?


「ティトお嬢様、もし会いに行きたいのであれば、旦那様に相談しましょう。きっと、お嬢様の望みに応えてくれます」


(絶対、どんな手を使ってもティトお嬢様の望みは叶えてみせますわ)


 ソフィアは、そう言ってにこりと笑った。


「……ありがとうソフィア。でも、今はちょっと心が迷っているから、このままでいいわ」


 私が笑顔を向けると、反転するかのように、ソフィアはスッと真顔になった。


「お嬢様、周りに迷惑がかかるからとか、相手に不都合だから、などという理由でお嬢様のお気持ちを蔑ろにしてはなりませんよ」


 ——珍しい。


 ソフィアに怒られてしまったわ


「せっかく出会えたのですから、そのこと自体を大事にしてくださいね」


 専属侍女というのは、こんなにも私のことを理解しているものかしら……?


 ソフィアだからかな?と思ったら、なんだか嬉しくなってしまった。


「ソフィアありがとう。気持ちがまとまったら、協力してね?」


 私は、スッキリした気持ちでソフィアに笑いかけた。


「さあ、お嬢様、明日は学園です。そろそろ就寝の支度をいたしましょう。ご入浴の準備をさせて頂いても、よろしいですか?」


 ソフィアは私が頷くと、音もなく席を立ち、部屋の奥にある浴室に消えていった。


 その後、ソフィアによって丁寧に磨かれ、

 ベッドに入ると、


「お嬢様、ゆっくりとお休みくださいませ。くれぐれも、今日の出来事を思い悩んで、夜更かしなどいたしませんように」


 やだ、行動がバレてるわ。


「……安眠の魔法をおかけしますね」


 ソフィアは、私に安眠の魔法をかけて部屋を退出した。


 ソフィアの魔法のおかげなのか、私は一瞬で夢の中だった……



 ***



「ここは……?」


 私はどうやら、自分の頭の中に来たみたいだ


「この空間って、相変わらず2つの箪笥が並んで置かれているのね」


 片方は新しいけど、もう一方は改めて見るとなんていうか、あちこち傷だらけだ。


「きっとここに来たということは、チャコ姉と会ったことで、何かの記憶を修復できるってことだよね……」


 私は、壊れている記憶の塊を見渡す。


「どれを直せばいいのかしら?」


 私は一番近くにあった、ボロボロになっている記憶の書籍を持ち上げようとした。


「え……重い」


 さほど大きなものではないのに、その本は持ち上げられないほど、えらく重たい。


「きっとこれは、まだ早いってことかしら?」


 私はあきらめて、また周りにある他の本を見まわした。


 すると、なんとなく1冊の書籍が存在感を放っているように思えた。


「きっとこれね?」


 私が本を拾うと、案の定、軽く持ち上げることができた。


「えっと、どうやるんだっけ?」


 以前も修復したはずなのに、やり方を忘れている……


「あの時は、記憶が一斉に入ってきた後だったから、いろいろ覚えていないわ……」


 とりあえず、疲れるから座りたいなと思っていたら、目の前に机と椅子が出てきた。


「あ、そうだった。ここでは、考えたら出てくるんだったわね」


 私は椅子に座り、卓上に記憶の本を置いた。


「直すのに必要な物は……」


 そう口に出すと、手元にリペアキットとクロスが出てきた。


「そうそう、これだったわ」


 私は、リペアキットを手にしたまま、書籍を手元に引き寄せた。


 すると、勝手にページがペラペラと捲れて、記憶が勝手に流れ込んできた。


「あ、この記憶……」


 それは、かつて母がよく私に向かって、話をしていた時の記憶だった。



 ***



「美茶は本来なら、由緒正しい弓の道場の孫だったのよ。お母さん、お父さんにいい様に騙されちゃったけどね」


 あ、この記憶は……


「それにあんたには、ひとつ上のお姉さんがいるのよ」


 私には異母姉がいると、母から聞いてショックを受けていたときのものだわ。


 でも、何度も呪詛のように聞かされるうちに「また言ってる」としか思わなくなったな。


「お母さんって、酔っては同じ話を何度もループするように繰り返していたわよね……」


 ——いつだって悲劇のヒロインだったわ。


 時間が進むごとに、母の愛は恨みに変わり、最終的には、乾いたものになっていたのだと、記憶を見て、今知ったわ。


「お母さんは、最初はただ悲しかったみたいね。あんな人でも最初は愛があったのね」


 なんだか意外だったわ。


「お姉さんから父親を奪っていたんだと思っていたけど、実際にチャコ姉に会って、あんな父親はいらなかったと知れて良かったわ」


 ——おかげで胸の支えが取れたわ


 お母さんも、お父さんのことなんか忘れて、前を向けば良かったんだけどな……


 そう思った時、さっき持ち上げられなかった重たい記憶の存在を感じた。


 きっと、あれはあの記憶だろうな……


 ——今の私でも、あれの修復は無理だわ。


 私は手元の記憶が修復されているのを確認して、美茶の箪笥に丁寧にしまった。


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