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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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能力は『暗躍』


 私は自室に戻ってから、ソフィアに報告をすることにした。


「ソフィア、私アズ兄様と婚約する事になるわ」


 ソフィアは、お父様とお話ししている間は、部屋の外に出ていた。


 婚約の話を、聞いてはいなかったので、一番に報告することにした。


「まあ!おめでとうございます。グランディエラ家との婚約だなんて、素晴らしいではありませんか!」


(さすがお嬢様ですわ。アズール様とお並びになった姿は、これ以上ないほどお似合いでしたもの!)


 ソフィアは、お茶の準備をしながら話をしているが、毎度ながらに心が貫通している。


 本人は気にしていないようなので、笑ってやり過ごすことにした。


「そうね、でもまだ決まったわけではないからここだけの話にしてね」


 私がそう釘を刺すと、ソフィアは私の前に、丁寧な所作で温かいお茶を差し出した。


「そうですね、どこからシュヴェルト様の耳に入るかわかりませんので、お許しが出るまでは、この部屋を出たら一切口にいたしません」


(私がお嬢様をお守りしなければ!)


 ソフィアの目が、仕事人のように鋭くなったが、シュト兄様は敵ではない。


 でも用心するに越したことはないので、そのままそっとしておくことにした。


「……私、今、お嬢様専属でよかったと、しみじみ思っております」


 ソフィアが小さな声でつぶやいた。


 心の声も一緒だったのか、小さな声でもはっきり聞こえた。


「ソフィア……どうしてそう思ったの?」


 彼女にそう尋ねてみると


「専属侍女であれば、嫁ぎ先までご一緒できますので、ここに置いては行かれませんので」


(シュピネル家は働きやすいし最高の職場ですが、お嬢様がいないなんて耐えられません)


 ——そうだったわ


 結婚したら、私この家を出ていくのよね?


 当たり前のことだけど、前世は結婚もしていないし……


 ——全く想像がつかないわね。



「ソフィアがいるなら、私も心強いわね」


 私は心からそう思った。


 ——知らない環境に嫁いでいくのよね

 

 心の底から信用できる存在は、かなりありがたいことになるんだろうな。


「お嬢様……私が、いかなる時もお嬢様をお守りいたしますからご安心ください」


(グランディエラ家、隅々までしっかり調べなくては……手強い相手ね)


 ソフィアは、一体何を調べるつもりかしら?


「ソフィア、敵陣に行くわけではないわよ?」


 私は不思議に感じたので、思わず声をかけてしまった。


「はっ!失礼いたしました。ですがお嬢様、相手は公爵家です。お嬢様に、無理難題などを言ってくることがあるかもしれません」


 ソフィアは至って真面目に言っているけど、


 ——ちょっと考えすぎじゃないかな?


「その時に、弱みの一つでも握っておけば、交渉がしやすくなるかと……」


 ——弱みを握るって……なんのこと?


 ソフィアの情報収集は優秀だけど、そもそも彼女の能力って何なのかしら?


「ねえ、ソフィア。言いたくなければ、言わなくていいのだけれど……」


 ——本来、能力の開示はするものじゃない。


 私が尋ねると、強要になってしまうかもしれないわ。聞いてみたいけど……


 私が言葉をいい淀んでいたら


「お嬢様、以前から、能力をお伝えするタイミングがなく、言えずにおりましたので、聞いていただきたいのですが……」


 ソフィアは、空気を読んだのか、自ら話してくれようとしている。


 真剣な顔のソフィアは、少しだけ緊張しているのか、自分の手を握りしめている。


「私の能力は『暗躍』です。このような物騒な能力の私ですが、今後、お嬢様に同行してもよろしいでしょうか?」


(この能力は、お嬢様を怖がらせてしまうかもしれない。でも、この能力はお嬢様をお守りできる。どうか、理解していただきたい)


 ——あー、そうだったのね?


 私はソフィアの能力を聞いて、驚くよりも、納得してしまった。


「ソフィア『暗躍』なんて、私にもってこいの素敵な能力だわ。の専属侍女がソフィアで、本当によかった」


 私が心からそう伝えると


「ティトお嬢様……」


(なんてありがたいお言葉!)


 ソフィアは感無量とばかりに、目を潤ませているけれど……暴走させてはいけない。


「これ以上ないくらい、ぴったりの能力で私は嬉しいけど、危ないことはしてほしくないわ。ソフィアが傷ついたら……私泣くわよ?」


 私が泣くことに、心を痛めるソフィアだから、抑止になることを願うわ。


 ソフィアがグッと息を殺したのがわかったので、言い返される前に、私は話を続けた。


「婚約の話もだけれど、今日の勇者資料館での話を聞いて?まだ、誰にも話してないから。私から聞いたこと、ソフィアは秘密にできる?」


 私はソフィアには、すべて話してもいいと思っている。能力を得てから、彼女は何度もその気持ちを貫通してくれていた。


 ——正直、家族よりも信用ができる。


「私でよければ、何でもお伺いいたします。秘密とおっしゃるなら、たとえ死んでも誰にも教えません」


(もったいなくて教えたくないですよ)


 ——心底、ソフィアはありがたい存在だわ、


「ソフィア、自分を蔑ろにしないでちょうだい。命まではかけなくていいわよ」


 私がそう言ったところで、無意味なことなのは重々承知だ。 


 でも、言わないわけにはいかないのよ。


「何をおっしゃいますか。ティトお嬢様のことに命を懸けず、いつこの私の命を懸けろと言うのですか?」


 ソフィアはこのように、いつだって私の事にまっすぐ過ぎるから、


「ソフィア、まずは、命を懸けること前提で考えることを止めましょうね?」


 私の言葉に、ソフィアは衝撃を受けたような顔をするけど……


 私の考え、間違っていないわよね?

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