私の暮らす国
私は統合することで、ようやく情報から解放されやっとホッとすることができた。
意識がまとまった瞬間、シャボン玉のように弾け飛ひ、本来の体に意識が戻った。
——まだ馴染まないわ。瞼一つ動かない
まだ、目覚めるには時間がかかりそうね。
今のうちに能力を理解しなきゃ……
『能力診断』で理解した能力。
通常は一人につき一つだけど、私には能力が二つあった。
——これは前世の魂の分よね。
もしかしたら記憶の箪笥に対して、能力が付いてくるのかもしれないわ。
もしかして箪笥の性質によって、能力が決まるのかしら?
——能力って、何種類あるのかしら?
私と前世の記憶がごちゃついているからか、なぜなぜと興味が散らかる。
——思考が子供じみているわね。
大人の思考があるうちに、現状を理解しなきゃダメだわ。
私は、一般教養の家庭教師から習った知識を順番に思い出してみる。
***
ここはゴルドファルベン王国。アレクサンディー山脈とシュタインザルツ海に接している。
標高が高めに位置する王宮のバルコニーからは、左右にその雄大な姿が見えるとお母様が教えてくれたっけ……
——そのうち見るんことになるんだろうな
標高の高い山脈は常に雪が積もり、雪解けの水が大きな川へ成長して国内を潤している。
——豊富な資源と水に恵まれた豊かな国だわ
山脈に接する国は5国連なっていて、婚姻や資源の供給、人材派遣や教育を通じて、国同士次世代交友を結んでいる。
——かなり良好な関係を維持しているわ
連なる国以外の他国は、国土基本的に船での往来で、造船と海運の技術がさほど高くないのか、決して多くはない。
(王国はアレク教の霊山があるお陰か、他国に比べて、高い能力を授かる者が多いのよね)
決して大きな国ではないが、他国を圧倒できるほど『多岐に渡る分野で、能力が高い者が存在する』と教本に書かれていた。
仕事は、技術指導や物資の運搬が盛んで、惜しみなく隣国との関係に活躍できるのよね……
(豊かだからこそできる余裕かもしれないわ)
欲に目が眩み、力任せに自国だけで抱え込まない辺り、王族や官僚たちはかなり賢い。
(今のところ、国外・国内では取り立てて大きな争いはないけど、国内では多少の派閥争いなどがあるんだっけ?)
稀に馬鹿な者が、第一王子に暗殺者を投げかけてくると、お父様が言っていたわ。
(王族はフレンドリーで、必要以上に謙った対応を好まないけど、正式な場ではある程度のマナーが求められるのよね?)
貴族ならマナーは必須だと思うわ。
「知らないのは家の恥」と、よくお母様から言われているもの。
(立場を利用した高圧的な対応は、基本的に能力不足な人がやることで、スマートではないとお父様も言っていたわね)
——王族は、市民の努力を無碍にはしない。
国の思想は、市民が豊かで市政が安定していれば、さらに国は栄えると考えているらしい。
(高位貴族は、取りまとめに過ぎないと学問で教えているから、とても暮らしやすいのよね)
国の宗教としては『能力診断』を行った神殿のアレク教がある。
——宗教、歴史と重なっていたわね
初代王はアレクサンディー山脈一帯の五つの国を収めていた。
(三つ子の王子の後に、二人の王子が産まれたんだっけ?)
——子沢山よね?
王子が成長した暁に、能力ごとに国として切り取り、無理のない統治をさせたのが五国の始まりだった。
(宗教も同じだから近い国同士、あまり揉めることがないのね)
アレク教の霊山はゴルドファブレンにある。
当時、癒しの能力が一番強い末の王子が、霊山の管理を任された。
(この国って、国土は一番小さいけど、資源も人材も豊かなのよね)
山の中腹には、王族しか入れない霊場もあり、御神体として神が宿る鉱石の塊が祀られているらしい。
もちろん禁足地となっている。
(今は国同士の関係も穏やかで、国内も安定しているから、神経質になって必要以上に心配しなくてよい気もするけれど……)
——私の能力はちょっと便利すぎだわ
なるべく人には知られない方が良いだろうと、大人の思考では考えている。
——高い能力は利用される。
(今の私はそうとも限らないと思っているけど、きっと前世では、その考えに至るだけの経験をしたんだろうな)
実際、私の能力は利用したくもなる。
——知らせるの相手は選ばなきゃいけない。
前世の能力の方は、ちょっと把握し難い能力なのよね……
私と前世の能力の違いは何だろう?
二人分あることは、伝えるべきかしら?
(前世の自分の考えは基本秘密にするべきと考えているけど、私としては両親だけには伝えた方が良いと思っているのよね)
この世界は、家の繁栄が生活に直結するし、派閥や足の引き合いがないわけではない。
——家族が平穏に暮らすために共有したい。
(私は揉め事が嫌いだし、負の感情は疲れるので持ちたくない)
振り回されるなんて、まっぴらごめんよ。
自分の能力は、平穏のために使いたいわ!




