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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
第1章 始まりのお話

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記憶情報

見つけてくれてありがとうございます。

更新は不定期になります。出来る時に頑張ります

『能力診断』の儀式の最中にそれは起こった。


 それは映像だけでなく、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感すべてを使って感じている。


 ——なんなの一体?!


「感じる」なんて生優しい物ではない。

 

 絶えず感覚を殴りつけられているようだ。直接的に痛みがあるわけではないけど。


「どうしよう。動けないわ」


 今、思考回路以外、肉体の自由は効かない。

 

 かろうじて自由が許されている自分の頭の中で、ボクサーにボコボコにされるのは、こんな感じなのかなと意識が逸れる。


 その時、ふと、違和感に気づいた。


 ——ボクサーって何?


「あれ? なんで知ってるのかしら?」


 知らない筈のことを何故か知っている?



 ***



「情報量で押しつぶされそうになったわ。でも、とりあえず情報のインストールは終わったみたいね」


 膨大な記憶の整理には時間がかかるのか、今、私の頭の中は引っ越し後のようだ。


「ワンルームの部屋に、4LDKの荷物を入れるようなものよ。かなり無理があるわ」


 あるべき位置に情報が収まるには、だいぶ時間がかかりそうだ。


「私、今多分気絶してるんだろうな……お父様、大丈夫かしら?」


 気を失う前のお父様の声を思うと、申し訳なさでいっぱいだわ……


 

 ***



 神殿にて医官に診てもらったが、特におかしな所はないと。いずれ気づくと言われ、一旦連れて帰ったが一向に目覚める気配がない。


 さすがに心配になり、上級医官を屋敷に呼び屋敷まで出向いてもらった。


「どうしてティトがこんな目に……」


 娘は自室のベッドの上で、穏やかにすやすや眠っている。


 医官のいる枕元の反対には、妻が娘の手を握り、黙ってずっと娘の腕をさすっている。


「肉体的には異常は見られません。ただ眠っているように見えますが……深い眠りのようなので、能力に関係があるのかもしれません」


 ——能力診断でこんなことになるのか?


「このままでは食事も取れないので、一旦、肉体の衰弱を阻止するために、時を止める魔法陣を起動させますね」


 娘のベッドの脇で、医官が作業をしながら説明をした。


「……能力に関係?このような事がよく起こり得るというの?本当に娘は大丈夫なの?!」

 

 妻は不安からか、医官を責めるような口調になっている。

 

「ラヴェル、落ち着きなさい」


 時を止める必要がある事を、母としては受け入れられないのだろう。


 私の方は、膝から崩れ落ち、軽く痙攣していた娘の姿が脳裏に焼き付いて離れない。


 ぐっと眉間に力が入った。


「気を失うことは稀にあります。肉体的に未熟だったり、記憶や五感に携わる能力の場合に力が収まりきらないと起こります」


 医官は作業をしながら、淡々と説明する。


「元々敏感な子供もショックで気を失うことはありますが、基本的にすぐに目覚めるのです」


 でも、ティトは違うと言うのだな……


「ご令嬢はかなり深く眠っています。もしかしたら器に対し力が大き過ぎたかもしれませんね」


 ——能力が強すぎたのだろうか?


「時間を止めました。お目覚めになるまで、慌てずゆっくり待ちましょう」


 わざわざ時間を止めるという事は、ティトはかなり長く眠ることになるのだろう。


 ——覚悟しなければならないかもしれん


 妻は長時間眠ることになる娘を思い、手を両手で握り締め、自分の額に当てて祈るような姿勢をしている。


 もう、言葉も出ないようだ。


 ——私がしっかりしなければ


「分かりました。見守る際、何か気にすべき事はありますか?」


 娘に何かしてあげる事は出来るだろうか。


「時が止まっている間は何もしなくても大丈夫です。魔法陣の色が緑になったら、陣が黒くなるまで魔力を足してください」


 私に出来るのは魔力の補充だけなのか……


 ——ティト、何もできなくて済まない


「薄い黄色になってきたら、その後は二、三日で目覚めるでしょう」


 医官は荷物を整理して、週に一度様子を見に来ると言うと、私と妻を残し使用人に連れられ部屋を後にした。




 ***




 私の目の前には、色とりどりの記憶がひらりひらりと移動している。

 

 頭の中の整理整頓は、まだまだ時間がかかりそうで、私の目の前を雑多な記憶が飛び交い仕舞われていく。


 目の前に記憶の箪笥のような物が二つ。


「不思議……見た事もないのに、私のものだとわかるわ。もう一つの箪笥は私のに比べて随分大きくて、なんだか傷だらけね」


 ——中を見てもよいのかしら?


 私の中にあるんだし、これも私の物よね?


 そっと引き出しを引くと、とある女性の記憶書だ。手に取るとすっと自分とリンクした。



 ——これ、前世の私の最期の記憶だわ


 認めたら、箪笥から音が聞こえた気がした。



 チリリン、リリン。


 その瞬間、私と前の自分の意識がカチリと噛み合った。


「前世の自分は魔法のない世界で、随分と苦労して生きていたのね……」


 私のことだけど、既に自分ではないので客観的に見られるわ。


「前世の私は気にせず当たり前に過ごしているけれど、私を通して見ると……」


 よくもまあ色々な事があったなと、私は随分頑張っていたなと感じる。


「でも何故今更、このような記憶が宿ったのかしら? 能力に関係しているのかな?」


 前世の私は、やり残した事などなさそうだ。むしろすっきりしている。


「なのに何で記憶がわざわざ?世界も常識も違うから、余計な情報は混乱を生むわ」


 ただ、私の能力を考えると、七歳の思考回路では少々厄介事になりそうではある。


「……大人の思考を手に入れる事が出来るなんて、私ってラッキーね」


 人によっては私の能力は脅威だろうし、あまり気持ちの良い物ではない。


 子供のままだと危ないし、私もかなり心が傷だらけになるだろう。


「もしかしたら、私を守るために前世の記憶が宿ったのかもしれないわね」


 ところで、一体どのくらいの時間が経っているのだろう?


 いつまでこのままなのかしら?

次回、ティトに出会い?


ブックマークと反応ありがとうございます!

お気軽にコメントしてくれたら喜びます。

これからも頑張ります!



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― 新着の感想 ―
音きっかけで過去の意識と繋がるんですね。 いいですね、おもしろいです!
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