秘密の報告
「ソフィア、お客様がお帰りです」
防音を解除しした後、廊下で待っているはずのソフィアに声を掛けると、サッと扉を開き入室してきた。
「アルゼを馬車でツァオバライ商会に送って差し上げて? 断ろうとしたら、強引に馬車に乗せていいわ」
私は、アルゼの行動を先読みして釘を刺す。
「……ご配慮いただき、感謝致します」
アルゼは、やられたと悔しそうだ。
「ではまた、ゴルドファブレンに来た時は、必ず声かけてくださいね?今日は楽しかったわ。ありがとう」
笑顔で、また会おうと送り出す。
「本日は、シュピネル様にお話を聞いて頂けて大変助かりました。ありがとうございました」
アルゼは深々と頭を下げて帰って行った。
——さて、どう説明したものかな?
きっと待ってるわよね……明日の朝、馬車で話すには時間がないわ。
今から集まるのも無理。
——じゃあどうする?
(アズ兄様、ヘルグ兄様)
私は、能力を使い、2人に念を飛ばす。
(ティト、どうした?)
(ティト?アズールもいるのか)
(今、アルゼとの話が終わりました。今、お二人とも大丈夫かしら?)
(俺は大丈夫だよ。ヘルグは?)
(俺は今、風呂だ!)
(それならヘルグ兄様は、とりあえず聞いてくれたらいいわ。ゆっくり入って)
(わかった。聞いてるよありがとう)
(で、ティト、どうしたんだ?)
(私の秘密、追加してもいい? 話を聞いても、私の仲間でいてくれる?)
(……まずい事か?)
(うん、でも直接国に不都合はないはず?)
(……今更、ティトの存在をどうこうできる自信はないな。聞くよ)
(聞いてくれるんだ?)
(俺も聞くぞー。ティトは俺の妹だからな)
(ヘルグ兄様ありがと!)
(おう!)
(全く、いっつもヘルグは気軽で羨ましいよ。
で? 秘密って一体なんだ?)
(私の秘密その1は『以心伝心』でしょ?)
(そうだな、その1か。その2は?)
(私、前世の記憶があるの)
(……前世?どういう事だ)
(こことは全く違う世界で生きて、死んだ記憶があるの)
(……異世界の記憶?)
(……気持ち悪いかな?)
(いや、驚いただけだよ。又、今度その話聞いてもいいか?)
(構わないわ。聞いてくれるなら嬉しい)
(ああ、聞かせてくれ)
(俺も聞くぞー)
(ふふ、2人ともありがとう)
(それが秘密?)
(それも関係するんだけど、前世のせいで、私魂が前世と今世で2人分あるの。だから能力も2つある。その一つが『以心伝心』)
(……そんな事あるのか)
(びっくりよね?もう一つの能力は、意味がわからなかったし、元の能力だけでもアレだから今まで、見なかった事にしていたの)
(まあ、それが妥当か……)
(で、アルゼも前世の記憶があるの)
(え!彼女も?)
(彼女、勇者パーティーの魔法使いだったわ。勇者召喚が行われて、勇者、賢者、魔法使い、聖女が召喚されたんだって)
(え、勇者召喚?)
(そう、異世界からの勇者召喚なんだけど、異世界の魂を持つ彼女には、以前、女神の啓示があったらしいの)
(女神の啓示?)
(彼女は魔眼の持ち主だから、能力が見えたみたいで……だから私に、異世界の魂があることに気付いたんだって)
(え……まさかティトも?)
(うん。賢者だった)
(女神の啓示あったの?)
(ないよ、私の2つ目の能力が『賢者』なの)
(は?何その能力)
(だよね、わからないよね?多分、能力名が賢者だから女神様、自分で気付くだろうと思われて、放置されたのかなって話したよ)
(それで、ティトは勇者パーティーなの?)
(そうみたい。アルゼも日本人だったし)
(ニホンジン?)
(私の前世と同じ世界で、同じ国の人だから、他の召喚される勇者と聖女も同郷だと思う)
(……ティトはこれからどうするの?)
(私?何もしないよ)
(は?!何もしないのか)
(え、だって目立ちたくないし。私弱いし)
(弱いのは……弱いな。出来るのか?)
(だからやらないし……隠す)
(でも、アルゼにはバレたんだろう?)
(それは大丈夫。アルゼも隠してるから)
(アルゼも?!勇者パーティー大丈夫なの?)
(大丈夫みたい。魔王は勇者じゃなくても倒せるはずだって話になった)
(それでいいのか?)
(こんな弱い小娘、何のためにいると思う?)
(え、賢者なんだろ?)
(勇者パーティー4人の内、非力な女性が3人います。勇者はどんな人でしょうか?)
(ゴリゴリの男だろうな?)
(だよね?だとしたら後の3人は勇者のためのハーレム要員じゃないかしら? そんなの嫌よ)
(……あり得るな。以前見た過去の資料に、そんな話もあったような気がする)
(ね?だから隠すの。アズ兄様助けてね)
(流石にハーレム要員なら止めるよ)
(もしもの時は、ヴァルド国の特殊部隊が何とかしてくれるだろうってアルゼが言ってたわ)
(確かに、あの人達なら大丈夫だろうな。下手したら歴代勇者より強い)
(そうなんだ、凄いね)
(リリの異母兄が隊長の筈だよ)
(そうなんだ、大魔導師はアルゼの義兄よ)
(へえ、そうなんだ。俺、アウスヴェーク様に憧れてるんだ。頭もいいし、天才って彼の為にある言葉だよ)
(アズ兄様がそんなに憧れてるなんて、余程凄いのね?)
(俺は隊長のアウスリーベン先生に憧れてる!本当に、カッコいいし強すぎて誰も太刀打ち出来ないんだ)
(ヘルグ兄様、お風呂上がった?)
(上がったよ。ティト、勇者に興味あるなら勇者資料館があるから、行ってみると歴代勇者の事学べるし、行くと出会いがある予感がする)
(ヘルグ兄様の勘ね?)
(うんティト、アズール、一緒に行こう?)
(勇者資料館か……面白そうだな)
(ヘルグ兄様、急ぎじゃないなら、とりあえず、テストが終わってからでもいい?)
(……タイミングピッタリだと思うよ)
(ありがとう。とりあえずこの事は秘密ね?)
(わかった。今日は遅いからもう休みなよ?
明日朝、迎えにいく)
(アズール、俺を拾ってくれよ?)
(わかってるよ。ティトお休み)
(お休みティト)
(お休みなさい)
ヘルグ兄様の『出会いがある』と言う言葉が気にはなったけど……
私はとても眠たなったから、念話を切って大人しく布団に入った。




