魔王の討伐?しませんよ。
アルゼが私を賢者だと言うけど、私には神の啓示なんて来なかった。
——違うのではないかしら?
「私は賢者ではあるけど、きっと勇者パーティじゃないわ。だって、神の啓示が来るのでしょう?そんなのなかったわよ」
アルゼは魔眼だから、何か見えてるのかな?
「ティト様は、元々『以心伝心』と『賢者』の
能力を二つ持ってますよね? 後から賢者が覚醒したんじゃないの?」
アルゼは、私の能力は、後から生えたと思っていたみたいね。
「能力診断で私が覚醒した能力は二つだよ?『以心伝心』と『賢者』魂2つ分だった」
この話は、まだ誰にも言ってないや……
でも、アルゼには隠せないわよね?
もしかして、前世の私が生きていたら、賢者として召喚されたのかな?
——それは、面倒そうだから嫌だわ。
「魂二人分か……なら、どちらの能力が、前世の能力なの?」
アルゼは、首を傾げた。
「『賢者』が前世よ」
皮肉よね……本当に賢かったら、あんな目に遭う事はなかったのに。
「やっぱりそうなんだ。本来なら、ティト様は前世からの転移だったかもしれないわね」
——やっぱりそう考えるわよね。
「アルゼもそう思う?でも、なぜ私には神の啓示がなかったのかしら?」
他の人たちにはあったのかな?
「うん、なんでだろう? 賢者だから自分でわかるだろうって、女神様が横着したのかな?」
いや、それはちょっと酷くないかな?
「だとしたら、ずいぶん雑な扱いね? まぁでも、能力そのものが、賢者って言いきってるからやっぱり気付けってことかな?」
まあ、ズバリそのもの賢者だものね。
「賢者って賢い者って書くじゃない?もし、本人が賢くなかったら、一体どうするつもりだったのかしら?アルゼはどう思う?」
私は別にそんなに賢いわけじゃないわ。
「いや、そもそも賢くなかったら、さすがに、賢者には選ばれないんじゃない?」
——確かに。
馬鹿じゃ難しいか……
「それもそうね。でも賢者って何するの?」
あまりイメージがわかないわ。
「何か、ティト様に特別な能力がある?」
私は目をつぶって、自分の能力を調べる。
「特にないわ?強いて言うなら、本来以上に頭が働く位かしら。あと、支援系の魔法が得意みたい……全く使ってないけど」
いろいろ覚えたら便利なのかな?
でも、魔法を下手に使うとばれちゃうか。
「賢者……ティト様は戦略とかじゃない?」
まあ、直接の戦力ではなさそうね?
「そうか、予定を立てたり、どうやって倒すか考えたり、仲間の能力高めたり?そんな感じかな?……やらないけどね」
勇者パーティなんて目立つ事、お断りします。
「それを言ったら、私だってやらないわよ?」
あ、アルゼもお断りなんだ?
「ここだけの話、魔王は勇者パーティーじゃなきゃ倒せないって訳じゃないのよ」
アルゼはパーティーに参加する気はないからか、丸投げするための情報を教えてくれた。
「え、そうなの?」
なら、なんで召喚したんだろう?
「そうよ、私の義兄なら倒せるわ。だから私は今まで勇者パーティの魔法使いである事を、ひたすら隠して生活してきたんだもの」
確かに身内に倒せる人がいたなら、黙っておきたくもなるわね……
「でも、メンバーに会ってしまったら黙ったままは無理よ。ちゃんと参加を断りたいし、そもそも同じ日本人なら話もしたかったもの」
——あぁ、その気持ちはよくわかるわ。
私も、こちらで元日本人に会ったら、絶対に声掛けちゃうわ。
「アルゼは、魔王討伐に対して、何もするつもりはないのよね?」
参加しない仲間がいるのは助かるわ。
「何もやらないわ。私はこの世界で生まれたけど、自分の事で手一杯よ。私より強い魔法使いなんて沢山いるし……」
魔法使いも賢者も普通なら、勇者が人外レベルで強いのかしら?
「それこそ不味くなったら、真っ先に義兄の特殊部隊が動くわ。戦神、大魔神、大魔導師、守護神がいるんだから問題ないでしょう?」
そんな強い人がいるなら、私達のような非力な女子が、集って勇者パーティに参加する意味あるとは思えないわ。
「これって勇者以外は、私とアルゼと、後は聖女でしょう?女性ばかりじゃない。実は私達、ハーレム要員じゃないわよね?」
——よくある物語みたいな。
「フェルゼンの聖女には、実は会ってるのよ。私が迂闊ですぐに転生者とバレたわ。ヴィントに帰る時、また立ち寄ってみようかな……」
——アルゼは聖女に接触していたのね?
もしかしたら、アルゼは勇者パーティーの繋ぎ役を兼ねているのかもしれない……
聖女も気にはなるけど、勇者パーティーに参加しないのであれば、目立ちたくないなら関わらない方がいいかもしれない。
「ヴィントに戻るって、アルゼの所属はこちらの国じゃないの?」
行ったり来たりしているのかしら?
「私の本拠地はヴィントよ。ツァオバライ商会はアウスヴェーク家が立ち上げてるのよ」
——あ、そういえばそうでした。
アウスヴェーク家のお嬢様だってこと、前世に引っ張られて、うっかり忘れていたわ。
「私は本部で作られた商品を届けたり、デアマギアから要望を聞いて作成してるのよ」
アルゼは、商会本部からの視察も兼ねているのかもしれない。
建前としての優秀な養女が成り立つくらいだから、かなり有能なんだろうな。
「国を渡るなんて、アルゼのお兄様も、アルゼも有能なのね?」
移動するだけでも大変なのに。
「私は大した事ないわよ?アウスヴェーク家は有能揃いだけどね。時間が遅くなって来たし、私、そろそろ帰るわ」
アルゼは外を見て少し慌て出した。
「何で来たの?」
——外に馬車を待たせているのかしら?
「歩きよ?結構近いし」
アルゼは当たり前のようにに言うけど、
「攫われそうになったばかりなのに、何言ってるの? こんな夜更けに1人歩きは危ないじゃない。うちの馬車で送らせるわ」
前に襲われたのによく平気ね?
「案外大丈夫よ?認識阻害すれば、私の存在自体が有耶無耶になるし」
アルゼ、普段からやってるのね……
「私が心配だから、お願いだから馬車で帰って頂戴。とりあえず、魔法使いと賢者は隠す方向でいい?私の事は誰にも言わないでね?」
一応念押しをしておこう。
「分かった言わないわ。馬車にも乗る。今日は時間くれて、ありがとう感謝してるわ」
アルゼは防音を解くために、スイッチに手を伸ばした。
「また、お茶しましょう?あと、今日いた2人と、ソフィアには今日の話を伝えてもいいかしら?アルゼに悪いようにはしないと約束する」
アルゼの手を止めて伝えてる。
「……あの2人は、どんな関係なの?」
アルゼは少し嫌そうだ。
「私の秘密を知って、共に罪を被る覚悟をした友人。後、ソフィアは私至上主義」
この3人は、絶対味方にした方がいい。
「賢者のティト様が認めたならそれでいいわ。私はティト様の能力に関する記憶は魔法で封印するわ。うっかり誰かに溢さないために」
——アウスヴェーク家に刻まれた陣ね
「私は助かるけど、でも、そうしたらまた他人行儀になるじゃない。それは嫌だわ」
せっかく同郷の人に会えたのに……
「大丈夫ですよ。次にティト様に会ったら解けるようにしておきますから。魔法は毎回、かけ直します」
アルゼったら、やっぱり有能じゃない。
「ありがとう。この先、私はアルゼの仲間で味方だから安心してね? また、必ず会いに行くから、その時は時間作ってね」
お互いに手を取り握手をした後、アルゼは防音を解除した。
お話に出て来る勇者と聖女は、また別の話があります。
もし良ければ、覗いてみて下さいね




