父母への報告
ツァオバライ商会から帰宅し、自室で着替えをソフィアに準備して貰う。
「この間助けたアルゼが、後から購入品と救出してもらったお礼を持参して来るわ。彼女とは少し話があるから、部屋を準備しておいてね」
ソフィアは荷物を片付けながら振り返ると
「私に御礼など……ティト様に言われて行動しただけですのに。それよりも、夜にお部屋でお話されるのですか?」
ソフィアは、お礼もだけど、何の話か気にしているようだ。
「彼女、アウスヴェーク家の令嬢だったみたい。家でのことを相談したいみたいよ」
アルゼが貴族令嬢と聞き、ソフィアは驚き
「アウスヴェーク家のご令嬢だなんて、尚更お礼なんて頂けません!」
滅相もないと、頑なに首を振っている。
「でも、実際に救出したのはソフィアだもの。アルゼの感謝のお気持ちですから、それを断るのも失礼じゃないかしら?」
ソフィアは私が伝えた、アルゼの貴族の身分を気にしている。
どう対応すべきか悩むのだろう。
「とりあえず、部屋で軽くもてなせるようにはしておいてね」
私はソフィアに指示を出し、食堂へ向かう。
——学園初日だから、色々聞かれるわね
お父様とお母様に、全部話すと面倒になりそうだから、あまり話せる内容はないかも……
「ティトの学園入学を祝って、この食事にまつわる全てに感謝して、いただきます」
自分の席につき、お父様の食事への感謝の挨拶で晩餐が始まる。
前菜から、料理人達がいつもより気合いが入っているのがわかる。
みんながお祝いしてくれてるのがわかるわ。
——嬉しいし、幸せだわ。
家族は、上品な所作で食事を楽しんでいる。
——お喋りは、お茶の時間までお預けね。
お父様、お兄様、お母様と順に食事を終え、お茶の準備に入る。
私も食べ終わり、お茶をお願いした時
「ティト、学園入学おめでとう。初めての学園はどうだった?」
お父様は待ちきれなかったのか、早々に尋ねて来た。
「とても楽しかったですよ。ご令嬢のお友達も出来ましたよ」
気持ちは侍女のようですが……
「ほう?もう友人が出来たのか、さすがだな」
お父様はポンと手を叩き、誉めてくれた。
「どこのご令嬢かしら?」
お母様からは、お友達のチェックが入った。
「同じクラスで、ダーリエ・ピュリート様と
ロベニア・カルツィート様ですわ」
2人ともお父様の関係者だから、安心なはず
「ピュリート家とカルツィート家か、確かにあの家には、同じ歳の娘がそれぞれいたな?」
お父様はやっぱりご存知でしたのね?
「二人のお父様が、シュピネル家にはお世話になっていると聞きました。二人は、私がひとりでいる時、声を掛けて頂きました」
——とても楽しくて、嬉しかったわ
喋り過ぎて、先生の目が怖かったのは秘密
「ティトの帰りは、グランディエラ家の馬車じゃなかったわよね?何かあったの?」
お母様は、私の帰宅の馬車のチェックまでもしっかりとしていた。
「商会に出かける前に送ってくださったのは、リープリッヒ・アウスリーベン様です。朝に王子の紹介でご挨拶をして、仲良くなりました」
一応、王子の紹介でいいのかしら?
「お昼もご一緒させて頂いたのですが、せっかくだからもう少しお喋りしましょうと、帰りも送って下さいました」
かなり強引だったけど、仲良くなれて良かったですわ。
「アズール様とヘルグラウ様は、これからも基本的にご一緒させていただく予定です」
何も間違ってないよね?
「そうか、一度先方に挨拶をした方が良さそうだな。屋敷にお招きするか?ラヴェル、トロイエと相談しておいてくれ、お願い出来るかな」
お父様がお母様に丸投げしている。
お父様は自分のお仕事以外は、家の事は全てお母様に基本的に丸投げする。
「畏まりました。決まり次第ご連絡差し上げますわ。ティト、アウスリーベン様は、ひとつ上の学年のナトゥーアの姫様ではなくて?」
お母様、さすがに詳しいですね。
「お母様、ご存知でしたのね?」
リリお姉様、そう言えばお姫様でしたね。
「ええ、このまま行けば、第一王子の婚約者候補の筆頭になるはずよ。出来る限り仲良くしておいた方が良い相手ですよ」
大人の世界の思惑もあるんですね……
「ティト、この後予定があるのか?」
シュト兄様もし、時間があっても面倒だから兄様との時間は作りませんわ。
「この後、ツァオバライ商会のアルゼ・エンゲ・アウスヴェーク様とお約束があるのです」
トロイエにも伝えたから、お父様とお母様は既に知っている。
「ツァオバライ商会が何の用事?」
兄様が、気にして聞いてくる。
「私個人の問題ですので、シュト兄様はご遠慮ください」
全く関係ないと思うし、言う義務もない。
「……ティト、最近冷たい」
口から冷たいと言い、仕方がないな、なんて言って見せてるけど……
あの顔の時は、心の内でどうしようもない賛辞が嵐の如く吹き荒れているのを知っている。
——だから兄様はこのまま無視でいい。
「シュヴェルト、ティトも取り巻く世界が変わったんだ、いちいち詮索するのは良しなさい」
お父様がシュト兄を嗜めた。ありがとう。
「ティト、お客様がお見えになるなら、早く準備をなさい。迎える側がお待たせするのは、淑女として良くないわ」
お母様から、退席の許しが出たので
「お父様、お母様、ありがとうございます。又、後日ゆっくり話を聞いてください。では、私は部屋に下がります。お先に失礼致します」
ゆっくりと礼をとり退席する。
「シュト兄様、着いてこないでくださいね」
私は一緒に席を立ったシュト兄様に、しっかりと釘を刺した。
全身から悲壮感を漂わせているシュト兄様を放置して、アルゼを迎える為に自室に戻った。




