お揃いのバングル
アルゼと一緒に商談室に戻って来たら、アズ兄様とヘルグ兄様が商品を見ていた。
「お待たせ致しました、今、戻りましたわ」
私は、2人に心配無用だと笑顔をみせた。
「シュピネル様の貴重なお時間を頂き、誠にありがとうございました。御二方には、大変ご迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした」
アルゼは部屋に入るなり頭を下げた。
「お時間が許す限り、ゆっくりお選び下さい」
そのままアルゼは頭を下げている。
「構わないよ、ティト。いい物だったかい?」
アズ兄様は、何も気にしていないようなそぶりをしている。
「大丈夫だから、頭を上げて。君はまだお仕事があるでしょう?下がっていいよ」
ヘルグ兄様はアルゼに退出を促した。
「ありがとうございます。では失礼致します」
アルゼはあげた頭を、もう一度深く下げてから退出して行った。
「魔導ペンはもう頼んで、ヘルグと相談して、もう一つ、同じ効果の物を追加したよ」
(ティト)
あー……やっぱりそうなりますよね。
「何を頼んだのですか?」
(はい、繋ぎました)
(ヘルグは?)
(いるぞー、俺は同時には無理だから基本的に黙っとくよ)
「バングルを頼んだよ。ティトには2本」
(で、何の話だった?)
「2本もですか?」
(基本的には、本当にソフィアへの贈り物の話だったわ。職場で話せる内容じゃないのよ)
「付け替え用だな。色や柄が違う。令嬢は気分で変えるんだろ?」
(どういう事だ?)
「確かに、ドレスと色が合わないと、かなり違和感に感じそうですものね?」
(今日、夜に招いて話を聞く予定なの。一旦話を聞いてから、また2人には伝えていい?)
(アズール、気になるのは分かるけど、ティトが後から話してくれるなら、今はやめとこう)
「2本じゃ足りなかったか?」
(わかった、出来上がり次第今日は帰ろう。ティト、本当に大丈夫なんだな?)
「大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
声に出してお礼をしたら、タイミング良くどちらにも返事をした事になった。
「ふっ、重なったね」
ヘルグ兄様が笑う。
「わざとやってる?」
アズ兄様も笑った。
「わざとじゃないです!」
思わず楽しくなって、3人で 笑ってしまった
「ペン以外に、2人は何を選んだのですか?」
私も一緒に選びたかったな。
「俺達もバングルにしたよ。ティトのバングルと色違いでね」
アズ兄様がニコってしながら教えてくれた。
「色々と候補はあったんだけど、常につけられるし、邪魔にならないから、それに決めた」
ヘルグ兄様は騎士だから、邪魔にならないのは絶対条件だものね。
「どんなバングルなのか楽しみですわ」
早く出来ないかな?
落ち着いたら、ワクワクしてきた。
「ティトのバングルは俺達2人で選んだから、気に入ってくれたら嬉しいな」
アズ兄様が希望を口にした時に
「お待たせ致しました」
デアマギアがタイミングよく、ペンとバングルを持って来た。
バングルは、トレーに4本並んでいる。
「これが俺ので、こっちのがヘルグ。この二つがティトだよ」
見せて貰ったバングルは、上品な白色とオフホワイトで、白色は銀の蔦模様、オフホワイトは金の花柄だった。
どちらも可憐で可愛い。
——どっちを使うか迷いそうね
「わぁ、素敵!可愛いですね」
2人のを見ると、青黒い土台に銀の蔦模様と、深緑に銀の蔦模様だった。
——かっこいい。
いいな、私も暗い色のも欲しい。
「私、もう一本頼んでもいいですか?」
デアマギアに声を掛けた。
——暗い色も欲しいわ
「畏まりました。こちらがサンプルになります。いかが致しましょう?」
既に持っていたのだろう、さっとカラーバリエーションのサンプルを見せてくれた。
——これ、上品だしカッコいいわ
「こちらを下さい。時間がかかるなら、今日アルゼがお礼の品を届けてくれるので、その時にでも持たせて下さい」
アルゼが来るのは丁度いいわね。
「畏まりました。アルゼに届けさせますね」
私は、深いアメジストの土台に、シルバーの蔦模様のバングルを追加注文した。
「ありがとうございます。お願いしますね」
とても素敵な物が買えたわ。
「行こうか?」
「はい」
私は、アズ兄様に促されて立ち上がった。
「じゃ、これは貰っていくよ」
ヘルグ兄様が、品物を纏めて手にして配ってくれた。
それぞれのペンと、バングルを手にして、使い方をレクチャーされながら帰路についた。
これで、2人との内緒話がかなり捗る。
「もしかしてティトは、僕達が選んだバングルが気に入らなかったのか? 2本もあるのに、アメジストを追加したろ?」
馬車を降りる時、ヘルグ兄様が不思議そうに尋ねてきた。
「選んでいただいたのは、どちらも素敵だからお出かけ用に大事にしたかったの」
——二人ともセンスは抜群だったわ。
「それに、二人と同じ様な色でかっこいいのも欲しくなっちゃいました。お揃いで学園につけて行くのにいいかなって。ではまた明日」
私は軽く手を振り、馬車を降りる。
振り返ると、ポカンとした後、2人揃って破顔したのが、閉まる馬車の扉から見えた。




