魂が同郷?
ツァオバライ商会に到着し、3人で店内へ向かう。何度か3人で出向いているから、店側も慣れた対応だ。
迎えてくれたのは、商会長のデアマギアだ。
「ようこそおいでくださいました。いつものお部屋へどうぞ」
案内されて部屋に入り、ソファーに座った。
コンコン
「失礼致します」
ノックをして、女性従業員が入って来た。
珍しいな?と見ていたら
「シュピネル様、私はツァオバライ商会の魔導具士アルゼ・エンゲ・アウスヴェークと申します。どうか、アルゼとお呼び下さい」
——あ、この方は
「先日は、人攫いに襲われた所をお助け頂き、ありがとうございました」
アルゼは膝をつき、深々と頭を下げている。
「そんなに畏まらないでくださいませ。気持ちは受け取りましたから、頭を上げてください」
それに、直接助けたのは私じゃないわ
彼女が顔を上げ、私を見た時、
——アルゼの時間はピタっと止まった。
「……あの日、取引の為にヴィント国から来てすぐでした。到着して馬車を降りた時に、安心していてつい気を抜いていました」
アルゼは当日の話を聞かせてくれた。
「守りが薄くなった時に拉致されてしまい……人攫いの目的は分からなかったのですが、後に、国の外の国の人間だと判明したそうです」
——国外の人攫いだったんだ……
「どこから調べたのか、私がツァオバライ商会の魔道具技士である事を知り、連れ去り自国で儲ける画策したそうです」
アルゼが事件の真相を話していた時、
(シュピネル様、私の声聞こえますか?急に申し訳ありません。そのまま聞いてください)
——えっ、誰? アルゼ?
(あなたの魂は日本人ですよね?私も同じです。
私には魔眼があり、貴方の能力を理解し、念話を送っています)
え? 魂が同郷って……
(聞こえていたら「そうなのね?」と相槌お願いします)
平然を装い黙って話を聞いていたが、私の動きが一瞬止まったのを、アズ兄様もヘルグ兄様も見過ごすはずはなかった。
「ティト、どうかしたか?」
「何か気に触った?」
心配した2人が、声をかけてきた。
「……何でも無いですわ」
2人は私を気にしつつも、口を閉ざした。
「アルゼ、続けて? 人攫いは、この国に関係のない国から来ていたと……そうなのね?」
(聞こえてます。少し2人で話せないかしら? 何か私を連れ出す口実はある?)
(お任せください)
「はい、未だ盗賊団の根城は掴めておりませんが、助けて下さったシュピネル様と侍女のソフィア様には、お礼の品を差し上げたくて」
気にしなくても良いのに……
「シュピネル様は、我が社の製品をご利用頂いているので、好みのイメージが付きましたが、ソフィア様の好みが分からず……」
——話の運び方がお上手だわ。
「不躾なお願いになりますが、本日お急ぎで無いようでしたら、宜しければ、先程工房で準備したので、一度確認頂けませんか?」
——いい感じの着地ですわね。
「まあ、それなら工房に行けばいいの?でも、工房を除いてもいいのですか?」
(アルゼ、ナイスです)
(ありがとうございます)
「私の部屋の狭い個人工房なので、全員は一緒には入れないかと……」
(一旦引きます)
「アズ兄様、ヘルグ兄様、ちょっと見て来ても良いですか? 私のペンは預けるので、注文をお願いしてもいいかしら?」
「……いいよ預かる。他に何か必要な物は?」
私は、アズ兄様にペンを渡した。
アズ兄様は不信がりつつ請け負ってくれた。
「アズ兄様、このペン以外にも同じ防音機能が欲しいので、何か探して欲しいです」
保険はいくつあっても良い。
「……大丈夫だと思うけど、何かあったらすぐに呼んでね」
ヘルグ兄様は勘が働いたのだろう。
——何か気付いているかな?
「ヘルグ兄様、心配ありがとう。兄様の大丈夫は安心出来ますわ」
本当に便利な能力ね?
「アルゼ、じゃあ、いきましょうか?」
(早く。2人に察知されるわよ?)
「か、畏まりました。お手数をおかけして申し訳ありません。よろしくお願いします」
(ごめんなさい、慌ててしまったわ)
(その方が臨場感あるからむしろいいわよ)
部屋を出て2人で工房に向かう時、デアマギアが急ぎ足でやって来た。
「アルゼ様にシュピネル様? どうかなさいましたか?」
そうよね、気になるわよね
「デアマギア……先日のお礼をするために、工房にシュピネル様とソフィア様への、贈り物のデザインの確認と調整をしに行くのよ」
あれ? もしかしてアルゼは、会長のデアマギアよりも立場があるのかしら?
「左様でございましたか。言って頂ければ必要な物を別室にご用意致しますのに……」
デアマギアは少しだけ渋っていた。
「私が工房を見て見たいと我儘を言ったのです。ご迷惑なら戻りましょうか?工房は前から一度見てみたかったのですが、ダメですか?」
——デアマギア、ごめんなさい。
店としては、裏を見せるのは良く無いのは分かっています。
——でも今は2人で話す時間が必要なの。
「ダメだなんて滅相もございません!出過ぎた真似をして、申し訳ありません」
デアマギアは慌てて頭を下げている。
通常は裏側に貴族令嬢など通さない。本来、謝らなければならないのはこちらだわ。
デアマギアには申し訳ないけど、あくまでも私の我儘だからと、半ばゴリ押しでアルゼの工房に向かった。




