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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。  作者: 黒砂 無糖
学園生活

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喧嘩するほど仲がいい?

 リリお姉様は、馬車の中でそわそわもじもじしながら、あれこれ考えている。

 お姉様は王子への気持ちが、本人へ伝わってしまう事を、何とか回避したい様だ。


「そんな…困るわ?ティト、何で彼達にわかってしまうと思うの?」


 お姉様は半泣きになりながら、必死に私を頼ってくる。

 とても可愛らしい姿なので、いつか王子に自慢してみようかしら?


「そもそも、喧嘩は王子に対してだけなのでしょう?それって、既に特別ですと言っている様なものではなくて?」

 嫌なら、わざわざ近寄らないかと思うのです。


「…でも、嫌いなのかもと、思わないの?」


 リリお姉様、甘いです。激甘ですわ!


「そもそも本当に嫌いなら、リリお姉様は近寄ったり致しませんよね?

 今までならば、王子と顔を合わせる回数が、少なかったので、誤魔化せたかもしれませんが

 これからは、毎日お会いするでしょう?」


 このままでは、毎日喧嘩になりますよ?


「リリお姉様、ちょっと考えてみて下さらないかしら?

 たまにお顔を合わせると、喧嘩になってしまう人が、いつの間にか、毎日顔を合わせて喧嘩しているとして…

 何か、お気付きにはなりませんか?」


 リリお姉様、周りの気持ちをお考え下さい!


「…確かに。何かしら、とは思うわね」

 リリお姉様は、本当に素直な人だ…


「そう思われますよね?更にその後もずっと喧嘩なさっていて、いつも文句ばかり言うのに、わざわざ共に食事したり、側に居たりしたら…

 文句を言う方を、どのように感じます?」


 ——自分で答えにたどり着いてください。


「…喧嘩するなら、わざわざ行かなければいいですわね?」


 リリお姉様、それが分かっているのに…


「そうなりますよね。なぜその方は、文句言いながらも、相手の側に居るんだろう?

 と、周りは考えるかと私は思うのですが…

 見ていた周りの皆さんの、考えの行き着く先はどのようになると思われますか?」


 さあ、気付くかしら?


「いやだわ!!どうしましょう」

 リリお姉様は気付いたようてすわ。


 先程より真っ赤になってジタバタし始めた。


「自然にお過ごしになればいいんです。普通に皆と同じように仲良く。

 喧嘩などするから目立ってしまうのです。

 とても簡単な事ではないでしょうか?」


 誰彼構わず噛み付いてなんかないですよね?


「今更無理だわ…だってユングとは、ずっと昔からやり合っていたし」


 リリお姉様、呼び捨てが出てますわ。


「リリお姉様は、昔はユングとお呼びになっていたのですね?何故今は王子と?」


 今、名前呼んだら、王子喜ぶでしょうに


「学園に入って、周りからその、ユングの婚約者候補の一人だと言われて…

 沢山の中の候補の中の一人だから、ちゃんとしないとって思ったのよ…」


 あ、自分に厳しくなって、ついでに相手にも厳しくなってしまったのですね


「その…失礼かもしれませんが、それだから

 王子に上から目線で絡んでいるのですか?」


 リリお姉様は、驚愕の表情をした。


「…私…上から目線…でしたの?」

 さぁっと赤い顔から青い顔へと変化した。


「ハッキリ言わせて頂くのと、優しくお伝えするならどちらがよろしいですか?」


 一旦、釘刺した方が早そうね?


「出来れば優しく…いえ、ハッキリ言って下さいませ!」


 リリお姉様は、ギュッと目を瞑っている。


「今日のリリお姉様、まるで、クドクドと長いお説教をするお母様か、もしくは躾に厳しい婆やの様でした」


 本当、王子よく付き合っていますわね。


「…ティト、どうしましょう」

 リリお姉様の魂は、もう限界の様ね?


 ——可哀想になるくらいヨレヨレだわ。


 少し元気になって頂かないと困りますわ。


「リリお姉様、考えて見て下さいませ?

 先程お伝えさせて頂いた様に、ユング王子もリリお姉様のお説教が嫌なのでしたら、

 無視するなり、袖にするなり出来る筈です。

 彼は王子です。もし嫌がるなら、ヘルグ兄様もアズ兄様も、リリお姉様を近寄らせない事なんて、本来なら簡単なのではないでしょうか?」


 気付くかしら?


「確かに、ユングが望めば2人は私を彼に絶対に近付けないわ。

 以前、無理にユングに近付こうとした令嬢が排除される様子を見た事あるわ…」


 実際に起こったのですね?


 あの2人は身内には優しいけど、敵には容赦無さそうですわ。


「その様な事が…でも、リリお姉様はあんなにも怒鳴りつけていらっしゃるのに、

あの二人に、排除されることはありませんわ」


 ま、一旦はこのくらいかな?


「…私許されていたのね。ありがとうティト、帰宅したら色々考え直すわ。明日からは、ユングに対するお説教は少し控えてみるわね?」


 リリお姉様は優しい笑顔に戻った。


 普通に過ごしていたら、誰でもリリお姉様を好きになると思うのですが…


「そうだティト、あなた、もう少し言葉を崩しても良くってよ。

 私達はお友達でしょう?丁寧なのも素敵だけど寂しいわ。だからお願い」


 ね?って首を傾げて気安い態度を許してくれるリリお姉様は、ハッキリ言って天使でした。


「わかりましたわ。今後、少し楽に話をさせて頂きますね。

 リリお姉様、アドバイスになるかはわかりませんが…たまに素直な時もあった方が、グッと来るらしいですよ?」


 シュト兄様が言っていたよ?


「グッと?」

「グッと」


 2人で握り拳を作りギュッと握る頃、馬車がシュピネル邸にたどり着いた。



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