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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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リリの恋


 午後の教室では、各国の特徴についての授業をやっている。


 「ゴルドファブレン王国についてか……」


 役割、宗教、能力、特産品等、先生はあっさりと進めてはいるが、かなりしっかり覚えないと試験が大変そうだ。


「……他には、各種研究所が運営する体験施設もあるから、問い合わせると見学をできるぞ」


 先生は、研究所の情報を紹介してくれた。


「学園の隣の敷地に、勇者資料館もあるから、興味があれば見てみるんだな」


 ——勇者資料館?


「勇者なんているんだ……」


 ぽろっとこぼした言葉を、ダリエは拾った。


「ティト様は、勇者に興味がお有りですか?」


 勇者に興味の有る無しだと……無いかな?


「勇者って、物語のイメージだったから、資料館があると聞くと、急に現実的だなって……」


 ヒソヒソと伝えたはずなのに、先生と目が合った気がしたので2人して黙り、結局そのまま、終業時間まで真面目に授業を受けた。



 カラーン カラーン カラーン



 ベルが鳴るとほぼ同時に


「ティト、帰りは私が送って差し上げます!」


 ——昼に呼びに来た王子と同じ登場ね。


 王子と違い丁寧な手付きで扉を開けていた。


 ——さすがリリお姉様。


 ヘルグ兄様の計算通り、リリお姉様は誰よりも早く迎えに来た。


「リリお姉様、遠回りになりませんか?」


 一応、確認をとってみだけれど……


「お気になさらず。行きは時間的に難しいですが、帰りくらいご一緒させてくださいね?」


 王子に噛み付いているお姉様と、同一人物とは思えない。


 清らかで、優しい笑顔とお言葉を頂いた。


「では、リリお姉様のお言葉に甘えて、よろしくお願い致します」


 荷物を手に持ち、リリお姉様について行こうとしたら、急に手荷物がなくなり軽くなった。


 横を見たら、アズ兄様が私の荷物を取り上げていた。


「アズ兄様、私、自分の荷物持てますよ?」


 見上げてむぅっとしてみるも、アズ兄様は荷物をくれない。


「ティト、俺といる時は荷物は俺の役目だよ」


 なんて言いながら、手を繋いできた。


 周りから黄色い声が響き渡り、リリお姉様がこちらに気付いた。


「あら?アズール貴方、帰りは別でしょう?」


 リリお姉様が、訝しげに私の手を取っているアズ兄様を見る。


「ティトと、登下校の約束をしていたんだよ。帰りを譲るんだから、馬車までは送らせて?」


 圧のある笑顔でにっこりして、アズ兄様はお構いなしに私と歩き出す。


「まあ、いいわ」


 リリお姉様も、自分が後から割り込んだ事は理解できていたのか、納得した様だ。


 リリお姉様、普段もこの位素直なら王子と揉めないのに……


「……貴方達、本当に仲が良いのね?」


 リリお姉様が、寂しそうに私に聞いて来た。


「そうですね。一緒に買い物して、お揃いを持つくらいには仲良しですよ?」


 ——これで良い?とアズ兄様を見る。


 合格だったのか、良い笑顔を見せてくれた。


「なんだか、邪魔しちゃって悪かったわ。ちょっとだけ反省しますわ。でもアズール、今日だけは許して頂戴?」


 リリお姉様は私達にちゃんと謝るし、きっと、本来は我儘ではないのよね?


 馬車に着いたので、アズ兄様に馬車へ乗せてもらい、荷物を受け取る。


「じゃあ、ティトまたね?」


 アズ兄様は、イタズラっ子の様な笑顔を一瞬見せて手を振り、自分の馬車に歩いて行った。


「ティト、アズールは優しい?」


 リリお姉様は、アズ兄様の事を尋ねて来た。


「優しいですよ。何か気になりますか?」


 わざとらしいのがバレたのかな?


「なんて言うか、アズールって今まで王子と

 ヘルグラウとしか関わらなかったから……」


 三人が楽だったからじゃないかな?


「あんなに表情豊かで、優しい姿は見た事なかったのよ。なんだか不思議で」


 ——あ、そっちですか?


「アズ兄様が余り人と関わるのは好きじゃないと聞いていましたが……実際はとても優しくて頭が良いので楽しいですよ?」


 結構イタズラ好きだし、お茶目よね。


「ティトには、それが当たり前なのね?羨ましいわ……」


 私が羨ましい?まさか……


「もしかして、リリお姉様、アズ兄様の事?」


 もしかして、好きだったりするのかな……


 ——ちょっと困るかな?


「違う違う。心配しないで!全く違うから。私は他に、他にちゃんといるから!」


 リリお姉様が、顔の前で手をぶんぶん振って否定している。


「ユング王子ですか?」


 余りにも慌ててるから、私はどさくさに紛れて聞いてしまった。


「……そうユング。って何でぇ?え?バレた?!嘘……ヤダ、顔に出てた?」


 リリお姉様、今、顔にも声にも全部出てます


「リリお姉様、私は適当に言いましたが、残念ながら、今の反応で……確定ですわ」


 分かりやすすぎます。


 ——でも、ちょっと可愛い。


「あーもぅ、黙っててね? 誰にも、アズールにも絶対言わないでね?」


 何でバレたらダメなのかしら?


「でも、リリお姉様、多分アズ兄様は記憶力も頭の回転も良いし、観察眼鋭いので、絶対気付いていると思いますよ?」


 既に私の能力で予測してるはずだわ


 ——アズ兄様なら、多分分かってるわ。


「やだ!? ど、どうしましょう? ティト、どうしたらいいか考えて」


 リリお姉様は、顔を真っ赤にしてソワソワしている。何この人、めちゃくちゃ可愛いわ?


 ——王子には勿体ないのでは?


「ついでに言うと、ヘルグ兄様も周りをよく見てるので、直ぐに気付くと思いますよ?」


 勘が働くし……既に知ってそうだわ。


「何でぇ?!?!」


 リリお姉様は、もう、半ば叫んでる。


「この先、リリお姉様は私といると、必ずあの3人は一緒です。顔を合わせる回数が増えれば、あの2人なら必ず答えに辿り着きますよ」


 初めてご一緒した私ですら……


 ——バレバレだと思いますよ?


 諦めてさっさと王子とくっついて下さいね?



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