塗り替えられたウワサ
教室まではアズ兄様が送ってくれた。
ヘルグ兄様はサロンの外で話をした後、ユング王子の元へ、何が可笑しいのか爆笑しながら戻って行った。
「ヘルグ兄様に、何か変な事言いましたか?」
何であんなに笑っていたのかしら?
(ティト)
アズ兄様は、念話希望の様だ。
(…ティト、ユングと熱愛の噂になるのと、俺と噂になるならどっちがいい?)
(え、噂?噂になる前提ですか‥例えばの話なら、迷わずアズ兄様がいいです。勿論即答です。王子は…無理です。ありえないです)
「…そうか、じゃあ、いいかな?」
アズ兄様は念話ではなく、口頭で声にした。
その後、アズ兄様は屈んで、わざと私の耳元スレスレに顔を寄せてきた。
「ティト、また後から迎えに来るから、いい子で待ってるんだよ。今日は帰りに一緒に買い物に行こうな?」
アズ兄様は、周りに聞かせる為、周囲の耳に届く程度の声で、わざわざ内緒話をした。
その後、私と目を合わせて、いつもよりも
優しく微笑み、頭をポンポンして
「じゃあね」
と、ついでに頬まで撫でて去って行った。
(アズ兄様、何…してるんですか!)
(これで、噂は塗り替わるよ。王子じゃなくて
ティトの相手は俺だよ)
(だからって、やり過ぎですよ!)
(これで、余分なちょっかいは無くなるだろ?)
(でも!)
(嫌だった?)
(いや‥じゃ無いですけど…なんかずるいです)
(フフッ、じゃ、ティトは俺のだから、何か聞かれたら話合わせてね?よろしく)
(もう!アズ兄様の意地悪!)
(あはは、それもいいな?)
(もう、先生が来るから念話は切りますわ!)
(じゃあね)
(ご機嫌よう)
アズ兄様と念話でやり合って、興奮したせいで、私の顔は赤くなっていた。
アズ兄様、私の事を完全におもちゃにしてるじゃない。悔しいわ!
「‥ティト様?大丈夫ですか?」
ダリエがそっと訪ねて来た。
2人が近くにいたのも気付かなかったわ…
「…あ、2人ともいたのですね?」
振り返ってみると、2人は勿論、その後ろの生徒達が、ギラギラしてこちらを見ていた。
「あっ…」
さっきのは、実際にはただ甘やかされただけだが、人に見られるには恥ずかしすぎた。
——バッチリ色恋に変換されているはずだ。
それに気付き、顔がさらに赤くなった。
サッとダリエとロアが、私を取り囲み周りから見えない様にした。
「ティト様、私とロアがグランディエラ様に
ティト様を託すまで、必ずお守り致しますわ」
うん、2人とも誤解してくれたんだね…
「ティト様申し訳ありません。私とダリエは、てっきりティト様は、王子殿下と良き関係なのかと考えておりました。
先のご様子を見る限り、ティト様はグランディエラ様と良き関係だったのですね?
見る目が無くて、大変失礼致しました」
わお、本当に兄様達が言っていた通りだわ。
——危なかったわね?
アズ兄様、話を合わせてと言っていたけど、何か言った方が良いのかしら?
「ティト様は、グランディエラ様ととても仲がよろしいのですね?」
——あら?丁度良い質問ですわね?
「ええ、学園入学前からアズール様とは仲良くさせて頂いてます。
このチーフも、アズール様から頂きました。私も同じ物を送ったのでお揃いなんですよ」
——後、ヘルグ兄様と王子もね?
「まあぁ!お揃いなんて素敵ですわ!」
ダリエがわざとか?と思うくらい大きな声で感激して見せた。
2人の後ろの空気が、騒めいている。
「その話、詳しく聞かせて下さらない?」
周りの皆さんが、ざわざわしながら近づいて来たので、面倒だなと感じたので
「…あの、恥ずかしいので、アズール様との事は余り話したく無いのですが」
と、もじもじして、瞳ウルウルしながら
ダリエとロアを見詰めた。
すると。目の前の2人の背中に庇われ、
ダリエとロアが私の壁になった。
「ティト様は恥ずかしがっております。根掘り葉掘り聞かせてくれだなんて…下世話ですわ。そんなみっともない人と共にいるのは嫌ですわ。
令嬢として、慎みを持って下さらない?」
ガツンと言葉を投げつけたのはロアだ。
何となく、強い発言は、ダリエが言うのかと思って居たから意外だわ。
「何よ貴方達だって、聞いていたじゃ無い!」
負けじと令嬢が文句を言う。
「私達はティト様から、お名前を呼ぶ許しを頂き、友人と認めて頂いております。貴方達はどうなのかしら?」
確かに2人はもう友人だと思うし、アズ兄様も認めてくれたら安心だ。
——よし、燃料追加ですわ。
「ダリエ、ロア。私ね、アズール様にお友達が出来たと2人の名前を伝えたわ。
そうしたら、アズール様が良かったなって、2人をお友達として認めて頂けたのよ。
私アズール様に認めて貰って嬉しかったわ」
私は、2人だけに話している様で、周りにわざと聞こえる様に伝えた。
「授業が始まるので、し、失礼致しますわ」
私の言葉を聞いた令嬢達は、慌てて席に戻って行った。
アズ兄様のシールド効果は、高い様だわ。
「援護ありがとうございます。ティト様」
ダリエがにっこり笑って頷いた。
「ティト様、グランディエラ様に話したのは本当ですか?」
ロアが気になったのか、訪ねて来た。
「本当よ?だから2人とも仲良くしてくれて
私はとても嬉しいですわ」
追い払えてホッとし、笑い返したら2人は
((あぁ、天使がいるわ!))
と、又共鳴していた。仲良しで何よりね?




