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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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兄と姉と妹

 午前授業の終わりを報せる鐘が鳴った。


 教材を片付けていると、急に廊下が騒がしくなり、女生徒達の黄色い声が聞こえてきた。


 ——どうやら迎えが来たゆたいね。


「ティト、迎えに来たぞ。昼食に行こう!」


 バーンと扉を開け、声を張って迎えの声をかけてきたのはユング王子だった。


 私は慌てて席を立ち、ダリエとロアに声を掛けて、呼んでいる王子の元に向かう。


「お待たせしてしまい、申し訳ありません」


 王子の元に急ぎ近付けば、当然アズ兄様と

 ヘルグ兄様もいる。


「ティト、大丈夫だよ。ユングがせっかちで、さっさと教室を出てしまっただけだ」


 アズ兄様、やれやれ感が筒抜けだわ。


「何だと?アズール、その言い分は王子に対して、随分と失礼ではないか?」


 王子が、アズ兄様にプンスカ怒っている。


「ユング王子、貴方が第一王子としての風格を持ち、言動と行動に慎みを持てば、アズールは失礼な事など一切言わないと思いますよ?」


 ヘルグ兄様は、王子の味方に付くつもりは全くないみたいだ。


 3人は仲良く言い争っている。


「仲良しですね?」


 私は首を傾げて、アズ兄様を見て尋ねた。


「仲良しですかね?」


 アズ兄様は私を見て、優しくニコっとする。


「仲良しだといいですね?」


 ヘルグ兄様は、ため息を吐きながら王子に声をかける。


「仲良しだろう?!」


 王子はアズ兄様と、ヘルグ兄様を交互に見て焦り慌てている。


 やり合っている姿が、なんだか可愛くてちょっと笑ってしまった。


「まぁいい、食堂だと人目があるから、いつも俺達の使っているサロンに行くが、ティトはそれでもいいか?」


 アズ兄様が私の意見を聞いてくれた。


「……食事の時くらいは、人目が少ない方がありがたいです」


 今も、実際には物凄く見られている。


「こっちだ、行こう」


 人目から庇う様に、アズ兄様に背を押されながらサロンへ向かうと……



「やっと来ましたのね?」


 リリお姉様が、サロンの入り口に、仁王立ちになって待ち構えていた。


「リリがサロンに出向くなんて珍しいな?普段は呼んでも来ないのに」


 王子は驚き、リリお姉様に声を掛けた。


「何ですか。私がいたらご迷惑とでも?そもそも、男3人で1人の少女を、こぞって密室に連れ込むなんて双方に外聞が悪すぎます」


 ——確かに……迂闊だったかしら?


「側近として、考えが足りなすぎではないですか?そもそも、王子の頭の中身はピーマンななにかですか?」


 でも、リリお姉様……痛烈すぎませんか?


「……ピーマン??!空っぽって事か?!」


 王子は、カッとしてリリお姉様に言い返す。


「流石に王子に向かって、空っぽとは申し上げません。ピーマンだって種くらいはあります。

 ……ほとんどスッカスカですが」


 リリお姉様、そのツッコミはかなり厳しいと思うのです。


「お三方に忠告ですわ。ただでさえ朝から目立っているのに、学園に慣れるまでの彼女の立場を少しはお考え下さいませ!」


 ——うぅ、リリお姉様ありがとうございます


「ティトに余計な心労を与えない様、くれぐれもご注意下さいませ。よって、今後ティトが居るなら、私も必ずサロンにお邪魔致します」


 リリお姉様は、一気にまくし立てると、私をアズ兄様から奪い取り、ポカンとした王子達を無視して、さっさとサロンへ入って行った。


「リリお姉様、ありがたくはあるのですが、あのような物言いをして大丈夫なのですか?」


 ソファーに座り、くつろぎ始めたリリお姉様に尋ねると


「……本来なら駄目よ?」

 リリお姉様は、口元に両手の指をクロスしてばつ印を作った。


「リリは俺達と同じで、ユングとは幼馴染なんだ。だから小さな頃から言いたい放題だよ」


 後から部屋に入ってきたアズ兄様が、隣に座って話しかけてきた。


「アズ兄……アズール様も、リリお姉様とは、小さな頃からの幼馴染なんですか?」


 ——しまった。


 リリお姉様と呼ぶから釣られてしまったわ。


「あら、アズ兄って、貴方もティトに兄呼びされているの?まさか、そういうご趣味?」


 キラリと目を光らせ、興味津々にアズ兄様に食い付いた。


「……どんな趣味だよ?ティトは、ヘルグの妹分で、ヘルグ兄様呼びされていて、仲良くなった流れで、俺も兄呼びになっただけだよな?」


 アズ兄様は、私に聞いてきたけど……


 アズールお兄様呼びしようとしたら、何かに目覚めそうになって反対しましたよね?


 ……とは言えなかった。


「アズール様は、そういう趣味ではございませんよ?兄様呼びをしているのは、説明して頂いた通りですわ」


 ——マズイわ


 王子が余計なこと言わなきゃいいけど……


「公の場では呼ばない様にしていたのですが、リリお姉様と呼ぶのに釣られてしまいました」


 恥ずかしいです。と、頬を染めつつ伝えると


「あら?ティトは私の妹でしょ?で、アズールとヘルグラウはティトのお兄様って事は……」


 まさか、王子の兄様呼びの事もバレたかな?


「それなら、アズールとヘルグラウも私の兄になるのかしら?」


 リリお姉様は、物凄く真剣な顔で言った。


 ——何でそうなるの?!


「それは違うだろ?」


 とアズ兄様。


「流石にそれは違うよね?」


 とヘルグ兄様。


「そうなのか?じゃあ、僕もティトの兄様だから、ティトの姉のリリは、僕の妹だね?」


 話を聞いた王子が、ニコニコしながら話に乗っかった。


 ほらぁ、リリお姉様が余計な事言うから、

 王子が、自ら兄宣言しちゃったじゃない!

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