私達の妖精のお姫様
教室は、映画館や劇場と同様に、すり鉢状になっている座席だ。教室の入り口が高い位置にあり、教壇が下にある。
教室全体が見渡せるわね……
クラスメイト達は、恐る恐る見る人、じっと見てくる人、全く気にしない人と色々いる。
「もう、居心地悪くなったじゃない……」
入り口で王族が、わざわざ宣言してくれたから、全く誰も近づいて来ないわ。
——完全にボッチ決定かしら?
入学早々やってしまったわと、落ち込んでいたら、
「ご機嫌よう。前の席にお邪魔させて頂いてもよろしいでしょうか?」
仲が良さそうな、二人組の令嬢が私に声を掛けてきた。
「どうぞ。これからよろしくお願いしますね」
私は物凄く嬉しくて、にっこりと満遍の笑みで挨拶をした。
「シュピネル様、以前の顔合わせの時、ご挨拶出来ず……是非、ご挨拶させてくださいませ」
二人とも、私に挨拶をしたいと言ってきた。
「そうですか。なら、お願いするわ」
家柄上、立場があるから、許しを出す側だ。
「私の父から、シュピネル様には大変お世話になっていると伺っております」
——お父様のお知り合いなのね。
「ロベニア・カルツィートと申します。宜しければ、是非、ロアとお呼びください。お会い出来て光栄ですわ」
ロア……カルツィート伯爵家の長女ね?
——お父様から聞いた事があるわ。
「私の父も同じく、お世話になっております。
ダーリエ・ピュリートと申します。私も、是非、ダリエと呼んでくださいませ」
ピュリート伯爵は、先日も父と勤務先が一緒だったわ。彼女は長女だけど、確かお兄様がいたはずよね?
「お初にお目に掛かります。ティーフロート・シュピネルと申します。お二方共に、父から聞き及んでおります」
——お父様のお仕事相手なら安心だわ。
「ロアもダリエも、固くならないで下さいね。私の事はティトと呼んでくださいませ。これからも仲良くしてくださいませ」
私は、2人の手を取り握手をした。
「ティト様、ご迷惑でなければ、一緒に並んで座りませんか?」
ダリエが、1人分席をずれた。
「私もダリエも、以前からずっと、ティト様とお喋りしたかったのです。ティト様が真ん中の席でも良いですか?」
——まあ、なぜそんなに好意的なのかしら?
「……ありがとうございます」
戸惑いつつも、ボッチは嫌だったのでありがたく2人の間に座らせて貰った。
「やっとお会いできましたわ。私達ティト様にお会い出来るのを、楽しみにしていたんです」
ダリエは本当に嬉しそうに、ニコニコしながら話しかけてくる。
「そうなのですね、ありがとうございます。敬称は付けなくてもいいわ。その……お友達になるんだし」
えっと……お友達でいいのよね?
「お友達にだなんて!とても嬉しいです。でも、私たちは敢えてティト様と呼びたいのですわ」
「そうなんです、ダリエと私は、気持ち的にティト様と呼びたいの。ダメかしら?」
——なんで??
「それは……なぜか聞いてもいいですか?」
何か特別な理由でもあるのかしら?
「お話を聞いて下さいますか?私とロアは、母同士仲が良くて、10歳の顔合わせの時も、二人で一緒にいました」
二人は、幼少期からの幼馴染なのね
「緊張しながら、二人で会場の参加者を見ていたとき、片隅で静かに佇まれていたティト様をお見かけしました」
あぁ、あの時は、うるさくて周りを全く見ていなかったわ。
「ティト様は、その……とてもお小さく儚げで可愛らしく、ドレスのライラックのグラデーションも余りにも綺麗で」
小さい……1年間眠っていたものね。
あのドレスはお気に入りだったわ。
「ロアと2人で、まるでライラックの妖精のお姫様だと話していたんです。給仕の方にお尋ねしたら、ティト様だと教えていただけました」
……ダリエはよく覚えてるわね
——でも、妖精の姫って
「あの時は、まるでティト様の周りだけ別空間でしたわ……本当素敵だったの!」
ロアはキラキラした瞳でこちらを見つめる。
——あの時は、能力使用中だったわ
「余りにも素敵で、絶対に仲良くなりたくて、声を掛けるタイミングを見ていたんです」
「途中から顔色が悪くなられたから、ロアと声をかけに行こうとした時、人に話しかけられてしまい、ティト様を見失ってしまいました」
「ティト様が退席され、ロアと気になっていたのですが、こちらから名乗り出るのも気が引けてしまって、そのまま会えず終いでした」
——二人とも気にしてくれたんだ。
その頃、私はアズ兄様に驚き、廊下で眠りこけて、ヘルグ兄様に運ばれたんですわ。
「ダリエと、後から王子様にお尋ねした所、残念ながらご帰宅なさったと聞きました……」
心配かけて、申し訳なかったわ。
「あの時はダリエと、とても残念に思いながら帰宅したのよね?」
2人は顔を合わせ「ねー?」とシンクロした。
——本当に仲良しなのね。
「あの日から、お父様から色々聞いて、ロアとお会い出来たら、ティト様とお呼びして、私達の妖精姫になって頂こうと言っていました」
ダリエ待って、妖精姫は恥ずかしいわ?
「お父様やお母様にも、ティト様のお話を聞いて、学園で会えたら、ダリエと絶対1番にご挨拶に伺おうと言っていたのですが……」
ロアは話の途中で言葉を濁した。
「御一緒されている方が、余りにも強力な方々でしたので、他の目が怖くて近寄れず……今、やっと願いは叶い、ご挨拶ができたのです」
……朝の団体は私も予想外でした。
「「だから、ティト様と呼ばせて下さい!」」
うん、仲良しね?シンクロしてるわ。
好意は嬉しいけど、妖精姫はやめて?




