ツンデレ姫
「え?ゴルドファブレン王国にある学園だから『ゴルド学園』と呼ばれていたんですか?」
随分短絡的な……
「ああ、ティトは知らなかったのか。それなら、決まった入学式がないのも知らないか?」
ユング王子、それは流石に聞いてます……
「始業式に『能力診断』を終えた生徒が、登校してくるだけだと聞いていますわ」
シュト兄様が口煩く教えてくれました。
「そうか、講堂の席次は、爵位の順に分かれているから、ちゃんとついてくるんだよ」
(ユング王子、気を回してくれてるのかしら?さっきからずっと話しかけてくるわ)
(まあ、周りに周知したいんだろうね。こちらとしては好都合だよ)
(アズ兄様、王子を利用しないでください)
講堂に集まっているのは、国内外の王族、上位貴族、中位貴族、下位貴族、平民豪商、有力な平民と色々な立場の人がいる。
「ティト、私達は王族と高位貴族ですから、席まで一緒に参りましょう」
リリお姉様も、ユング王子の隣で振り返ると私に話しかけてくれた。
「はい、リリお姉様ありがとうございます」
きっと今までは、リリ姉様と私はいなくて、仲良し兄様達で並んでいたのだろう。
(アズ兄様、始業式が始まるけど、うるさくて集中できるかしら?)
(確かに、この喧騒には慣れないな……)
私のお父様率いるシュピネル家は、侯爵位なので、上位貴族に当たる。
なので、仮初の兄達と爵位的には一緒でも全く問題はないのだけれど……
(王族にすり寄るとか図々しいわ!)
(餓鬼の癖に!)
(あの方と並んでいるとか、何様よ!)
(邪魔だわ……)
私を罵倒する声が、ずっとしている。
(あぁ……うるさい。アズ兄様、もうやだ。聞きたくないわ。うんざりしてきました)
(大体声の把握ができたから、切っても大丈夫だよ。お疲れ様ティト。でも、俺とはもう少しだけ繋いでいてくれるかな?)
(はい、とりあえず、外野は消しますね?)
周りの意識を切り離すと、声が消えて頭がスッキリした。
(スッキリしましたわ。アズ兄様は何か気になりまして?)
(うん、ちょっと内緒話)
(何か悪い事してるみたいですね?)
(悪い事だよ。だって、始業式始まってるのに2人でお喋りしてるんだから。ま、誰も校長の話は聞いていないだろうけどね)
(アズ兄様、お立場的にその発言は拙いのでは?)
(誰も聞こえないから、問題ない)
(私が聞いてますよ?)
(誰かに言いつけるかい?)
(まさか。アズ兄様の秘密を誰かに話すなんて
勿体ないですわ)
(そう言って貰えるなら助かるよ)
(で、実際の意図は?)
(……酷いな、人を策略家みたいに)
(実際そうですよね?)
(そうだな)
(じゃ、さっさと教えてくださいませ)
(心を隠せないから、話が早くて助かるよ)
校長の話が終わり、挨拶の為に一旦席を立ち
礼をしてまた座る。
(で、アズ兄様、なんでしょうか?)
(さっき、リリの声が聞いただろう? その時、ユングの事心配していたよな?)
(はい、心配されてました。それが何か?)
(ありえないんだよ……リリがユングを心配するなんて)
(まぁ、それはなぜですの?)
(2人は、昔からライバル意識が強いのか、会う度に喧嘩になるんだ。朝もリリがユングに突っかかって来たろ?)
(確かに、喧嘩腰でしたわ)
(途中でティトに気を取られて、ユングの事は、すっかり忘れていたみたいだが)
(リリお姉様、はじめは怒ってるのかと思いました。でも、ユング王子を心配していたから、いい人なんだなと認識しましたわ)
(それが、普段からの態度だとありえないんだ)
(普段は王子を嫌悪しているようには見えませんでした。現に今も隣に座ってますわ。嫌いならわざわざ隣には座らないのでは?)
(普段は、ヘルグと俺で挟むからな。今日は、俺がティトのエスコートしてるし、ティトを気に入ったから、流れで隣に座ったんだと思う)
(そうかしら?リリ様はハッキリしてそうですし、本当に嫌なら近寄らないのでは?とても素直で真っ直ぐな人ですし)
(だから俺はびっくりしてるんだ。今までユングを罵倒する姿しか知らないから)
(……それは、王子がやらかしていませんか?リリ様は、理不尽な事は言わなそうですよ?)
来賓の挨拶が終わり、また席を立ち、一礼して席に着く。
(実際、ユングの駄目出しだからな。言ってる事に間違いはないんだ。ただ、かなり強目の暴言を言い捨てて行くから……)
(それ、ただ王子の素行が悪いだけなのでは?)
(……よく分かったな?完全にユングが悪い)
(ですよね?そんな気がしました……)
(昔からユングが何かすると、リリ様が現れて、王子が返す言葉もないほど、ズバッと暴言吐いて去って行くんだ)
(後のフォローが大変そうですね?王子、感性がとても豊かそうですし)
(ユングは賢いが……たまに突拍子もない事言い出すからね)
(確かに、私も朝求婚されましたね?何考えてるんですか……あの王子)
(まあ、あれはユングなりの最大の褒め言葉だと思ってやって?残念だけど……)
(……残念ですね。だからリリ様が見兼ねて怒るのではないですか?)
(今朝の感じだとそうだよな?常日頃の暴言には実は裏があったのか?)
(リリ様は愛ある暴言なのでは?『ツンデレ』なんじゃないかしら?)
(ツンデレ?何だそれは?)
(造語です。普段はツンツン冷たく素っ気なく、たまにデレっと甘える。それがツンデレ)
(……確かに、俺達が知らない所でたまにデレ?ていたのか……だからか?)
(……何でしょう?)
(あー、ここだけの話にしてくれるか?)
(能力内です、誓って誰にも言いませんよ?)
(……ユング、リリ様に『片想い』してるんだ)
(!? アズ兄様。聞いた事を後悔してます!)
衝撃の事実を知り、始業式が丁度終わった。
***
ユング王子の隣にリリ様、一歩後にヘルグ兄様、その後にアズ兄様と私が並び講堂を出る。
そのまま、別々に教室に行くと思ったら……
「このままティトの教室まで送ろう!」
とユング王子が言い出した。
「貴方は何考えているのですか?そんな事したらティトが針の筵ですわ貴方達、目立ちすぎです。ティトは同性である私が守ります」
リリ様が、私の前に立ち、シッシッと3人を追い払おうとするが、
「リリ、今日はティトのエスコートをする約束なんだ。前から楽しみにしていたんだよ?それを奪わないで貰えないかな?」
アズ兄様が……急にデレたわ!
「……分かったわ。なら、私もご一緒させてくださいませ」
リリ姉様は、ギョッとしてアズ兄様を見つめた後、一緒についてきた。
結局、皆で教室に向かい、教室に着くてま
「皆様ご機嫌よう。今日から、私が妹の様に可愛いと思っているティトを、どうぞよろしくお願いしますわ」
リリお姉様が、高らかにクラスメイトに向かって宣言した。
「私達もティトの事は、妹同様に可愛がっているからな。くれぐれもよろしく頼むぞ」
王子も、ザワつく教室に向かって、リリお姉様に負けじと宣言した。
——王子まで?!何してくれるんですか。
ジトっと睨むも、王子はケロっとして満足そうに手を振り帰って行く。
リリお姉様が、王子を追いかけて文句を言っている姿が見えた。
「ティト、頑張れよ」
ヘルグ兄様は、私に笑いかけ王子を追いかけ去っていった。
「……わざわざ教室まで送ってくださり、ありがとうございます」
私は横にいたアズ兄様に、お礼を伝えた。
「ティト、後でまた迎えに来るよ」
アズ兄様は、頭にポンと手を置いて去る。
アズ兄様と、意識はまだ繋がっている。
(ところでアズ兄様、先程リリお姉様に何したんですか?あっさり引き下がりましたよね?)
(俺、基本的に女嫌いだから、女性は誰一人寄せ付けなかったから。多分、俺がティトを好きなんだと思ったんじゃないかな?)
(え、何か今、すごい事言ってませんか?)
(え?今更でしょ。気にしなくていいよ)
アズ兄様の言葉に、どうしていいか分からず、
私の顔は真っ赤になってしまった。




