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私の能力は『以心伝心』全部丸聞こえですわ。【第1章100話完結済】  作者: 黒砂 無糖
初めての学園生活

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ハイテンション王子

 王子が馬車に乗り込んでこようとしている。


「ユング、勝手に馬車に乗り込んで来るな。彼女とは初対面だろう。我々が一度降りるから、ちゃんとお互い挨拶してから乗り込んでくれ」


 アズ兄様に注意されてるわ……


 ——残念王子ね


「僕たちの仲でそんなのはいいよ。アズールどけ!席を開けよ」


 アズ兄様が、王子に文句を言うが、王子はお構いなしにアズ兄様をどかし


 ヘルグ兄様の横にどかっと座った。


「ユング、中途半端な所で権力を振りかざすんじゃない。彼女がびっくりしてるだろう」


 追い出されたアズ兄様が、こちらを見ながらごめんねと言った。


「お!?この子が例の彼女か?はじめまして。俺は第一王子だよっ!?くぅっ!!」


 ——ヘルグ兄様、それ大丈夫ですか?


 王子が羽交締めにされている


「だから、貴方は一応王子なんだから!自分から挨拶をするな!落ち着け!」


 ヘルグ兄様が、王子の口を無理矢理塞いだ。


 握手をしようと、こちらに出した腕ごと王子を取り抑えている。

 

「ティト、この馬鹿が暴走する前に、先に挨拶してくれるか?」


 アズ兄様に促されたので、私はオロオロしながら挨拶を済ませる。


「お、お初にお目にかかります……ティーフロート・シュピネルと申します。第一王子様にお目にかかれ……」


 私は、最後まで言わせてもらえなかった


「もういいぞ、硬いのはなしだ。僕もティトと呼んでいいかな?」


 我が国の王子様はせっかちで、デリカシーがどこかに旅に出ているらしい……


「は、はい。こ光栄ですわ…」


 ——この国、大丈夫かしら?


「ティトごめんね。悪い奴ではないから、とって食われることはないよ」


 ヘルグ兄様、そう言われましても……今、めちゃくちゃ王子に観察されてますわ


「ちょっと勢いがすごいだけだから、王子が言うように、俺たちと接するような軽い感じで接してくれるかな?」


 アズ兄様が眉を下げ、お願いしてきた


「でも……第一王子ですよね?」


 私は困惑しながら、アズ兄様を見た。


「その肩書に間違いはないよ。でも俺たちは、ユングを幼い頃から友達だと思ってる。もちろん、敬愛する主人でもあるけれどね」


 アズ兄様は、ヘルグ兄様に抑え込まれたままの王子を呆れた顔で見た。


「こう見えて、他では、ちゃんと王子やってるから。ここだけ見逃してくれないか?」


 アズ兄様も、王子はこれでいいらしい……


 確かに、王子の変な噂を聞いたことはない。


「はい、わかりました。第一王子様これからもよろしくお願いします」


 とりあえず挨拶だけは、と、深く頭を下げた


「ダメだ!違う!」


 すると王子が、強い口調で叱責した


 私は思わずビクッっとなり、


「え?も、申し訳ありません」


 と、謝ってしまった


「ユング!こら、ダメだよ」


 ヘルグ兄様が叱り、アズ兄様が呆れ返り、


「あーもう、この馬鹿王子!」

「ユング!全く、何をやってるんですか!」


  2人揃って王子を責め始めた。


「ヘルグ兄様、アズ兄様、大丈夫です!」


 兄様達に叱られてるに、王子は私の顔をじっとみている……


 ——何?どうしたら良いの?


「ごめんティト、驚いたよね?君が悪いんじゃないよ。このバカ王子、君に兄呼びをして貰いたかっただけなんだ」


 ——アズ兄様、それだけですか?


「ティトが嫌じゃなければ、呼んでやって。寂しがり屋の王子は、仲間はずれが嫌なんだ」


 アズ兄様は、固まる私の手を握りポンポン叩きながら、王子を兄と呼んでと願ってきた。


「ユング王子ちゃんとティトに謝って。彼女は僕達の妹分なんですよ?驚かせ怯えさせてどうするんですか」


 ヘルグ兄様は、まだ王子に説教中。


「そんな失礼な態度では、兄とは呼ばれませんよ。そもそも彼女は初対面です。いきなり全開って何やってるんですか」


 全開って……何?!


「言われてみれば、彼女は初見だったな。お前たち2人からよく話を聞いているから、そんな気がしなかったんだ。ティト、ごめんな?」


 王子はあっさり非を認めた。


 ——え?王子様、もしかして素直なの?


「ようやく会えたし……こいつらと同じように、僕のことも兄と呼んでくれるかい?」


 王子は柔らかな笑顔で、首をかしげながら、

 兄と呼べと、とても無謀なことを言う。


「この四人の場だけでも良いですか?公の場では、王家に対して失礼になります、王子に隙を作るような行動を、私は取りたくありません」


 ほんとにいろいろ、全く持って困る。


 ——勘弁してほしいわ。




「ユングどうだい。いい子だろ?」


 ヘルグ兄様が、とっても自慢げだ。なぜ?


「俺とヘルグが言っていた通りだろう?」


 アズ兄様も、何の話をしてたの?


 話の流れが急に変わったので、話の中心の王子を見てみたら、


「ティト、それでいいよ。むしろそれがいい。もし平然と、僕の我儘を認めるようならば、今後一切付き合うつもりはなかったよ」


 ——あ、私、試されていたんだわ。


「でも君は、自分の立場と言うものを理解した上で"肩書きを外した付き合い"を望む僕のことも受け入れてくれようとした」


 王子様なんだから、付き合いを厳選するのは当然のことよね。


「ありがとう。謀るような事を言ってごめん。今後は一切するつもりはないから安心して?」


 王子はさっきまでの笑顔とは違って、男の子らしいヤンチャな笑顔になった。


 ——王族は大変なんだろうな。


「いいえ、安心しました。私のほうはいつ謀ってもらっても構いませんわ。きっと立場的にそうせざるを得ない事も沢山あるのでしょう」


 自由に振る舞えないのは当然だ。私の比じゃないだろうな……


「肩書を外してお付き合いくださると言うのであれば、謀り事だろうが詮索だろうが、こちらに後暗い事はございません」


 ——能力は隠しますけど……


 「いくらでもお付き合いいたしますよ?」


 私も仮面を外して、ニヤリと笑顔を向けた。


「おい、ヘルグラウ。めちゃくちゃいい子ではないか!ティト、王妃になる気はあるか?」


 王子が意味がわからない求婚をしてきた。


「お断りします」


 全く、何を考えてるんだこの人は……


「ユング王子振られましたね」


 ヘルグ兄様は、ポンと王子の肩を叩いた。


「ユングあきらめろ」


 アズ兄様は、しっしと振り払う仕草をした。


 王子は2人から冷たくあしらわれている。


 これが日常なのね……


「えー、ティトが迷わず僕を振ったよ?普通女の子は王子様には憧れるんじゃないの?」


 王子は口を尖らせながら、不服そうにこちらを見ているので、キッパリと伝えなければ。


「憧れと現実は違います」


 元より私は、王子に憧れはありません。


「まあまあ、とりあえず、ティト、アレ持ってきてるんだろう。今渡したら?」


 ヘルグ兄様が、胸元を叩いて見せた。


「あ、そうですね。本当は学園できちんと挨拶をした後、手順を踏んで王子様にお届けしようと思ったんです」


 空間魔法のポーチから取り出そうとしたら

 王子が指摘してきた。


「俺の名前はユングな?忘れた?」


 やっぱり……流してはくれなかったか


「…ユング兄様で良いですか?」


 まさか本当に呼ぶ事になるとは……


「いいな。それ、うんいいな。それ」


 ユング兄様が遠くを見ている。


 一体どこ見てるんですかね?


「はい、ユング兄様への贈り物です。受け取っていただけますか?」


 そう言って、ヘルグ兄様とアズ兄様と一緒に買った魔力のペンを渡した。


 このペンは、あの後2人は結局渡さず、後日、私がネタバラシ的に渡すことにしようと言う話になった。


 ——それを今日は持ってきた。


「ペン?ありがとう。ん、何か違うのか?」


 王子は魔力を感じ取ったのか、普通のペンでないことに気づいたらしい


「魔力のペンです。言葉に出さなくても文字に書くことで呪文が発動しますよ。イタズラに最適なんです。4人でお揃いですよ?」


 ——さぁ、気づくかな?


「呪文なく、魔法が発動……?」


 アズ兄様とヘルグ兄様が笑いを堪え震えた。


「……?!アズール!ヘルグラウ!貴様等、僕に対して何度もこれ仕掛けたよな?」


 王子の叫び声に、ずっと我慢していた2人は瞬間的に笑い崩れた。





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